ワインって難しい・・・?
世の中で広く言われるワインの常識を、ワインのプロが実際に検証!
毎月1つのテーマに絞って連載していきます。

  • 実験編「赤ワイン」

バックナンバーはこちら

いまさらながら、パンとワインの相性を検討してみる
~赤ワイン編~

2017年08月

前々回試した『パンと白ワイン』、パンはワインには鉄板と思っていましたが、意外にもバゲット以外はあまりおすすめできない結果でした。今回は赤ワインで試してみたいと思います!白ワインのときと同様に、パンはスーパーなどで買えるようなもので試しました。

完全に参加者の主観で、実際にいろいろ合わせてみておいしく感じるのかどうか相性を評価しました。
さて、結果やいかに!?

目次
  1. ▼ さっそくやってみた!!
  2. ▼ ざっくりと結果まとめ!!
  3. 【パンA】バゲット
  4. 【パンB】食パン(食べる前に焼いたもの)
  5. 【パンC】クロワッサン
  6. 【パンD】レーズンバターロール

▼ さっそくやってみた!!

img_26_1.jpg img_26_2.jpg

まずはワイン!タイプの異なる次の白ワイン3種類で試してみました。

 
ワイン1.
フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
酸化防止剤無添加のおいしいワイン。 赤
 
ワイン2.
チャーミングな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー
 
ワイン3.
力強い味わいの重めの赤ワイン:
ロス ヴァスコス カベルネ・ソーヴィニヨン
 
そして、合わせるパンは次の4種類。スーパーに売っている市販のものをトースターで軽く焼いたもので試しました。
 
A:バゲット
  (参考にオリーブオイルをつけたもの、バターをつけたものでも実施)
B:食パン:食べる前にトーストしたもの
  (参考にオリーブオイルをつけたもの、バターをつけたものでも実施)
C:クロワッサン
D:レーズンバターロール
 
 
検証の仕方は、4人のメンバーで試飲・試食して、合わせることでおいしくなったかどうかを最高5点で数値化して比較しました。点数の基準は以下の通りです。
 
 1点:合わせる前には感じなかったネガティブな要素を感じるようになる。
 2点:合わせる前より、ワインもしくはパンの味わいがおいしくなくなったと感じる。
 3点:合わせる前と変わらない、予想通りの味わい。
 4点:合わせる前より、ワインもしくはパンの味わいがおいしくなったと感じる。
 5点:合わせる前には感じなかったポジティブな要素を感じるようになる。
 
さてさて、赤ワインとパンの相性やいかに??
 

▼ ざっくりと結果まとめ!!

さっそく実際にパンとワインを合わせてみた結果は、
 
★★どの組み合わせもあまり良い変化は感じなかった★★
★★バゲット以外はネガティブな要素を感じるものが多かった★★
 
ということに!
 
市販のパン単体では、白ワインよりも相性がよくなさそうな結果でした。
オリーブオイルやバターは、おいしく感じるものもありましたが、逆にエグさを感じるものも。当たり外れが多そうな結果でした。
 
  • 【A.バゲット】
    ★外れはなさそう。バターやオリーブオイルでおいしくなるものも★
    どのワインと合わせてもあまり変化がないけれど、相性は悪くない。オリーブオイルやバターをつけると相性が良くなるものもあった。
  • 【B.食パン】
    ★わざわざワインに合わせなくて良さそう★
    どのワインと合わせても、ワインの味や香りとのアンバランスさが目立ってしまう。オリーブオイル、バターをつけたものは、苦味が強調されたり、タンニンを粗く感じてしまってよくない。
  • 【C.クロワッサン】
    ★軽めでタンニンが控えめのワインは相性がよさそう★
    軽めでタンニンが控えめなワイン1は、お互いにおいしく感じられて合わせてもよさそう。一方ワイン2,3とは、ワインの渋味や酸味が強調されてかなり重い飲み口に。これはやめた方がよさそう。
  • 【D.レーズンバターロール】
    ★ワインに合わせない方が良さそう★
    どのワインと合わせても、パンの油脂の香りが浮いて感じて、ワインの渋味が目立ってしまっておいしくない。やめた方がよさそう。
ワインごとの変化の仕方など、詳しくは「検証結果をくわしく!」で。
※一部製品における実験であり、テイスターの主観的な感想です。
 

【パンA】バゲット

【検証結果】
★外れはなさそう。バターやオリーブオイルでおいしくなるものも★
 
「ワイン1:フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
酸化防止剤無添加のおいしいワイン。 赤」
合わせてもとくに変化することなく、それぞれの味わいがそのまま感じられる。ネガティブな要素は出てこないので、悪くはない。
 
オリーブオイルは、ワインの果実味が増して感じられるように。ただ、ワインの苦味も少し強く感じるように。
バターは、ワインの中の乳のニュアンスと寄り添って、まろやかさやコクが増す感じ。つけた方がよさそう。
 
 
「ワイン2:チャーミングな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー」
これも合わせてもとくに変化することなく、それぞれの味わいがそのまま感じられる。タンニンを少し強く感じるようになるが、ネガティブな変化には感じないので悪くはない。
 
オリーブオイルは、ワインの果実味がかなり増して、口当たりが滑らかに感じられるように。ネガティブな要素も感じることなく、かなりよい相性。
バターは、練乳イチゴのようなニュアンスを感じられるようになって、チャーミングな印象に。ただ、少し苦味も強く感じるように。
 
 
「ワイン3:力強い味わいの重めの赤ワイン:
ロス ヴァスコス カベルネ・ソーヴィニヨン」
これは、合わせることでワインの硬めのタンニンを柔らかくスムーズに感じさせてくれて、果実味を豊かに感じさせてくれる。変化は大きくないけれど、間違いない組み合わせ。
 
