- 実験編「赤ワイン」
ワインは産地によってどう違うの??
~赤ワイン編~
2017年03月
最近は、一般的なスーパーでもいろんな国のワインが手に入るようになりましたが、なかなかその違いまではよくわからない、という人も多いのでは?
前回は白ワインについて、同じぶどう品種シャルドネで異なる産地のものを比較してみましたが、今回は赤ワインについて試してみたいと思います。ぶどう品種はボルドーワインによく使われるカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロ主体のもので異なる産地で比較します。
さて、結果やいかに!?
- 目次
▼ さっそくやってみた!!
まずはワイン!次の4つで試してみました。
ワイン1
フランス ボルドー地方メドック地区
『ドメーヌ バロン ド ロートシルト メドック レゼルブ スペシアル 2014』
ワイン2
日本 山梨県甲斐市
『サントリー 登美の丘 赤 2014』
アメリカ カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
『ウィリアムヒル ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2013』
ワイン4
チリ ラペル・ヴァレー
『ロス ヴァスコス グランド レゼルブ 2013』
使用したグラスは小ぶりのティスティング用のグラスです。
検証の仕方は、4人のメンバーで試飲して、味わいの要素を最高5点で数値化して比較しました。
さてさて、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロと言えば樽熟成されることが多く、辛口でしっかりした渋味とほどよい酸味があって、黒系の果実や杉のような植物を思わせる香りが特長だったりしますが、産地によってどんな違いがあるんでしょうか??
▼ ざっくりと結果まとめ!!
いきなり今回のざっくりした結果ですが、
★★暖かい産地(チリ、アメリカ)★★
ワインは果実味と渋味が豊か
★★涼しめの産地(フランス ボルドー)★★
酸味が豊か
★★特殊な日本★★
暖かい産地だが、いろんな要素が控えめ
ということに!
同じぶどう品種でも産地ごとにけっこう味わいが違う結果になりました。気温と味わいの傾向は白ワインとよく似ていました。
これを参考に自分好みのワインを探してみては!?
産地ごとの特徴など、詳しくは「検証結果をくわしく!」で。
※一部製品における実験であり、テイスターの主観的な感想です。
【ワイン1】フランス ボルドー地方メドック地区:
『ドメーヌ バロン ド ロートシルト メドック レゼルブ スペシアル 2014』
【この産地の特徴】
気候:平均気温17.1℃、平均月間降水量68.3mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。))
比較的涼しく、降水量は少ない。
ワインの樽熟成:フランス産オーク樽で熟成を行うことがほとんど。このワインも同様。
ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロを主体に複数品種がブレンドされ、カベルネ・フランやプティ・ヴェルドも使われる。このワインは、カベルネ・ソーヴィニヨン:60%、メルロ:40%。
このワインの味わい:はじめは果実味や香りの要素を感じにくく、閉じている印象。このワインは少し時間をおいて評価。時間をおくと、控えめながらもチェリーを思わせる果実味や、スミレや杉などの植物を思わせる香り、スパイスのニュアンスも感じられるように。
また、しっかりとした酸味と渋味を感じられる。ただ、渋味は少し粗く後口に残る印象。
スマートな骨格の、まだ若さを感じるワイン。
このワインの外観:濃いめの紫がかったルビー色、若い印象。
【ワイン2】日本 山梨県甲斐市
『サントリー 登美の丘 赤 2014』
【この産地の特徴】
気候:平均気温20.5℃、平均月間降水量136.4mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
温暖で降水量が極めて多い。
ワインの樽熟成:オーク樽で熟成を行うことが多い。このワインもフランス産オーク樽で熟成。
ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどが使われることが多く、単一品種のものもあれば、複数品種がブレンドされることもある。このワインは、メルロ:48%、カベルネ・ソーヴィニヨン:20%、カベルネ・フラン:17%、プティ・ヴェルド:15%。
このワインの味わい:小さな赤い果実を思わせるチャーミングな香りや、少し植物の茎を思わせるような青い香り、少しバニラやナッツを思わせる香りも。香りのボリューム感は控えめ。
味わいは色んな要素が控えめで穏やか、前回の日本の白ワインとよく似た傾向。
穏やかでチャーミングな味わい。
このワインの外観:濃いめの紫がかったルビー色、若い印象。
