チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

チーズエンチラーダス

第90回 2022年06月

チーズエンチラーダス

チーズの味わい

エンチラーダスはとうもろこしのトルティーヤに具材を挟んで焼き、そこにトマトと唐辛子ベースのソースをかけてビシャビシャにしたメキシコ料理。今回の具はシンプルにチーズだけにして、ソースもグリーントマトとハラペーニョ&サワークリームだけです。

準備するもの
コーントルティーヤ2枚、好みのチーズ(ここではフェタ使用、とろけるチーズでOK)100g、オリーブオイル10㏄、トマト(ここではグリーン使用)1個、酢漬けのハラペーニョお好みで、サワークリーム10g、塩適宜、あればリフライドビーンズ、トルティーヤチップなど

つくり方
(1)グリーントマトとハラペーニョを細かく切り、オリーブオイルでソース状になるまで炒める、最後にサワークリームを加え、塩で味を調える
(2)最後の飾り用に少しチーズと取り置き、残りを半分に分けてトルティーヤに載せて2つ折りにし、フライパンで
温める
(3)(2)を皿に盛り、(1)をかける。お好みでリフライドビーンズやトルティーヤチップ、ハーブなどを添える。


よく合うワイン

サンタ バイ サンタ カロリーナ カルメネール/プティ・ヴェルド 2021

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

カシスリキュール ユーカリ チョコレート

お互いの主張で口の中がいっぱいになる組み合わせ。

チリアン ライオンのアイコンでお馴染みのサンタ バイ サンタ カロリーナシリーズの中で、2015年の発売以来不動の売上1位を誇っているのがこのカルメネール/プティ・ヴェルド。チリを象徴するぶどうと言える、凝縮感のある果実味が特長のカルメネールと、スパイシーでパンチの効いた風味を持つプティ・ヴェルドを50%ずつブレンドした、低価格なのに飲み応え抜群な味わいが人気の秘密です。
エンチラーダスと合わせると、ワインと料理の強さ感と、ワインが持つ風味と料理が持つ風味がかなり似ているなという、凄くしっくりと来る感じがありました。子供の時から一緒だった兄弟とか、クラスメートとかに久しぶりに会ったみたいな、懐かしさを感じる同じ風景がここにはあるように思います。それがラテンアメリカという事なのでしょうか。風味だけ見てもカルメネールにはトマトや唐辛子を思わせる風味がありますし、焼いたトルティーヤから来る香ばしさは、プティ・ヴェルドのスパイス感と通じます。なので理論的にも合う事は不思議ではないのですが、何かそれ以上のつながりの深さを感じる素晴らしい相性となりました。ビックリです。

ダークホース シャルドネ 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

マンゴー プリン ココナッツ

風味ピッタリ。お互いの味わいが一緒に溶け合うバッチリの組み合わせ。

ダークホースのシャルドネは、シャルドネだけでなくヴィオニエとゲヴュルツトラミネールという、豊かな果実味とコクを加える品種を隠し味としてブレンドした、もっちりボディの濃い旨辛口白ワインです。メキシコ料理だしハラペーニョが入るので、少し甘味を感じるリッチな果実味を持つ味わいと、隣国アメリカと言う地理的な近さから選んでみました。
エンチラーダスと合わせると、少しピリ辛のソースと、トルティーヤのコーンの香ばしい香りと、ダークホースのまろやかでゆったりとした果実味と、少し残された残糖が包み込んでくれるような感覚を受けました。ワインの貯蔵に使われているオーク由来のココナッツを連想させる甘い香りや、ヴァニラっぽい風味もトルティーヤ&チーズのクリーミーな香ばしさとかなり近しい風味があり、相当に相性が良いと思います。正直これもビックリしました。たまたまなのですが、グリーントマトを使った事で白ワインとの相性が良くなったのかも知れません。これだけ相性が良いという事は、サワークリームのトルティーヤチップスをおつまみにしたら、このワインが凄く美味しく飲めそうです。

