- 実験編「白ワイン」
ワインは産地によってどう違うの??
~白ワイン編~
2017年02月
ワインと聞いて思い浮かぶ国はどこでしょうか?
伝統的なワイン産地のフランス、コスパが良いと言われているチリ、最近ブームになってきている日本を思い浮かべる人もいるかもしれません。
一般的なスーパーでもいろんな国のワインが手に入るようになりましたが、なかなかその違いまではよくわからない、という人も多いのでは?
今回はまず白ワイン、同じぶどう品種シャルドネで、異なる産地のものを比較してみようと思います。産地によって気候が違うのはもちろん、つくり方もさまざま。いろんな角度から見ていきます。
さて、結果やいかに!?
- 目次
▼ さっそくやってみた!!
まずはワイン!次の5つで試してみました。
ワイン1.
フランス ブルゴーニュ地方シャブリ地区
『ウィリアム フェーブル シャブリ 2014』
ワイン2.
フランス ブルゴーニュ地方コート ド ボーヌ地区
『ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ シャルドネ ”ラ ヴィニェ” 2014』
ワイン3.
日本 山梨県甲斐市
『サントリー 登美の丘 シャルドネ 2014 』
ワイン4.
チリ ラペル・ヴァレー
『サンタ カロリーナ シャルドネ レセルヴァ 2015』
ワイン5.
アメリカ カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
『ウィリアムヒル ナパヴァレー シャルドネ 2014』
使用したグラスは小ぶりのテイスティング用のグラスです。
検証の仕方は、4人のメンバーで試飲して、味わいの要素を最高5点で数値化して比較しました。
さてさて、シャルドネと言えば樽熟成されることが多く、辛口で酸味豊か、りんごや洋ナシのような果実を思わせる香りが特長だったりしますが、産地によってどんな違いがあるんでしょうか??
▼ ざっくりと結果まとめ!!
いきなり今回のざっくりした結果ですが、
★★暖かい産地(チリ、アメリカ)★★
果実味、甘味が豊か
★★冷涼な産地(フランス シャブリとボーヌ)★★
酸味が豊か
★★樽熟成する産地(フランス ボーヌとアメリカ)★★
香りのボリュームと複雑さが豊か
★★特殊な日本★★
暖かい産地だが、果実味などいろんな要素が控えめ
ということに!
同じぶどう品種でも産地ごとにかなり味わいが違う結果になりました。
これを参考に自分好みのワインを探してみては!?
産地ごとの特徴など、詳しくは「検証結果をくわしく!」で。
※一部製品における実験であり、テイスターの主観的な感想です。
【ワイン1】フランス ブルゴーニュ地方シャブリ地区:
『ウィリアム フェーブル シャブリ 2014』
【この産地の特徴】
気候:平均気温15.4℃、平均月間降水量56.6mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
冷涼で降水量は少ない。
ワインの樽熟成:スタンダードなクラスでは樽熟成を行わないことが多い。このワインも樽熟成は無し。
このワインの味わい:酸味が豊かで、果実味・甘味・香りは控えめ。青リンゴやレモンのような若々しいフルーツを思わせる香りで、小さい白い花やよく『ミネラル』などと表現されるスモーキーな香りも感じられる。
キレのあるフレッシュな味わい。
このワインの外観:緑がかった淡い黄色。若い印象がある。
【ワイン2】フランス ブルゴーニュ地方コート ド ボーヌ地区
『ブシャール ペール エ フィス ブルゴーニュ シャルドネ ”ラ ヴィニェ” 2014』
【この産地の特徴】
気候:平均気温15.6℃、平均月間降水量65.9mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
冷涼で降水量は少ない。
ワインの樽熟成:フランス産のオーク樽で熟成を行うことが多い。このワインもフランス産オーク樽で熟成。
このワインの味わい:酸味は豊かで果実味はそこそこ、甘味は控えめ、香りはほどよいボリュームで複雑さがある。熟した黄色のリンゴやトロピカルフルーツ、少しナッツを思わせる香りが感じられる。
上品で複雑みがあり、バランスがよい味わい。
このワインの外観:緑がかった黄色で若い印象。
【ワイン3】日本 山梨県甲斐市
『サントリー 登美の丘 シャルドネ 2014』
【この産地の特徴】
気候:平均気温20.5℃、平均月間降水量136.4mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
