チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

モン ドール

第36回 2017年12月

モン ドール

チーズの味わい

モン ドールとは「黄金の山」と言う意味。フランス東部のスイス国境近くでつくられている、ウォッシュタイプの山のチーズです。
季節を感じるチーズで、生産出来る期間が8月15日~翌年の3月15日と決まっています。規定の熟成期間(最低21日間)を考えると、市場に出回るのが大体9月~3月と決なるので、モン ドールが出て来ると「秋だなあ。」と思います。
写真の通り、熟成によってトロトロにやわらかくなり、切ってではなくスプーンですくって食べます。ウォッシュタイプですが濃厚なミルクの香りが中心で、ほとんどクセはありません。周囲をエピセアというもみの木の板で巻いてあり、それによって独特のほのかな木の香りをまとっています。
口の中でスルリと溶けていく、とにかく滑らかな質感はこの時期だけのお愉しみです。安くはありませんが、一年に一度は食べたくなる魅力あふれるチーズです。是非お試し下さい。


よく合うワイン

ロス ヴァスコスシャルドネ 2016

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

洋梨 グレープフルーツ 石

ワインのエレガントさが前面に出て来るマリアージュ。

フランスのボルドー地方のトップシャトーの一つがチリでつくるワインです。ワインメーカーが目指す味わいは「シャブリのような味わい」。オーク樽で熟成する事が多いシャルドネを、あえてステンレスタンク100%で熟成させた、ピュアな果実味とキレのある酸が特長のワインです。
チーズと合わせてみると、ワインの果実味の部分よりもそれ以外の部分が強調される結果となりました。具体的には、酸味がより引き締まってイキイキとして感じられ、少し塩っぽいワインのミネラル感と表現される味わいがグッと引き出される結果になりました。チーズは最初は乳の甘さがしっかりと出て来るのですが、次第ににがりのような少しホロ苦さを帯びた旨味感を強く出して来るのが印象的でした。
このワインはよく「エレガント」と表現されるスタイルの味わいなのですが、その「エレガントさ」がチーズと合わせる事でよりハッキリと感じられるような気がします。逆にチーズは少しワインを引き立てる役割になっているように感じました。

お互い相手の領域に踏み込めない、もどかしさの残るマリアージュ。

ジャン ガイラーはフランス・アルザス地方の伝統ある協同組合。こちらのワインは第18回で試したレゼルブ パルティキュリエールよりも、ぶどう樹の樹齢が高く、限定されたエリアのぶどうを使用しています。完熟したぶどうから来る、厚みのある味わいが特長です。
チーズと合わせてみると、意外にお互いに反応し合わないなというのが第一印象でした。チーズはチーズで滑らかで甘く、ワインはワインで熟した果実味と強靭な酸というメリハリの効いた味わいをしっかりと出して来て、それぞれに十分に美味しいのですが、特にお互いを高め合う感じではありません。「お互いの仕事を尊重してるから、相手の領域には踏み込まないようにしてるんですよね。」と言うような、耳当たりは良いけど何かが足りない感じのもどかしさを感じるマリアージュでした。

マクマレーロシアン・リヴァー・ヴァレー ピノ・ノワール 2014

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

アメリカンチェリー 赤いバラ シナモン

滑らかさの相乗、快感とも言える素晴らしいテクスチュア。

マクマレーはアメリカ・カリフォルニア州のソノマ地区にある、ピノ・ノワールだけに特化したプレミアムワイナリーです。このワインはソノマ郡の中でも、特に冷涼でピノ・ノワールの栽培に適しているとされるロシアン・リヴァー・ヴァレーのぶどうを使用。素晴らしく滑らかな口当たりが特長です。
チーズと合わせてみると、ワインとのテクスチュアがピッタリだなと思う組み合わせでした。チーズもワインもとてもキメが細かく滑らかな口当たりで、それが二つ合わさる事で、スベスベのなんとも言えない快感とも言える素晴らしいテクスチュアが生まれました。
味わいの点でも、ワインからはスミレやバラの花を思わせる芳香や、なんとも色気のある果実感が引き出され、チーズからはキノコや森を連想させる複雑な熟成感が引き出されるなど、お互いを高め合う新しい味わいが出てきました。
モン ドールとピノ・ノワール。とても良い相性だと思います。

香りも味もお互いの良いところを引き出す、本当に良いマリアージュ。

1889年のパリ万博で、チリのワインとしてはじめて国際コンクールで金賞を獲得したサンタ カロリーナの看板ワインの一つです。レセルヴァ デ ファミリアは「家族用のとっておき」という意味で、元々は一般発売もされていませんでした。古木のぶどうを使用した、凝縮感あふれる味わいです。
チーズと合わせてみると、色々な要素が口の中で渾然一体となって、あれこれ考えるよりも先に「ああ美味しい。」と素直に感じられました。カベルネ・ソーヴィニヨンにある針葉樹的な香りと、モン ドールに巻かれたもみの木の香りの共通性、ワインにあるコーヒーを思わせる香りとチーズの甘い乳の香りが合わさって生まれる入れたてのカフェオレのような香り、そして濃密なカシスリキュールのトーンを包み込むようなクリームの香りなど、お互いに香りの良い部分を引き出し合う組み合わせでした。味わいでもワインの力強い果実味やタンニンが、チーズによってまろやかになり、より甘く、より滑らかに感じられました。これはお互いの良いところを引き出す、本当に美味しい組み合わせです。

チャレンジまとめ

くせなく乳の甘さや熟成による旨味がストレートに味わえるチーズなので、比較的色々なタイプのワインと相性が良いと思います。今回も、どのワインとも喧嘩することなく(一つだけ反応しないのもありましたが)、ワインの良さを引き出してくれた気がします。
今回発見だったのは、モン ドールとカベルネの相性の良さでした。チーズの産地がジュラ地方という事もあり、個人的にはこれまでモン ドールとは白ワインやブルゴーニュ(産地の距離が近い)のワインを良く合わせて来た気がします。今回もシャルドネやピノ・ノワール(これらのぶどうはブルゴーニュ原産)とももちろん素晴らしい相性で素晴らしかったのですが、カベルネ系のワインが持つ針葉樹系の香りにモン ドールを合わせるというのは、それを超える喜びを与えてくれました。
やる前から理論である程度マリアージュの結果は予想出来ると言っても、やっぱり最終のところは実際にやってみないとわかりません。僕が美味しいと思うものをそう思わない方も沢山いらっしゃると思います。マリアージュはやっぱり実践!皆さんも色々と試してみて下さい。
ちなみにモン ドールは、木の容器ごとオーブンやトースターで焼く(燃えないように容器はアルミホイルで包んで下さい)、「焼きモン ドール」も絶品です。トロトロ感がさらに増す魅惑の味わいですので、こちらも是非試してみて下さい。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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