【ワイン3】アメリカ カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
『ウィリアムヒル ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2013』
【この産地の特徴】
気候:平均気温18.1℃、平均月間降水量34.8mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
温暖で降水量は少ない。
ワインの樽熟成:アメリカ産やフランス産のオーク樽で樽熟成を行うものが多い。このワインは、フランス産オーク樽で熟成。
ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に複数品種がブレンドされることもある。このワインは、カベルネ・ソーヴィニヨン:90%、プティ・ヴェルド:7%、その他:3%。
このワインの味わい:カシスなどの黒い果実やそのリキュール、コーヒー、少し土っぽい香りやミントのようなハーブ、コショウのようなニュアンスなど、いろんな複雑な香りが感じられる。
果実味や渋味、酸味それぞれがしっかりと感じられて、バランスがよい印象。渋味はまろやかに感じられて飲み口はスムーズ。
複雑でリッチ、のみ応えのあるワイン。
このワインの外観:少し茶色のニュアンスがある紫色。他のワインより色調は淡い。若い状態を少し抜けた印象。
【ワイン4】チリ ラペル・ヴァレー
『ロス ヴァスコス グランド レゼルブ 2013』
【この産地の特徴】
気候:平均気温19.9℃、平均月間降水量12.9mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
温暖で降水量は極めて少ない。
ワインの樽熟成:樽熟成の仕方(有無)はさまざま。このワインはフランス産オーク樽で熟成。
ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に複数品種がブレンドされることがある。このワインは、カベルネ・ソーヴィニヨン:85%、カルメネール:5%、シラー:5%、マルベック:5%。
このワインの味わい:いろんな要素が高いレベルでしっかりと感じられるワイン。凝縮した果実味で少し甘さを感じる。酸味はほどよく、渋味はしっかり。渋味は少し後口に残るような粗さも感じる。
香りは黒い果実やそのリキュールのような香りがまず感じられて、少し杉のような植物を思わせる香りや、エスプレッソ、バニラ、アニスやシナモンのようなスパイスのニュアンスも。
重厚でパワフルなワイン。
このワインの外観:濃いめの紫がかったルビー色。若い印象。
編集後記(やってみてわかったこと!!)
【結局のところは??】
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロの特長である黒系の果実や杉のような香り、しっかりした渋味は共通しながら、それぞれの特長がよく現れている印象でした。
★★暖かい産地(チリ、アメリカ)★★
果実味や渋味、香りの要素が豊かに
★★涼しめの産地(フランス ボルドー)★★
酸味が豊かに。少し若い印象。
★★特殊な日本★★
暖かい産地なのに、いろんな要素が控えめに
果実味・渋味・香りの要素は、平均気温とある程度相関が見られる結果になりました。酸味については、今回は産地ごとの平均気温の差が少ないこともあってか、白ワインほどは違いが見られませんでした。
香りについては、今回のワインはどれもフランス産のオーク樽で樽熟成をしていたので、前回の白ワインのように単純に樽熟成の有無では比較できませんでしたが、平均気温とも相関関係がありそうな結果になりました。
また、今回も日本は平均気温が最も高いにも関わらず、例外的に果実味などの要素が控えめでした。やはり、極めて多い降雨量や日照量の少なさなどが影響しているのではないかと思います。
【有名なボルドーのワインが要素が低いように見えるけれど】
これは、ワインの飲み頃が関係しているのではないかと思います。チリやアメリカなどのワインの歴史から見て新しい産地はニューワールドと呼ばれていて、ワインがつくられてからすぐに楽しめるものが多いと言われています。一方で、伝統的なワイン産地のフランス、特にボルドーワインは、熟成して真価を発揮すると言われています。
今回試したボルドーワインも、まだ若い印象でいろんな要素が閉じてしまっているようでした。飲み頃までに数年から時に数十年かかるとも言われていますが、実際にそういった飲み頃のワインを飲むと本当に感動します。飲み頃はワインの難しさでもありますが、まだ解明できていないロマンであるとも言えます。
【この次。】
前回と今回、同じぶどう品種で産地の違いを検証しましたが、次は、同じ産地でぶどう品種の違いを検証してみたいと思います。シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなどなど、最近はぶどう品種の名前を知っている人も少しずつ増えてきましたが、実際のところどう違うのかはなかなかわかりにくいところ。
次回はまず白ワインで試してみたいと思います。乞うご期待!!