温暖でワイン産地では降水量が極めて多い。
ワインの樽熟成:フランス産やアメリカ産のオーク樽で樽熟成を行うものが多いが、しないものもある。このワインは、フランス産オーク樽で熟成したものを中心に、少し樽熟成していないものをミックス。
このワインの味わい:熟した柑橘やナシ、カスタード、食パン、カラメルのような香りが混在している。
複雑みはありながら、いろんな要素が控えめで穏やか。
このワインの外観:薄緑がかった黄色。若い状態から少し抜けてきている印象。
【ワイン4】チリ ラペル・ヴァレー
『サンタ カロリーナ シャルドネ レセルヴァ 2015』
【この産地の特徴】
気候:平均気温19.9℃、平均月間降水量12.9mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
温暖で降水量は極めて少ない。
ワインの樽熟成:樽熟成の仕方(有無)はさまざま。このワインはフランス産オーク樽で熟成。
このワインの味わい:果実味、甘味が豊かで、酸味や香りは控えめ。杏や洋ナシのような果実や黄色い花、ハチミツのような香りも感じる。
豊かな果実味が特徴のシンプルな味わい。
このワインの外観:やや濃いめの黄色。若い状態から少し抜けてきている印象。
【ワイン5】アメリカ カリフォルニア州ナパ・ヴァレー
『ウィリアムヒル ナパヴァレー シャルドネ 2014』
【この産地の特徴】
気候:平均気温18.1℃、平均月間降水量34.8mm
(引用:climate-data.org ぶどう生育期間の平均。)
温暖で降水量は少ない。
ワインの樽熟成:アメリカ産オーク樽を中心に樽熟成を行うものが多い。このワインもアメリカ産オーク樽で熟成。
ワインの味わい:果実味や甘味、香りは極めて豊かで、酸味はかなり控えめ。洋ナシのコンポートやパイナップル、バターやヴァニラ、メイプルシロップなどを思わせる濃厚な香り。
芳醇な果実味、香りが特徴のリッチな味わい。
このワインの外観:濃いめの黄色。粘性もかなりあり、熟した果実を感じさせる。
編集後記(やってみてわかったこと!!)
【結局のところは??】
シャルドネの特長であるりんごや洋ナシを思わせる香りは共通しながらも、その他の要素は産地によってかなり違う印象でした。
★★暖かい産地(チリ、アメリカ)★★
果実味・甘味が豊かに、酸味は控えめに
★★冷涼な産地(フランス シャブリとボーヌ)★★
酸味が豊かに、果実味・甘味は控えめに
★★樽熟成する産地(フランス ボーヌとアメリカ)★★
香りのボリュームと複雑さが豊かに
★★特殊な日本★★
暖かい産地なのに、果実味などいろんな要素が控えめ。
果実味・甘味・酸味は、平均気温とある程度相関が見られる結果になりました。細かく見ると、ほとんど平均気温が同じシャブリとボーヌでも差が見られますが、日較差(一日の最高気温と最低気温の差)なども影響すると言われています。シャブリとボーヌの日較差を比べると約1℃シャブリの方が多く、このことも味わいの違いに影響を与えていそうです。
香りについては、平均気温の影響もありそうですが、樽熟成の仕方(有無)によってもかなり影響しそうな結果になりました。
一方で、日本は平均気温が最も高いにも関わらず、例外的に果実味や甘味などの要素が控えめでした。これはおそらく、極めて多い降雨量や日照量の少なさなどが影響しているのではないかと思います。
【シャルドネ以外の品種でも同じことが言えるの?】
気温や降雨量と味わいの関係は、他の品種でも同じような傾向が見られると思います。温暖であれば果実味や甘味が豊かに、冷涼であれば酸味が豊かに、降雨量が多ければいろんな要素が控えめになると考えられます。
【気候や樽熟成の有無の他に、ワインの味わいに影響する要素は?】
ぶどう畑の土壌や、ぶどう樹の樹齢、ぶどう収穫のタイミングやワインづくりの仕方、現地の味わいの嗜好性なども影響します。また樽熟成も、新しい樽を使うのかすでに何度か使っている樽を使うかによっても味わいは変わってきますし、熟成させる期間によっても影響します。さらに、アルコール発酵をしてくれる酵母も、ぶどう畑に自然に存在しているものを使う生産者もいれば、人工培養した酵母を使う生産者もいて、これによっても味わいがかなり変わると言われています。
こういったさまざまな要素でワインの味わいが変わると考えられています。
【この次。】
今回は白ワインで検証しましたが、次はカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワインを異なる産地で比較してみます!どんな結果になるのか、お楽しみに!!