オリーブオイルは、少し苦味や渋味が強く感じるように。わざわざつけなくてもよさそう。
バターは、コーヒーやカシスのような香りを強く感じられるようになって面白い組み合わせ。ただ、渋味や酸味、苦味がそれぞれ浮いて感じられて後味があまりよくない。

【パンB】食パン(食べる前に焼いたもの)

【検証結果】
★ワインとはあまり影響し合わない。わざわざワインに合わせなくて良さそう★
 
「ワイン1:フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
酸化防止剤無添加のおいしいワイン。 赤」
合わせてもあまり影響し合わず、少しだけワインの味わいや香りを単調にしているような印象。
 
オリーブオイルは、苦味がけっこう強く感じられるので、やめた方が良さそう。
バターは、ワインの乳のニュアンスと寄り添ってまとめてくれる感じ。香りは単調になるけれど、口当たりがまろやかになって飲みやすく。
 
「ワイン2:チャーミングな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー」
これもあまり影響し合わず、少し苦味や酸味が浮いて感じる。
 
オリーブオイルとバターは、渋味や苦味、酸味、油脂っぽさがそれぞれバラバラに感じるようになってしまって、やらない方がよさそう。
 
「ワイン3:力強い味わいの重めの赤ワイン:
ロス ヴァスコス カベルネ・ソーヴィニヨン」
これもあまり影響し合わず、少しだけワインの味わいや香りを単調にして、苦味や渋味を強く感じるように。
 
オリーブオイルとバターは、どちらもワインの香りに複雑味を与えてくれるけれど、やはり苦味や渋味を浮いて感じる。わざわざやらなくてもよさそう。

【パンC】クロワッサン

【検証結果】
★軽めのタイプのワイン1とは相性よさそう★
 
「ワイン1:フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
酸化防止剤無添加のおいしいワイン。 赤」
パンのバターの香りとワインの果実味がよくなじんで、ワインが油脂を流してくれる感じ。おいしく感じられる。
 
「ワイン2:チャーミングな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー」
合わせることで、ワインの酸味や苦味、油脂の香りなどが少しバラバラに感じられる。
 
「ワイン3:力強い味わいの重めの赤ワイン:
ロス ヴァスコス カベルネ・ソーヴィニヨン」
これも合わせることで、ワインの酸味や苦味、渋味や油脂の香りなどがバラバラに感じられて、かなりバランスを悪くしてしまう。
 

【パンD】レーズンバターロール

【検証結果】
★ワインとは合わない。わざわざワインに合わせない方がよい★
 
「ワイン1:フレッシュな果実味で軽めの赤ワイン:
酸化防止剤無添加のおいしいワイン。 赤」
合わせると、ワインの酸味や苦味、パンの油脂の香りが強調されて飲みにくい。やめた方がよい。
 
「ワイン2:チャーミングな香りで軽めの赤ワイン:
ジョルジュ デュブッフ ボジョレー」
これも合わせると、ワインの酸味や苦味、パンの油脂の香りが強調されて飲みにくい。タンニンも粗く感じるようになって飲み口が重く。やめた方がよい。
 
「ワイン3:力強い味わいの重めの赤ワイン:
ロス ヴァスコス カベルネ・ソーヴィニヨン」
これも合わせると、ワインの酸味や苦味、パンの油脂の香りが強調されて飲みにくい。タンニンがかなり粗く感じて、ワインのハーブのような香りも強調されて、いろんな要素がバラバラに感じる。やめた方がよい。

編集後記(やってみてわかったこと!!)

【結局のところは??】
結論としては、
★★どの組み合わせもあまり良い変化は感じなかった★★
★★バゲット以外はネガティブな要素を感じるものが多かった★★
 
という結果に!白ワイン以上に相性がイマイチな結果でした。
 
スーパーなどに売っている市販のパンでは、やはりとりあえずバゲットを選ぶと良さそうです。バゲット以外は、合うワインのタイプや条件がかなり絞られてしまう結果でした。。
白ワインと同様に、市販のパンは甘味が強かったり、一度焼いてしばらく経ったものが多いので、必ずしも相性が良いわけではなさそうです。
甘味が控えめで焼きたてのパンや、野菜やハムなどをパンに挟むと、また違う結果になると思います。
 
【白ワインではイマイチだったバターが、赤ワインとは良いものが多いようだけれど】
マロラクティック発酵というものが影響していると考えられます。ワインの製造過程で乳酸菌の働きによって、ワインに含まれている「鋭い酸のリンゴ酸」を「まろやかな酸の乳酸」に分解する工程があります。これをマロラクティック発酵といいます。
(行わないワインもあります)
 
乳酸とはまさにその名の通り、ヨーグルトのような乳のニュアンスを感じるものです。バターの乳の香りとワインの乳酸のニュアンスがつなぎのようになって、相性をよく感じさせたのかもしれません。
 
これは白ワインでも言えることで、前々回の実験のワインの中では、ワイン3のリッチなタイプの白ワインにマロラクティック発酵が行われています。前々回の実験でもワイン3はバターと相性がよかったですね。
 
 
【この次。】
次回は、「人によってワインの評価はどれくらい変わるのか?」を試してみたいと思います。これまでの実験では4,5人で評価していたので、あまりばらつきがなかったですが、大人数で試してみるとどうなるのか?シンプルにワインとチーズの相性で検証します。味の好みは当然人それぞれですが、果たして?お楽しみに!
 

上にもどる

実験編「赤ワイン」バックナンバー