チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

ニシンとクリームチーズのオープンサンド

第76回 2021年04月

ニシンとクリームチーズのオープンサンド

チーズの味わい

ニシンと言えば北欧(北海道というのもありますが)。北欧と言えばオープンサンドという事で、今回はこの組み合わせ。ニシンの酢漬けは、日本ではあまり馴染みが無いですが、お寿司屋さんのコハダの感じです。今回は魚が得意な白ワイン4種で試してみました。

準備するもの
ライ麦パン薄切り2枚、クリームチーズ50g、ニシン2匹、紫たまねぎ半個、ディル適宜、マリネ液(ワインビネガー100ml、水100ml、砂糖10g、黒こしょう)、好みでじゃがいも1個

つくり方
(1)食べたい日の前日に、マリネ液の材料を一度沸騰させて、スライスした紫たまねぎ、ちぎったディル(一部を取り置く)を入れた耐熱容器に注ぎ、冷蔵庫で冷やす。
(2)冷えたら、3枚におろしたニシンの身を入れて一晩冷蔵庫で漬け込んでおく。
(3)ライ麦パンにクリームチーズを塗り、マリネの材料と取り置いたディルを載せる(お好みで茹でたじゃがいもを載せても良く合います)。


よく合うワイン

サントリージャパンプレミアム 甲州 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

夏みかん 日本酒 食パン

ワインが劇的に複雑に感じられる。多層的に膨らむ組み合わせ。

サントリージャパンプレミアムは、サントリーの日本ワインのエントリーライン。こちらは、日本を代表するぶどう品種”甲州”をシュール・リー製法で爽やかな辛口に仕上げた1本。特長としては、甲府盆地西部の標高の高いエリアの甲州を多く使用しているので、甲州のワインの中では、和柑橘を連想させる風味が強めで、フレッシュな酸味が主体のクリーンなスタイルである事かと思います。
オープンサンドと合わせると、ワインの柑橘系を思わせる果実味が一気に膨らんでくる感じがありました。単体だと、楚々とした軽やかさやスッキリとした後口が特徴のワインですが、オープンサンドと合わせる事で、それだけではない大きくて多層的な旨味の膨らみが出て来ます。酢漬けの魚とワインと聞いて想像する、鉄っぽいような生臭さも皆無。下のクリームチーズがまた、後口をまろやかにしつつ余韻を伸ばす感じでいい仕事をしてくれます。冒頭で+じゃがいもをおすすめしましたが、このワインの場合は無しの方が、素直にニシンの旨味を愉しめると思います。

メゾン カステル ミュスカデ セーヴル エ メーヌ 2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

グレープフルーツ 黄色いリンゴ 食パン

青魚の香りや旨味が味わえる。素材を愉しむマリアージュ。

メゾン カステルは、フランスNo.1※ワインメーカーのカステル社の最も新しいブランド。発売後、わずか3年で世界84か国400万本/年を販売する主力になりました。セーヴル エ メーヌは、4つあるミュスカデの中でも特に充実した味わいのワインを産むエリア。伝統のシュール・リー製法とモダンな醸造で、クリアかつ旨味のある味わいを実現しています。
オープンサンドと合わせると、とてもまろやかな果実味が感じられました。ミュスカデは酸味が特徴の酸っぱいワインだと良く言われますが、いやいやどうして、爽やかな柑橘を思わせる風味と、堂々とした豊かな果実味を主張するとても美味しい辛口白ワインです。ニシンの味わいも、甲州のような多層的に膨らむ感じではないにしても、青魚ならではの香りや味わいはむしろこちらの方が強く主張してくるかもしれません。歴史的にミュスカデの大得意先はオランダで(近いので)、オランダはにしんの大消費国。そう言った事もこの相性の良さに影響しているかも知れないですね。
※IMPACT DATABANK 2016,World’s Top 10 Wine Marketers(世界での販売数量データ)