タヴェルネッロ オルガニコ テッレ シチリアーネ ロッソ 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリー ラベンダー ナツメグ

ワインの果実の甘さが一気に際立つ、素直に美味しい組み合わせ

オーガニックぶどうからの素直な果実味で大人気のタヴェルネッロ オルガニコから昨年の秋に登場した新しい味わいです。太陽いっぱいのシチリア島産のオーガニックぶどうを使用。シチリアを代表するぶどうであるネロ・ダヴォラにシラーとメルロをブレンドした熟した甘い果実感と、適度なスパイシーさが魅力。同じオルガニコシリーズのサンジョヴェーゼよりも、ボリューム感や飲み応えを感じるタイプです。
エンチラ-ダスと合わせると、ワインの果実のまろやかな甘みが一気に引き出される感じがありました。恐らくエンチラーダスに使ったチーズとサワークリームの効果なのだと思うのですが、ワインの酸味やタンニンがエンチラーダスによって包み込まれる感じで、一気に果実感が際立って来ます。ソースの酸味がまたいいアクセントで、エンチラーダス側の味わいの要素が全てワインの甘さを強調する方向に働いている感じがしました。素直にただ美味しいなと思う組合わせだと思います。

カステル バロン ド レスタック ボルドー 赤 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリー 樽 ディル

レスタックの個性の強さが際立つ、連携しない組み合わせ。

バロン ド レスタックはフランスを代表するワイン会社カステルの看板商品。レスタックはカステルのアナグラムである事を見ても、力の入れようがわかります。長年フランス国内のボルドーAC売上No.1※を維持するロングセラーです。そんなレスタックは2020年ヴィンテージからサステナブル認証であるテラ・ヴィティスを取得しています。これだけの大型ブランドがサステナブルに向かうというところに時代の流れと、カステル社のレスタックへの思いを感じずにはいられません。
エンチラーダスと合わせると、不思議とワインに使われているオーク樽から来るヴァニラやココナッツ、針葉樹などを連想させる香りが強調されて来ました。バロン ド レスタックのセールスポイントは、この価格できちんとバリック樽(225Lの小さな樽)で熟成させてその風味を持っている事で、それがベストセラーの理由なので、そういう意味ではそれが強調される事は、製品の特長が良く出ている事と言えます。ただ、エンチラーダスの味わいがあまり出て来なくなってしまうので、ペアリングとしてはあまり良いとは言えないのではないかなと思いました。レスタックの個性、恐るべしです。

※IRI FRANCE 2019データ フランス国内 ボルドーACワイン 2019年 年間販売数量

チャレンジまとめ

前月のブリトーに続いて、メキシカンです。メキシコ料理はユネスコの無形文化遺産に2010年に登録されています。和食が2013年登録なので、実は和食よりも早く登録されています。特徴はトウモロコシ、豆、唐辛子の3つの具材を主体とする事。考えてみたら、メキシコ原産の食べ物たちが無いと、今の日本の食文化も少し寂しいものになっているかも知れませんね。
今回は素材をシンプルに味わうべく、余計な事はせずトルティーヤ、チーズ、トマト、唐辛子、サワークリームで勝負しました。写真にはリフライドビーンズとトルティーヤチップも写っていますが、合わせる時にはエンチラーダスだけで合わせています。そして、やってみると想像よりも遥かにワインとの相性が良くてビックリしました。とうもろこし粉とワインを合わせるという事をこれまであまりやって来なかったので、わかっていなかったのですが、この組み合わせはアリだなと思います。考えてみたら、ワインの大消費ゾーンである北イタリアがとうもろこし粉を使ったポレンタを常食している事を考えると、合わないワケは無いんですよね。そしてサワークリームの力も大きいです。チーズがワインと相性が良いのは多くの方が体験している事だと思いますが、サワークリームは酸味もある分、実はさらにワインと料理を近づけてくれるかも知れません。これからもっと使ってみようと思ったペアリング体験となりました。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

つづきを読む