チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

カキのグラタン

第49回 2019年01月

カキのグラタン

チーズの味わい

この季節になるとやっぱりカキが食べたくなります。生ガキも、もちろん最高ですが、冷える夜に食べる熱々のグラタンはなんとも言えないご馳走ですね。

準備するもの(お好みの分量で)
 カキ(加熱用)、シュレッドチーズ、
 ホワイトソース、白ワイン、塩
 好みの青菜類(ほうれん草、菜花など)、

つくり方
 洗ったカキと白ワイン適量を耐熱容器に入れて電子レンジで2分ほど(カキの量と大きさによる)加熱する。青菜をラップフィルムで包み、電子レンジで1分弱加熱する。
 加熱したカキとその煮汁、青菜、ホワイトソース、塩を混ぜ合わせてグラタン皿などの耐熱容器に入れ、上にシュレッドチーズを乗せる。オーブントースターで香ばしく焦げ目がつくまで加熱する。


よく合うワイン

ウィリアム フェーブルシャブリ 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

レモン 石 黄色いリンゴ

文句なし。ミネラルがミネラルを呼ぶマリアージュ。

ウィリアム フェーブルはシャブリのトップブランドの一つ。シャブリという土地の味わいをそのまま映し出したような、ピュアで引き締まった辛口です。シャブリの一帯は1億5千万年ほど前には海だったという事で、シャブリの畑を歩くと小さなカキの貝殻の化石が入った石が沢山転がっています。それもあって、カキにはシャブリというのが一つのマリアージュの定番になっていますね。
実際にカキのグラタンと合わせてみると、当然なのかも知れませんが文句なしの相性でした。チーズのクリーミーさとシャブリのキレのある酸のコントラストが心地よく、ワインの柑橘を思わせる香りとカキの潮っぽさが綺麗になじんでいきます。カキの生臭さも皆無です。そして何よりもシャブリとカキの共通の特長であるミネラル感が、口の中いっぱいに広がるのがとても魅力的でした。お互いがお互いのミネラルを呼ぶ感じで、やはりこの組み合わせは長所を高めあう最高のペアの一つと言えるのではないでしょうか。

 カステル バロン ド レスタック ボルドー ブラン 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

グレープフルーツ ディル 樽

前半と後半で2つの違った味を愉しめる、お得感のあるマリアージュ。

2001年から17年連続でフランス国内でのACボルドーワインの売上No.1※を維持している、ボルドーワインを代表するブランド。人気の秘訣は、ヨーロッパ最大級の熟成庫でしっかりと小樽熟成をしている事。価格を超えたコストパフォーマンスが感じられる、堂々とした味わいです。樽熟成したワインはクリーム系の味わいと相性が良い事が多いので、今回久しぶりに選んでみました。
カキのグラタンと合わせると、まずはワインのドライさと味わいの厚みがグッと前に出て来る感じがありました。面白かったのが、前半はカキの香りとワインの柑橘やディルを思わせる爽やかなハーブ系の香り、後半は樽熟成由来の香ばしい甘い香りと焦げたチーズとホワイトソースのクリーミーな香りという、異なった要素同士が絡んで、前半と後半で二度愉しめる素敵なマリアージュになったことです。余韻のクリームとカラメルを連想させるコックリとしたコクも心地よく、最後まで愉しめる組み合わせでした。

※IRI FRNCEデータ フランス国内 ボルドーACワイン 2001年-2017年 年間販売数量

ロス ヴァスコス ロゼ 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

チェリージャム オレンジ 白胡椒

やっぱりミネラル感、味わいに集中度が増すマリアージュ。

フランスのボルドー地方のトップシャトーの一つシャトー ラフィット ロートシルトを擁する、ドメーヌ バロン ド ロートシルトがチリでつくるワインです。ロゼについて、ワインメーカーは「食事と自然に寄り添うプロヴァンス ロゼのような味わいをつくりたい。」と言っていました。ぶどう品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に少しシラーをブレンドという事で、プロヴァンス ロゼ(サンソーやグルナッシュ主体)とは異なりますが、しっかり辛口で厚みのある味わいは確かにプロヴァンスのロゼを彷彿とさせるものです。
カキのグラタンと合わせると、ワインの酸味とミネラル感が強調される感じがありました。ワインの味わいに集中度が増して、単体で飲むよりも味わいが濃く感じられます。潮風を感じさせるミネラル感が強く感じられるようになったのも大きな変化でした。グラタンの方はというと、香ばしいチーズの焦げ目やクリームの甘さがしっかりと引き出される感じがありました。カキも程よく香りが出て前の白ワイン2つほどのピッタリ感ではないものの、十分に美味しい組み合わせとなりました。

ヤルンバ ワイシリーズ カベルネ・ソーヴィニヨン 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

カシス ミント 鉄

思ってたより悪くなかった、瑞々しさも感じるマリアージュ。

オーストラリアを代表する家族経営ワイナリー、ヤルンバを知る入口となるのがワイシリーズ。ワイ=your wineを意味し、あなたの1本をこのシリーズから見つけて欲しいという願いが込められています。カベルネ・ソーヴィニヨンは丁寧な抽出から来る、程よい構造感と飲み口のよいやさしい果実味が特長。ヤルンバらしいエレガンスとバランス感を重視したつくりです。カキと赤ワインはなかなか合わせないですが、合わせるなら繊細なタイプが良いかと思って選んでみました。
カキのグラタンと合わせると、単体で飲むよりもワインの渋さが目立つ感じになりました。ただ、心配していた「カキの生臭さが広がってどうしようもなく口の中が不快」みたいな事は全然起こらず、普通に飲めてしまいました。むしろ、カキの香りと若いカベルネ・ソーヴィニヨンの瑞々しい青い香りが合っているような気さえします。全く期待していなかったからという事もあるかも知れないですが、意外に悪くないなというのが素直な感想でした。

チャレンジまとめ

チーズと言うよりは、カキにワインを合わせに行った感じですが、それでもやっぱりチーズの力は大きくて、カキとワインをグッと親密にしてくれたと思います。例えばバロン ド レスタック。カキとワインだけだと、樽熟成の樽の部分が邪魔になってしまうところを、チーズの乳脂肪は樽からくる成分(ヴァニラ系の香りやタンニン)と相性が良いので味わいに膨らみが出てきました。赤ワインとカキも、そのままあわせると魚介の生臭さが際立ってしまうところを、チーズの乳脂肪分がクッションになってくれる事で、生臭さ皆無で、それなりに美味しいと思える感じで合わせられました。
とは言え、やっぱりカキにはシャブリです。口の中にハッキリと固体のように感じるミネラル感は、ワイン単体の時の恐らく数倍に達すると思います。二つのものが出会う事で、味わいが数倍に膨らむ、これがマリアージュの醍醐味だと感じました。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

つづきを読む