チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

焼き里芋の味噌ラクレット

第71回 2020年11月

焼き里芋の味噌ラクレット

チーズの味わい

里芋をフライパンでホクホクに焼いてから、里芋と相性の良い味噌と、芋と言えばコレというチーズのラクレットを混ぜたソースをかけてトースターで焼きました。ほっくりとした秋の美味しさです。写真の見た目はあまり良くないですが、本当に美味しいですよ!

準備するもの
里芋(大きめ)3個、ラクレットチーズ60g、味噌30g、オリーブオイル適宜

つくり方
(1)里芋は皮をむいて厚さ2~3cmくらいにスライスする
(2)フライパンにオリーブオイル少々を熱し、里芋の両面に焼き色がつき、柔らかくなるまで焼く
(3)その間にラクレットチーズを細かく切り、味噌と混ぜ合わせてソースを作っておく
(4)里芋を耐熱容器に並べ、その上からソースをかけて、オーブントースターで味噌に少し焦げ目がついて、チーズが溶けるまで焼く


よく合うワイン

サントリー登美の丘ワイナリー登美の丘 甲州 2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

夏みかん 黄桃 食パン

口の中が美味しさでいっぱいに。複雑なコクの出るマリアージュ。

山梨県の甲斐市にある、サントリー登美の丘ワイナリーの自家ぶどう園で収穫された甲州を100%使用しています。登美の丘の甲州の特徴は、11月になる事も多い収穫の遅さ。完熟するまで収穫を待つ事で生まれる、やわらかで厚みのある果実味と、桃を連想させる華やかな甘い香りが魅力です。
里芋と合わせると、ワインの味わいの膨らみや厚みが大きく広がる感じがありました。ワイン自体が今飲み頃の感じがあって、単体でもイキイキとした魅力を放っているのですが、そこにさらに複雑味が増してくる感じです。里芋の方にも、柚子味噌的なしっくり来る風味が加わり、さらにカリッと焼き目を付けた味噌や里芋の香ばしさと、ワインにある香ばしい感じも相乗効果を生み出して、口の中が美味しさでいっぱいになります。登美の丘 甲州の2018年は20%樽発酵を行っているのですが、樽から来る香ばしさや、ワインの持つクリーミーな感じが味わい全体の複雑さやコクを足してくれている気がしました。前から思っていましたが、甲州と味噌は本当に良く合います。

ほっこりまろやか。秋の夜長にじっくり味わいたいマリアージュ。

1731年創業のブルゴーニュを代表する老舗生産者、ブシャール ペール エ フィスの名刺がわりと言える1本。”ラ・ヴィニェ”とは農夫一人が一日に耕せる畑の広さを示すこの地方の古い言葉。畑仕事を大切にする、この生産者らしい名前です。コート シャロネーズ地区のぶどうを中心にブレンド。上品な果実味と樽香が融合した、ブルゴーニュ シャルドネの典型の味わいです。
里芋と合わせると、とてもまろやかなハーモニーが口の中に産まれるのが感じられました。溶けたチーズのまろやかさと、里芋のほっくりとした柔らかさに、シャルドネの厚みとボリュームのあるテクスチュアがぴったりと寄り添う感じがあります。樽熟成の香ばしさと、味噌・里芋・チーズが少し焦げた香ばしさも良く合って、ほっこりとした時間が過ごせそうな、まろやかな相性となりました。秋の夜長にじっくり味わいたい組み合わせです。

ソラール ビエホテンプラニーリョ 2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリージャム スミレの花 オリーブ

ワインが少し軽く感じる、味噌の強さを実感するマリアージュ。

ソラール ビエホはスペインを代表する産地であるリオハのワイナリー。リオハ北部のリオハ アラベサに位置し、果実味のしっかりしたクリーンなスタイルのワインをうんでいます。テンプラニーリョはこのワイナリーのベースラインとなる1本。あえて樽を使わず果実そのものの味わいを愉しんで頂くスタイルです。
里芋と合わせると、ワインが軽やかで華やかになる感じがありました。元々が素直でストレートに果実が出て来る感じのワインではありますが、果実の部分はプラムやイチゴを思わせる軽やかな赤い果実感を感じるようになり、フワっと小さな赤い花の印象なんかも出て来ます。料理の方はというと、味噌のインパクトが強く出るようになり、里芋の感じがあまり前に出て来ません。チーズは余韻に心地よく感じられますが、全体のバランスで言うと、料理の方が少しワインよりも強いような感じがしました。

サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ 2015

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリー シダ カツオブシ

しっとり甘い、旨味抜群のマリアージュ。

日本のメルロの代表産地として知られる塩尻の、自社管理畑や地元の契約栽培農家さんが栽培したメルロを、サントリー塩尻ワイナリーで丁寧に醸造しました。日本らしい独特のしっとり感と繊細な味わいが魅力。15年は7~8月に雨が多く、軽めの仕上がりになったヴィンテージですが、だからこそと言えるのか、現時点で熟成による複雑さが感じられる状態になっています。
里芋と合わせると、ワインがとても甘く感じられるようになりました。ワインにある湿った森を思わせるしっとりとした風味と、里芋や味噌に感じられる土を思わせる風味がしっかりと結びつく感じで、強い一体感が感じられます。ワインの熟成感から来るカツオブシを連想させるダシ的な風味と味噌の相性も抜群で、これぞ和の旨味という感じの、軽やかだけど長い余韻を感じる事が出来ました。熟成した塩尻のメルロに特徴的に顕れる、湿った土やシダ、そしてどこか松茸にも通じるしっとりとした香りは、根菜との相性が抜群に良いと思います。

チャレンジまとめ

僕にとって秋になると食べたくなるものの一つが里芋。煮物や汁物のネットリとした食感の里芋も美味しいですが、焼いてホクホクした里芋の味わいもまた格別ですね。
今回は「里芋が食べたい」+「チーズ」という事で、ここに里芋と相性の良い味噌を加えて焼くというシンプルな料理で相性を試してみました。
結果として日本ワイン2つとの相性が良かったのですが、この2つの合い方は少し異なりました。
甲州はシンプルに味噌という調味料との相性が良いなあとしみじみ思いました。登美の丘の甲州は樽も使っているし、遅摘みでボリュームのあるタイプの甲州なので、チーズも里芋もしっかりと受け止めてくれました。ただ、よりシンプルなスタイルの甲州だと、もしかしたらこの料理の強さに負けてしまう可能性もあったかと思います。
それに対して塩尻のメルロとの合い方はまた少し違っていました。エリア特性ともいえる塩尻メルロの土を思わせる風味が里芋と凄くいい感じで結ぶ付くのに加えて、5年の熟成から出て来る土を思わせる熟成風味と旨味感が、これまた里芋と味噌ととても良く合いました。品種+産地+飲み頃の3つが料理とピタっと合った、見事な組み合わせだと思います。
甲州とメルロ、どちらが合うのかと聞かれると、どちらも捨てがたく美味しく、後は好みの問題と言うしかない気がします。
あと、味噌は塩分の加減が商品毎にかなり異なるので、塩分濃度高めの味噌を使用する場合はご自分で使う量を加減して下さい。チーズにも塩分が含まれるので、下手すると塩辛くなりすぎますのでご注意を。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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