初の福岡クラスに“歓喜の声”
今年初めて開設された「サントリー1万人の第九」の福岡クラス。九州地方でのクラス開設は、昨年スタートした沖縄に続く2県目となる。福岡県外から通っている人も少なくない。11月2日に福岡市南区のゆめアール大橋で行われたレッスンの模様と、参加者の思いをレポートする。【西田佐保子】
アットホームな雰囲気に包まれたレッスン会場
8月24日にスタートした福岡クラスのレッスンも、11月2日で10回目。練習前の会場は、話し声に笑い声が交じるアットホームな雰囲気に包まれていた。小学生や高校生など、学生の姿も見られる。「こんにちは」。合唱指導の井上智子さん(38)のあいさつで練習が始まった。
まずは、隣の席に座る人への「肩たたき」からスタート。「ここで肩たたきをできるのはあと何回でしょう。肩甲骨周りもたたいてみてください」。会場からは「気持ちが良い」という声が漏れる。「足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。全身の重心は前に、上から糸でつられているようなイメージで」。井上さんは姿勢についても細かな指導しつつ、さまざまな発声練習を30分ほど続ける。「舌を意識しましょう。唇ももう少し使いましょう。声帯、舌、唇があることを意識しましょう」。井上さんが声を掛けるたびに、合唱団の声がどんどん出てくるのが分かる。
後半のレッスンでは、655小節から始まる「二重フーガ」を重点的に歌う。すでに暗譜で歌っている人も見受けられた。「下がっていく音程にあらがうこと」「100人じゃなく、より多くの人に伝える気持ちで歌いましょう」。井上さんの指導にも力が入る。
佐賀から車で通う参加者も
1万人の第九の練習会場で初めて知り合って親しくなったという、アルトパートの3人組に話を聞いた。「ラッキー。絶対、佐渡さんに会いたかった」。1万人の第九の福岡クラスができると聞いて中野真澄さん(65)は思ったという。20代のときに第九を歌った経験のある中野さんは「あの時は、訳も分からず怒鳴っていた感じだけど、今回、井上先生が歌詞の意味やベートーヴェンが第九に込めた思いなどを教えてくれて、深みを感じられました」と語る。
清原由美さん(51)は、福岡クラスの開設を偶然知った。「あるセミナーに参加したとき、隣に座っていた京都の方が、1万人の第九に応募すると話していました。『今年は福岡クラスがあるみたいですよ』と言われて調べてみたところ、練習会場のゆめアール大橋が自宅から近いこともあり、ぜひ参加したいと思いました」。
佐賀県からレッスンに通っているのが鶴田信子さん(56)だ。福岡クラスの開設をテレビで知ったという。「どうしても歌いたいと思って、自宅から車で通っています」。「本当に楽しいです」。3人とも声をそろえた。福岡の参加者の場合、佐渡練(本番前に行う佐渡さんと合唱団との合同練習)の参加は希望者のみだが、3人とも大阪と東京で参加するという。
「第九ロスに陥った」1万人の第九経験者
第九を歌うのは初めてだという大学4年生の宮田晃一朗さん(22)は長崎から通っている。「大学でドイツ語を勉強しています。来年大学を卒業するので、何か記念となる経験ができればと思い、参加しました」。大学1年生のころから1万人の第九の存在を知っていたという宮田さんは、フェイスブックで福岡クラスの開設を知った。「ドイツ語が読めるのはいいけれど、リズムや音程を合わせるのが難しい」と話す。
関西在住時に1万人の第九に参加したという濱崎真吾さん(39)は、「昨年、福岡に戻ってきて、福岡クラスがないことを知り、『今年は参加できない』と第九ロスに陥りました」と語る。昨年、北海道と沖縄にクラスが開設されることを知り、福岡クラスが開設されると「勝手に」思い込んでいたという藤原健寛さん(37)は、「『なぜ福岡を飛び越して沖縄を開設するのか』と事務局にメールを送りました。誘致成功です(笑い)」と誇らしげに語る。
1万人の第九への思い入れが強い参加者の多い福岡クラス。11月16日に全12回のレッスンを終えた。
毎日新聞ニュースサイト
「クラシック・ナビ」に2016年掲載
http://mainichi.jp/classic/