チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

スパナコティロピタ

第74回 2021年02月

スパナコティロピタ

チーズの味わい

ギリシャのほうれん草入りチーズパイです。意味はスパナコ(ほうれん草)、ティロ(チーズ)、ピタ(パイ)。そのまんまですね。ギリシャの人はパイが大好きみたいで、甘いものも、総菜系もとても良く食べるようです。

準備するもの(パイ2個分)
市販の冷凍パイシート2枚、ほうれん草1束、長ネギ2本、ディル1パック、フェタチーズ150g、オリーブオイル大さじ2、塩、こしょう適宜

つくり方
(1)ほうれん草を茹で、粗めに刻む。長ネギは薄切りにして、オリーブオイルで炒める。
(2)フォークで潰したフェタチーズと千切ったディルを冷めた(1)に加える。
(3)パイシートを半分に切って(2)を載せ、上にもう1枚のシートをかぶせる。ナイフで何本か切り込みを入れる。
(4)180℃に予熱したオーブンで40分ほど焼く。


よく合うワイン

フレシネ オーガニック ブリュット

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

黄桃 洋梨 はちみつ

全ての要素が味わいの奥行につながる素敵なマリアージュ。

30年連続で売上No.1※の、名実ともにカヴァのトップメーカーであるフレシネ社がつくるオーガニックのカヴァ。カヴァの主要産地であるカタルーニャ州ではなく、オーガニック栽培に適したバレンシア州レケーナのぶどうを使用しています。マカベオ75%、シャルドネ25%の品種構成からうまれる、まろやかで豊かな果実感が特長です。
スパナコティロピタと合わせると、ワインの味わいに一気に広がりが出て来ました。フェタチーズと出会う事による果実味のふくらみ、ディルやほうれん草との出会いによる爽やかな酸のキレ、パイ皮と一緒になって生まれる瓶内二次発酵ならではの香ばしさを伴った旨味感、どれもが味わいに奥行を出してくれる感じです。ワインの酸のおかげか後口にもパイの重さが残らず、スイスイと次の一口に進みつつも、余韻の旨味がふくらむ素敵な組み合わせでした。
※The IWSR 2019 スペインスパークリングワイン販売数量

タヴェルネッロ オルガニコ テッレ シチリアーネ ビアンコ 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

グレープフルーツ 黄桃 白胡椒

とてもまろやか。ワインが味わいを底支えするマリアージュ。

世界No.1※イタリアワインブランド「タヴェルネッロ」の、オーガニックぶどう使用のシリーズ。テッレ シチリアーネは2020年秋・新発売で、シチリア島の地ぶどうグレカニコ種と、近年世界中で人気のピノ・グリージョ種のブレンドからつくられる、まろやかでふくらみのある味わいの辛口です。
スパナコティロピタと合わせると、ワインの味わいがさらに丸く、まろやかに感じるようになりました。果実味はそれ程前には出て来ず、ただただまろやかでやさしいテクスチュアが口の中に残る感じです。ティロピタの味わいの方が積極的に前に出て来る感じで、どちらかというと、ワインよりもティロピタの方が強いと言っても良いかもしれません。ただ、口の中はまろやかで心地良く、ワインが全体の底支えをする事で満足度が上がっている感じの組み合わせでした。
※2019年販売数量世界上位25ブランドにおいてイタリアワインNo.1(IMPACT DATABANK 2019 EDITIONより)

シャトー ラ コスト ロゼ ド ニュイ 2019

フランス
シャトー ラ コスト ロゼ ド ニュイ 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ラズベリー さくらんぼ タイム

地中海の風味がしっかり引き立つ、合わせて落ち着くマリアージュ。

南仏プロヴァンスの古都エクス・アン・プロヴァンスの近郊で、オーガニック栽培されたぶどうからつくられる、辛口のロゼワインです。シャトー ラ コストはアートと融合させたワイナリーが話題で、建築家の安藤忠雄氏が全体の設計を担当している事でも知られます。ロゼ ド ニュイは彼らのベースラインの1本。”一晩のロゼ”(←果皮を一晩だけワインに漬け込む)の名前通りのフレッシュな味わいが魅力です。
スパナコティロピタと合わせると、ワインのイキイキとしたベリーやチェリーを連想させる風味が、さらに引き立つ感じがありました。ティロピタの具のフェタチーズの原料乳は羊と山羊ですが、その少しクセのある香りとこのワインの持っている地中海風味のハーブ感との相性もとても良い気がします。地中海のロゼらしい程よいアルコール感(13.5%)と厚みのある辛口感がまた、余韻のティロピタの味わいと絡んでいく感じがあって、とても落ち着く組み合わせでした。

フォルタン ガイア オーガニック 赤 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリー ラベンダー オールスパイス

野菜の味がしっかりと味わえる、コンセプト通りのマリアージュ。

ギリシャの大地の女神のガイア(転じて地球も意味します)の名を冠してフォルタンから登場した、「野菜に良く合う」をテーマとしたオーガニック&ヴィーガンフレンドリーの新シリーズです。野菜料理で知られるミシュラン2つ星シェフ、ジャン・リュック ラバネルと共同で味わいを開発しました。こちらはベースのIGPクラスの赤で、グルナッシュ、メルロ、ムールヴェードルのブレンド。果実味豊かでまろやかな味わいが特長です。
スパナコティロピタと合わせると、ほうれん草と長ネギとディルという野菜の風味が一気に前面に出て来る感じがありました。本来このワインが持っている果実の甘さや、スパイシーさが失われるわけではなく、そこにディルやほうれん草からの爽やかさや、長ネギの香ばしいコクがプラスされ、味わいが広がる感じです。さすがは野菜料理をイメージしてつくられた赤ワインらしく、料理側が物足りない感じは皆無で、ジューシーな果実感と、滑らかなタンニンが味わえる良いマリアージュになりました。

チャレンジまとめ

今月はギリシャの料理なのですが、サントリーでは現在はギリシャのワインは輸入していませんので、近いエリアという事で、地中海沿岸でつくられるワインたちを選んでみました。このエリアのワインたちは、温暖で晴天率の高い地中海性気候で育つぶどうからつくられますので、しっかり熟した果実感と、まろやかな酸味が特長の、安心感のある味わいのワインたちが多いですね。
合わせるスパナコティロピタの具はチーズと野菜です。フェタチーズからのほのかなクセとディルの香りはあるものの、本質的にはまろやかでやさしく、滋味深い味わいが特長です。程よい食べ応えがありながらも体に優しい感じは、基本的に同じ方向性の味わいを持った、このエリアのテーブルワインたちと相性が良いと感じました。
また、この方向性の味わいは、どこかオーガニックのワインにも通じるところがあるようにも思います。奇しくも、今回選んだワインは4本ともオーガニック認証のワインたち。スパナコティロピタが、今回のどのワインとも悪くなかったのは、そんな事も理由の一つかも知れないなと思いました。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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