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  • ワインの産地編

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夏はロゼ

2021年08月

皆様、ロゼワインはお好きでしょうか?21世紀に入って既に20年が経過しましたが、この間に世界のロゼワインの消費量は大きく伸びました。その消費を牽引しているのが、フランスとアメリカ合衆国の2国ですが、例えば英国もこの20年でロゼワインの消費は3倍近くに急増するなど、その他の国々でもロゼワインは堅調に伸びているようです。
ただ、その中でも特に目立つのがフランスです。ロゼワインの消費量は世界1位で、消費されるスティルワインの3本に1本がロゼワイン。これは白ワインの消費(全体の2割弱)よりも全然多い数字です。実際フランスのスーパーマーケットなどでワイン売場を見ていると、白ワインの売場よりロゼワインの売場の方が多い事が普通です。
ロゼの生産量も世界一。フランス中で多彩なスタイルのロゼワインが沢山生産されていますが、それでもまだ足りなくてさらに輸入もしています。
そんなロゼワイン好きの彼らにとってのロゼのシーズンは夏。日本よりはカラっとしていると言いつつも、やっぱり夏は暑いので、渋かったり強かったりする(しかも温度も高めの)赤ワインより、キリっと冷えたロゼワインの方が良いのでしょう。普段は赤ワインが普通の人にとっては、白ワインだと物足りないらしく、ロゼはそのあたりも丁度良いとの事でした。あと、フランスの人々にとって夏と言えばバカンス。夏=ビーチ=南仏=プロヴァンス=ロゼと言う図式もあるように思います。
今回はそんなフランスの多彩なロゼワインたちを製法を含めて見ていきたいと思います。

目次
  1. 【フランスの有名なロゼワイン産地】
  2. 【ロゼワインの代表的なぶどう品種】
  3. 【ワインのスタイル】
  4. 【代表的な1本のおすすめ料理】
  5. 【代表的な1本】

【フランスの有名なロゼワイン産地】

世界で最もロゼワインを生産している国・フランスの代表的な産地を見てみたいと思います。

[プロヴァンス地方]

フランス最大のロゼワイン産地で、なんと世界のロゼワインの5%がこの地方で生産されています。ACコート・ド・プロヴァンスを代表に、プロヴァンスの名前の入った幾つかの産地で構成されています。サンソー、グルナッシュ、シラーなどの地中海品種のブレンド。ほのかに夕焼けがかった色調の淡いピンク色で、まろやかだけど重くないフレッシュでドライなロゼワインです。現在世界で最も人気のあるロゼのスタイルで、フランス以外の国でもこのスタイルのロゼワインが多く生産されています。エリア内にACバンドールやACパレットなど、より個性のハッキリした高品質なロゼワインの産地を含みます。

[タヴェル]

フランスで長く最高の辛口ロゼワインの産地とされてきた伝統産地です。これもサンソーやグルナッシュなどの地中海品種のブレンド。赤ワインに近い様な濃厚な色調を持った、力強く、複雑なコクのある辛口ロゼワインです。ACタヴェルはロゼワインのみの産地です。

[ロゼ・ダンジュー&カベルネ・ダンジュー]

ロワール川中流域のアンジュー地方で生産される、ほのかな甘口のロゼワインです。フレッシュなベリーを連想させるキュートで甘酸っぱい果実味が魅力のチャーミングなロゼワインで、とても飲みやすいのでロゼワインの入門としてオススメです。グロローを主体としてつくられるのがロゼ・ダンジュー。カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としてつくられるのがカベルネ・ダンジューです。

[ボルドー・クレレ]

ボルドー全域でつくられているロゼワインの中でも、果汁と果皮の接触時間を長めに取って、通常のロゼワインと赤ワインの中間くらいの濃い色調に仕上げたのがクレレです。ぶどうはメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランなどのブレンド。色濃く、渋みもそれなりにある飲み応えのある辛口ロゼワインです。

[マルサネ・ロゼ]

ブルゴーニュで唯一、ピノ・ノワールからつくられるロゼワインの生産が認められた村名の原産地呼称がマルサネです。淡いピンクの色調と、華やかなラズベリーやチェリーの風味が魅力の、上品な辛口ロゼワインです。

[ロゼ・デ・リセィ]

シャンパーニュ地方の南端、リセィの村の周辺で、ピノ・ノワールからつくられるスティルの辛口ロゼワインです。実は発泡性のシャンパーニュよりも遥かに歴史が長く、フランスの太陽王ルイ14世に愛された由緒正しい産地です。生産量が少ないので、なかなか見かけません。

【ロゼワインの代表的なぶどう品種】

(左)グルナッシュ(中)シラー(右)プロヴァンスのぶどう畑

グルナッシュ

…南仏を代表する品種で、果皮が薄いのでロゼワインに向く品種の一つです。酸が低く、糖度が高い(アルコールが高くなる)のが特徴で、まろやかでコクのあるロゼになります。

サンソー

…これも南仏のぶどう。赤ワインよりもロゼワインに向くとされる品種で、多くのロゼワインの主力品種となっています。果皮が薄く、アルコールも上がりすぎないのでバランスの取れた味わいのロゼワインが出来ます。

シラー

…南仏を代表するぶどう。色濃く、独特の胡椒を連想させるスパイシーさがあります。パンチの効いた風味とまろやかな飲み口を併せ持ったロゼワインになります。南仏では他にムールヴェードルなども使用され、単一品種ではなく複数品種をブレンドしてバランスを取ったロゼワインが普通です。

