チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

冷やしたパッパ アル ポモドーロ

第92回 2022年08月

冷やしたパッパ アル ポモドーロ

チーズの味わい

完熟トマトの美味しい季節の、簡単につくれるご馳走。とてもシンプルな構成ながら、体に染み込むような滋味深い味わいが楽しめます。出来立ての温かいものも美味しいですが、夏なので冷やしたものを。トマトの酸味がより楽しめます。

準備するもの
トマト3~4個、硬くなったパン(カンパーニュやバゲットなどの粉と塩と水だけのものが良い)2~3枚、バジルの葉5~6枚、オリーブオイル30ml、ペコリーノチーズ30g、にんにく1かけ、塩適宜

つくり方
(1)トマトはダイスカット、パンは一口サイズに千切り、バジルの葉も1枚残して小さく千切る。ペコリーノチーズもすりおろすか小さめに刻む。にんにくは潰しておく。
(2)鍋にオリーブオイルとにんにくを入れ、香りが出るまで温める。そこにトマトと千切ったバジルの葉を入れ、弱火で10分程加熱し、塩で味を調える。パンを加えさらに5分ほど加熱し、ペコリーノチーズを加えて一混ぜし火を止める
(3)粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やし、器に盛りつけた後に残しておいたバジルの葉を飾る。


よく合うワイン

マテウス ロゼ

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ピンクの花 さくらんぼ ラズベリー

とにかくワインが美味しくなる、絶妙の組み合わせ。

マテウス ロゼはポルトガル生まれの世界的ベストセラーのロゼワインです。微発泡とほのかな残糖(15g/Lでそれほど甘いという感じではない)を持ったフルーティな味わいで、幅広いジャンルの料理と相性の良さを発揮する使い勝手の良いワインの一つです。
パッパ アル ポモドーロと合わせると、料理とマテウス ロゼの相性があまりに良い事に驚かされました。とにかくワインが美味しくなります。トマトとバジルの香りはマテウスの中にも共通でしっかりと存在しますし、チーズのほんのりとした乳の甘味には15g/Lの絶妙のこのワインの甘さがピッタリです。しかもこのワインに使われているバガ種の土着品種ならではの風味がペコリーノチーズの特有の風味にピッタリです。合わせて飲んでいてとてもスムースで、自然に感じる絶妙の組み合わせとなりました。むしろ、あまりに自然すぎて合う理由の説明が難しいくらいです。

レゾルム ド カンブラス サンソー/シラー ロゼ 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ピンクの花 オレンジ 白胡椒

口の中に夏がやってくる、辛口ロゼワインの本領発揮の組み合わせ。

南仏の太陽が育てたフルーティな味わいが魅力の、レゾルム ド カンブラスシリーズのロゼワイン。サンソーから来る良く熟した果実を連想させる香りと、シラーから来る落ち着いたスパイシーさを併せ持った味わい。フレッシュな果実味が特長の、カジュアルに色々な食事と合わせてたのしんで頂きたい、しっかり辛口のロゼワインです。
パッパ アル ポモドーロと合わせると、口の中に夏がやってくる感じがあります。地中海エリアの辛口ロゼに特徴的に顕れる、オレンジを連想させる果実味と、そのほろ苦いピールのタッチ。トマトの心地よい酸味と口の中で弾けるバジルの香り。オリーブオイルとペコリーノチーズが両方の味わいをまとめてくれて、ワインのまろやかな果実の厚みと、ゆったりとしたドライさを存分にたのしめる組み合わせとなりました。辛口ロゼワインの本領発揮とも言える例だと思います。

タヴェルネッロ ランブルスコ ロッソ

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

アメリカンチェリー プラム 赤ぶどうジュース

構えずに楽しめる、カジュアルな相性良さを見せる組み合わせ。

ランブルスコはイタリア中部のエミリア・ロマーニャ州を中心としたエリアで栽培される10を超える土着の黒ぶどうの総称です。この土地ではこれらのぶどうから、やや甘口で微発泡性の赤ワインを伝統的に生産し、品種名と同じランブルスコという名前で楽しんで来ました。産地や品種によって違いはありますが、心地よいストレートな果実味がランブルスコ共通の味わいだと思います。微発泡と甘さもあって、飲んでいるだけで楽しくなってくるようなカジュアルな良さのあるワインだと思います。
パッパ アル ポモドーロと合わせると、口の中でとても自然な一体感を感じました。フレッシュなぶどうの果実味を残して、少し甘さもあるのがこのワインの特徴ですが、料理側のトマトの軽快な酸味がランブルスコの甘い部分を心地よく引き締めてフレッシュな果実感がより楽しめる感じになります。パンとチーズとトマトが一体となった味わい後半の滋味深さには、今度はランブルスコの甘さ部分がしっかりと寄り添って全体の味わいの満足度が増す感じ。お互いの良さをしっかりと感じられながらあくまでカジュアル。構えずにワインと料理を楽しめる、とても良い相棒だと思います。

レオナルド キャンティ 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

スミレの花 ブラックチェリー 鉄

悪くないけどちょっと引っかかる、もう一歩な組み合わせ

ワイナリー名は元々レオナルド ダ ヴィンチが所有していた畑の現所有者である事から来ています。ウィトルウィウス的人体図の目を引くラベルも印象的ですが、それだけではなく、著名なイタリアのワインガイド「ガンベロ ロッソ」誌でコストパフォーマンス賞を何度も受賞している実力派です。今年の春に発表されたキャンティの新しい8つ目のサブ・リージョン「テッレ・ディ・キャンティ」の産地でもあります。
パッパ アル ポモドーロと合わせると、ワインの果実味が素直に表現される様に感じました。キャンティと言うエリアのワインはフレッシュさや、気軽に楽しめるフードフレンドリーさが魅力ですが、トマトの軽快な酸味がワインが持つフレッシュなフードフレンドリーさをより引き出してくれる感じがあります。ただ、冷たい料理によって口内が冷やされるからか、ワインが持つタンニンの渋さと、サンジョヴェ―ゼの鉄っぽい風味が少し口の中で引っかかる感じがありました。赤ワインについては料理が温かい状態の方がより好ましい風味になるかもしれません。同郷の料理とワインで、最も期待していたのですが、なかなか思い通りにはなりませんでした。

チャレンジまとめ

今月はイタリア・トスカーナ州の夏を代表する料理、パッパ アル ポモドーロ。トマトとパンでつくるお粥というか雑炊というか、そんな感じの家庭料理です。元々は食べ切れずに硬くなってしまったパンを、トマトの水分で柔らかくして食べた、無駄を出さない生活の知恵的な料理だった様です。チーズが入らないレシピもあり、それはそれでさっぱりと美味しいのですが、チーズが入ると一体感とコクが生まれてより美味しくなるように思います。
とてもシンプルな料理だけに、トマトは是非この時期ならではの完熟した美味しいものを使って下さい。パンも出来れば天然酵母の粉の味がするもの、オリーブオイルもエクストラバージンで。それぞれの素材の良さが合わさる事で、結果的に深い旨味を生む料理だと思います。
今回上位に来たのはロゼ2品。個人的な見解かも知れませんが、ロゼは夏に美味しく感じます。明るい時間が増える事でロゼの色調が美しく見える時間も長くなりますし、日本の蒸し暑さの中で重厚な赤ワインが飲みづらくなる事を考えると、その代替品としても重宝します。「夏はロゼ」「夏のロゼ」その良さを是非体感してみて下さい。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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