チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

セル・シュール・シェール

第50回 2019年02月

セル・シュール・シェール

チーズの味わい

セル・シュール・シェールはフランス・ロワール地方のシェール川(ロワール川の支流)沿いでつくられる、山羊乳からのシェーヴルチーズで、ワインと同じく原産地呼称(AOP)制度で保護された伝統的な産地のチーズです。
セル・シュール・シェールの魅力は何と言っても山羊乳の中でも特にキメの細かいテクスチュアと、乳の甘味と酸味、塩味の見事なバランス感。個人的にはシェーヴルチーズの最高峰にあると思います。とてもエレガントで品格のある味わいのチーズですので、山羊乳が苦手な方、初めて山羊乳のチーズを試す方にもオススメです。周りが黒いのは良い熟成を助けるために、ポプラの木炭がまぶしてあるからで、皮ごと食べれます。皮に旨味がありますので、是非皮ごと。


よく合うワイン

ヤルンバ ワイシリーズ リースリング 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

白桃 白い花 はちみつ

繊細なもの同士、人見知りするマリアージュ。

第24回でも取り上げたオーストラリアのリースリング。ドイツ人たちが最初に定住したと言われるバロッサ産で、シャープな酸味とピュアな果実味を併せ持ち、奥にしっかりとしたミネラルを感じる、繊細な味わいです。
セル・シュール・シェールと合わせると、ワインもチーズもお互いに、出会いに戸惑いを見せるような印象がありました。透明感のあるパリッとした果実と酸味が目立っていたワインが、にがりや硬度の非常に高いミネラルウォーターを思わせるドロリとした質感を感じるようになり、チーズも本来のキメの細かさよりも少しホロ苦さを帯びた、これもにがり的な質感が前に出てきました。お互いに繊細なワインとチーズで、見せてくれる味わいはミネラル感で共通です。同じ方向を向いていると言っても良く、もっと仲良くなれるはずと思うのに、何かお互いにちょっと自分を出し切れない。そんな組み合わせでした。ワインがもう少し熟成するとピタっとくる気がします。

ドメーヌ ジェラール ミレ サンセール 2016※終売しました

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

グレープフルーツ ディル 石

見事な一体感。同じ土地で生まれる者同士の間違いのないマリアージュ。

第45回で試したばかりのワインですが、山羊乳(シェーヴル)チーズとロワールのソーヴィニヨン・ブランというのは、鉄板の相性を誇る組み合わせとして有名ですので試さずにはいられません。ソーヴィニヨン・ブラン種の一つの典型と言える、爽やかな柑橘系と、ハーブを連想させる香りを持った、透明感のあるスタイルです。
セル・シュール・シェールと合わせると、口の中でワインとチーズが一体となる素晴らしい感覚が味わえました。ワインの酸味とシェーヴルの酸味が綺麗に溶け合い、お互いのキメ細かなテクスチュアもピッタリで、かつ余韻に残るミネラルの質感までしっくりきます。ワイン単体、チーズ単体で味わうよりも、明らかに味わいの余韻が長くなるこの感じはマリアージュの醍醐味の一つと感じました。まさに鉄板の相性です。サンセールは、同地方で生産されるクロタン ド シャヴィニョルというチーズとも素晴らしい相性ですので、こちらも是非お試し下さい。

ダークホース ロゼ 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

チェリージャム オレンジ さくらの花

味わいの格が1ランク上がる。全体に複雑さを増すマリアージュ。

常識やぶりの味わいで人気のダークホースのロゼは、グルナッシュを主体にしたプロヴァンススタイルのしっかり辛口のロゼワイン。プロヴァンス的なオレンジの皮を思わせるホロ苦さと、カリフォルニア的なボリュームのある果実味の両方を感じられるのが魅力です。
セル・シュール・シェールと合わせると、口の中でワインの香りが大きくふくらむ感じがありました。特に果実よりもピンクの花を思わせるフローラルさが強くなり、フレッシュで華やかな印象になります。チーズは味わいの部分で強く出てきて、チーズのキメ細やかでしなやかな質感が、ある意味ザックリとした質感のカリフォルニアのロゼの味わいに1本ピンと芯をつくる感じになりました。味わい全体の複雑さや、余韻の長さも増す感じで、味わいの格が1ランク上がる感じの組み合わせになりました。

カロ アルマ マルベック 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリージャム スミレの花 ミックススパイス

かなりの異質感。どうも落ち着かない感じがするマリアージュ。

カロは、ボルドー・メドック地区1級筆頭のシャトー ラフィット・ロートシルトを擁するドメーヌ バロン ド ロートシルト社と、アルゼンチンのトップワイナリーであるカテナ社のジョイント・ワイナリー。アルマは、両者のスタイルを活かした洗練された味わいが特長です。
セル・シュール・シェールと合わせると、どうもあまり落ち着かない感じを受けました。アルゼンチンワインの前面に主張して来る果実感と、涼しい気候を感じるチーズの繊細な感じが、やや異質な印象を与えてしまうようです。カロはアルゼンチンの中ではかなり繊細なタイプなのですが、それでもチーズよりもワインの味わいが前に出てしまって、セル・シュール・シェールの良いところである、キメ細やかなテクスチュアや、繊細な味わいのバランスというのがややマスクされてしまう感じがありました。食べた後にも、少し重い感じが残ってしまい、お互いにちょっと勿体無い気がする組み合わせでした。

チャレンジまとめ

気付いたら50回という事で、今回は担当・柳原が最も愛するチーズである、セル・シュール・シェールを取り上げさせて頂きました。山羊乳チーズは日本ではまだまだ馴染みが少ないですが、山羊乳は成分的にはヒトの母乳に最も近いとされ、チーズの一大産地であるヨーロッパでは幼児や老人、体調の良くない人にシェーヴルチーズを食べさせたりします。それくらい体に優しいチーズなんですね。
真っ白の美しい中身と、牛乳や羊乳のチーズと明らかに異なるキメの細かい質感が山羊乳の魅力。特有の香りがあって、それを苦手とする方もいらっしゃいますが、サンセールなどのロワールのソーヴィニヨン・ブラン種からの白ワインとの相性を試して頂ければ、繊細な風味と自然に体に吸収されていくやさしいテクスチュアという山羊乳チーズの良さを実感頂けると思います。日本で山羊乳からチーズをつくる方々も少しずつ増えていますので、そちらも機会があればお試し下さい。熟成度合いにもよるのですが、比較的熟成が若めで柔らかいタイプの山羊乳のチーズには、爽やかで酸味がクッキリしたタイプの白ワインが良く合うと思います。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

つづきを読む