ピノ・ノワール

…ブルゴーニュを代表するぶどう。上品で繊細な風味を持ったロゼワインになります。

グロロー

…ロワール川中流域のぶどうで、フレッシュな豊かな果実味が特徴です。主にフルーティなやや甘口のロゼワインの原料になります。

ボルドー品種

…メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランなどからロゼワインが生産されます。単一の場合も、複数品種をブレンドする場合もあります。独特の涼やかな風味を持ったロゼワインになります。

【ワインのスタイル】

ロゼワインには大きく分けて3つの製法があり、味わいや色調がそれぞれ異なってきます。ロゼワインのつくり方を見て見ましょう。

[短期間のマセレーション(漬け込み)で色素を出すタイプのロゼ]

ショート・マセレーションと一般に言われています。最初は赤ワインをつくる時と同じ様に果皮や種子を果汁に漬け込んで発酵をスタートします。通常の赤ワインだとざっくり10~20日程の漬け込み(マセレーション)期間があるところ、1日~2日程度とかなり短いマセレーションの後に果皮と種子を分離します(発酵が始まる前の軽いスキンコンタクトだけで分離する場合もあります)。あとは軽く色付いた果汁を白ワインの様に発酵完了させて完成です。マセレーションの時間によって差異はありますが、一般的に色調は濃いめで、ボリュームのある味わいのロゼワインになります。フランスの代表産地ではタヴェルやボルドー・クレレがこのタイプです。

このタイプのロゼワインでは”セニエのロゼ”という言葉も良く耳にします。セニエとは何かと言うと、ぶどうの出来があまり良くなかった年に、力強い赤ワインをつくるためにマセレーションの期間中に一部(10%とか)のジュースを抜く作業の事です。これをする事でジュースに対する果皮と種子の比率が上がるので、本来のぶどうが持っているポテンシャルよりも色が濃く、しっかりとした骨格を持った赤ワインをつくる事が出来ます。”セニエのロゼ”とは、この時に少量抜いたジュースを白ワインの様に発酵させてつくられる、言わば副産物のロゼワインです。ボルドーの有名シャトー名のロゼワインなどは、このパターンが多いです。

 

[プレス(圧搾)の圧力で色素を出すタイプのロゼ]

ダイレクト・プレスもしくは直接圧搾法と言われています。黒ぶどうをそのまま破砕して圧搾機で搾ると、淡く色付いた果汁が得られます。その果汁を白ワインの様に発酵してつくられるロゼワインです。一般的にショート・マセレーションと比較すると色は淡めで、スッキリとしたフレッシュなスタイルになります。プロヴァンス・ロゼの多くがこのスタイルで生産されています。近年、この製法のロゼが世界的に増加している様に感じますが、プロヴァンス・ロゼの世界的人気と関係があるかも知れないですね。

 

[赤と白を混ぜてつくるロゼ]

この製法には白ワインに少量の赤ワインを混ぜてつくるタイプと、白ぶどうと黒ぶどうを混ぜた状態の醪を発酵させてつくるタイプの2つが含まれます。

白ワインに赤ワインを混ぜる製法はEUのワイン法ではシャンパーニュを除いて禁止されていますので、ヨーロッパのスティルワイではこの方法で作られるものはありません。ただ、それ以外の国では普通に存在しています。色はロゼですが、上記の2つの製法のロゼとは何か違う感じがします。もう一つのぶどうの段階で黒と白を混ぜる製法は極少数派です。

【代表的な1本のおすすめ料理】

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?ニース風サラダ(写真:中本 浩平)

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?パッタイ(写真:中本 浩平)

 

ロゼワインのスタイルは多彩ですが、今回ご紹介するプロヴァンススタイルの辛口ロゼの特長は、チェリーとスパイスを連想させる派手すぎない香りとフレッシュな果実味のハーモニーと、それをまとめる穏やかで柔らかな酸味。特別な風味で素材とピンポイントに合わせに行くと言うよりは、料理と合わせると口の中がまろやかで何となく心地よい、という感じがこのタイプのロゼの真骨頂かと思います。一番得意はオリーブオイルと野菜を中心とした地中海料理。例に挙げたニース風サラダは素材が多彩で、どれかの素材とは合っても、他の素材と喧嘩するというワインが多い中、多彩な風味をまとめる力がこのタイプのロゼワインにはあるように思います。そう言った点でオススメなのがアジアのエスニック料理。中華料理とロゼは定番中の定番ですが、タイやヴェトナムなどハーブやスパイスが多用され、多彩な風味が一体になったお料理にもスッと自然体で寄り添っていけるのがこのタイプの魅力です。赤ワインや白ワインでは出て来ない世界観が愉しめますので是非お試し下さい。

【代表的な1本】

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シャトー ラ コスト ロゼ ド ニュイ

エクス・アン・プロヴァンスのオーガニック栽培の畑から生まれるグルナッシュとシラーを主体に、わずかにカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンド。ドライで程よい厚みの果実味を持ったザ・プロヴァンスロゼです。ロゼ ド ニュイとは「一夜のロゼ」という意味で、文字通り一晩だけ果皮をジュースに漬け込む事で生まれる、美しいピンク色の液色が魅力です。ロゼワインの色を愉しむには自然光の下が一番なので、夏のお昼なんかに飲んで頂くと素敵かと思います。冷やしすぎず12℃くらいで飲むのがオススメです。

ワイナリーは建築家の安藤忠雄氏の設計。

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