ロバート ヴァイル ジュニア ヴァイスブルグンダー 2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

レモン 洋梨 白い花

ライ麦パンとじゃがいもとの一体感を愉しむ。まさにドイツな組み合わせ。

ロバート ヴァイルは1868年創業で歴代ドイツ皇帝に愛された歴史を持つドイツを代表するワイナリ―の一つ。1988年からサントリーグループに加わっています。ヴァイスブルグンダーはピノ・ブランのドイツ名で、スッキリとした飲み口の辛口です。3ヶ月前のウェルシュ ラビットでも使ったのを忘れて、また選んでしまいました。個人的に好きなんですね、このワイン。
オープンサンドと合わせると、ワインの果実の甘さが強く主張してきました。元々、ステンレスタンク醸造でマロラクティック発酵も行わず、スッキリ系の柑橘と、りんごや洋梨を思わせる果実味がストレートに出て来るのがこのワインの魅力ですが、オープンサンドと合わせると、そのストレートな果実の魅力がさらに一回り大きくなって出て来る感じです。不思議な事にニシンの味わいはあまり出て来なくて、ライ麦パンの甘い香ばしさとクリームチーズのまろやかさをとても美味しく感じます。このワインは+じゃがいもで、物凄く落ち着く一体感が出ますので、じゃがいもと合わせるのがオススメです。ライ麦パン+クリームチーズ+じゃがいも、さすがはドイツのワインです。

ビオンタ アルバリーニョ 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

黄桃 洋梨 海

海の香りが溢れ出す。海のワインの面目躍如なマリアージュ。

ビオンタは、スペイン北西部ガリシア地方の海沿いにあり、スペイン最高の白ワインをうむとも言われる、リアス バイシャスのワイン。リアス バイシャスのリアスは、リアス式海岸の名前の元なった言葉です。海のすぐ側でうまれるワインだけに、独特の塩味が特徴とされ、魚介類との相性の良さで知られる「海のワイン」です。使われるぶどう品種のアルバリーニョは、近年、新潟県や富山県で良いワインが出来ていて、日本でも注目されつつありますね。
オープンサンドと合わせると、ワインの味わいに落ち着きが出て来る感じがありました。華やかに広がる熟した果実の力強さと、それに負けない品種由来の強靭な酸のコントラスト、そこに入ってくる産地由来の海のタッチがこのワインの魅力です、その中だと、オープンサンドと合わせる事で、まずは海の潮の香りが最も前に出て来る感じで、その後にキレのある酸味、果実はその後という感じの順序になります。魚介に合わせる海のワインとして、海のニュアンスが一番前に出て来るのは、やはりこのワインらしいと言うべきなのでしょう。海の香りが好きな方にとってはたまらない組み合わせと言えそうです。

チャレンジまとめ

ワインと合わせる時に生臭く感じられやすいという事で、ついつい避けられがちな青魚。でも、ワインを合わせるのが当たり前の食文化のヨーロッパでも、青魚は普通に食べられています。という事は、青魚にワインは決して合わないわけでは無いはず。というわけで、今回は青魚の酢漬けが愛されている(燻製も愛されてますが)北欧の料理で試してみる事にしました。
合わせるワインも、これまでの経験上青魚と相性の良い甲州、ニシンを良く食べるオランダで長年愛されてきたミュスカデ、同じく北欧文化圏に近いドイツのクリーンなヴァイスブルグンダー、”海のものと言えばこれ”のリアス バイシャスと、ニシン対策オールスターの4本でガチンコで合わせに行っています。
結果としては、どのワインも平均点以上の相性で一安心。青魚とワイン、決して合わないわけではありません。今回は生のニシンの酢漬けだったので全て白ワインで合わせに行きましたが、これが焼き魚とか燻製とかだと、一気に赤ワインを合わせに行く芽も出て来ます。秋刀魚なんかは、はらわた部分と合わせるなら赤の方がいいと言う方も多いですし。後は好み!色々やってみて下さい。
あと、今回改めてしみじみ思ったのが、〆サバなどの酢漬けの青魚(米酢ではなくて、ワインヴィネガーとか柑橘の果汁で〆るとなお良し)と茹でたじゃがいもの相性の良さ。和だとあまりやりませんが、ワインに合わせる時だと、そこにオリーブオイルと粗塩を振るだけで極上のおつまみになります(ワインに合わせた風味のハーブやスパイスを足すとさらに素晴らしい)。是非一度お試し下さい。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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