チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

カマンベール ド ノルマンディー

第35回 2017年11月

カマンベール ド ノルマンディー

チーズの味わい

最も有名で人気のあるチーズの一つです。カマンベールと名前のつくチーズは世界中でつくられていますが、その元祖がこのカマンベール ド ノルマンディーです。
フランス北西部のノルマンディー地方にある、カマンベールという名前の小さな村がこのチーズの生まれ故郷で、チーズの名前もこの村から来ています。ブリーと並んで白カビタイプを代表するチーズです。
世界中でつくられているその他のカマンベールと比較すると、生産地域、熟成期間、製法などが厳しく規定されており、使われる乳も無殺菌と決められています。
第2回で取り上げた、明治さんの十勝カマンベールチーズとの最大の違いは、明治さんのチーズが食べ頃のタイミングで加熱殺菌を行い、いつ食べても同じ味わいをキープしているのに対して、カマンベール ド ノルマンディーは熟成によって日々味わいが変化していくところです。少しずつ食べて、自分好みの熟成状態を探してみて下さい。


よく合うワイン

フレシネ コルドン ネグロ

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

黄色いリンゴ 白い花 機械油

ワインの豊かさ、チーズの旨味がグッと膨らむマリアージュ。

世界No.1※カヴァメーカーであるフレシネ社の看板商品です。コルドン ネグロは「黒いリボン」の意味。その名前の通りの真っ黒なボトルがトレードマークです。本格的な瓶内二次発酵製法でつくられた、しっかりとした辛口の味わいで、世界の食卓の定番となっています。
チーズと合わせてみると、ワインもチーズも味わいの豊かさを増すように感じました。チーズのまろやかさがワインの果実味にコクを与え、ワインによって、チーズの旨味がより力強く、しかも長く感じられます。最低18ヶ月以上というコルドン ネグロの瓶熟成期間と、程よい熟成感のあるカマンベールチーズとが出会う事で、焼いたパンやマッシュルームなどを思わせる複雑で芳醇な香りが生まれて、とても美味しく感じられるマリアージュでした。コルドン ネグロの細やかな泡立ちと、カマンベールの柔らかなテクスチュアもピッタリでした。

※The IWSR 2016 スペインスパークリングワイン販売数量

ウィリアム ヒルナパ・ヴァレー シャルドネ 2014

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

マンゴー バニラ バター

オーク樽の影響が強く前に出てくるマリアージュ。

カリフォルニアで最も有名なワイン産地であるナパ・ヴァレー産のシャルドネからつくられた白ワインです。冷涼なカーネロスと温暖なカリストガのぶどうをブレンドする事でバランスの取れた味わいをつくっています。完熟果実の味わいが力強く訴えてくる、リッチでコクのある辛口です。
チーズと合わせてみると、ワインのオーク樽由来のバニラの香りや、ワイン単体ではそれ程強く感じなかった大輪の黄色い花を思わせる香りが強く出てきました。チーズの方は、それ程目立つ変化は無いのですが、少し動物を思わせる香りや白カビの香りが目立つようになった気がしました。味わいでも、ワインのオーク樽由来と思われる苦味が強調されてしまいました。チーズの方でも不思議と鉄のような味わいが口に残ってしまって、あまり心地よくない感じです。トロリとしたワインと、クリーミーなカマンベールチーズというのはテクスチュアの共通点が多く、うまく融合してくれるかと期待したのですが、残念ながら少し期待を裏切る結果でした。オーク好きの方は悪くないと思われるかもしれません。

ジョルジュ デュブッフボジョレー ヌーヴォー 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

■ベリー■いちご キャンディ ピンクの花

中身部分と皮部分で反応が全く異なるマリアージュ。

「ボジョレーの帝王」がつくる、王道のボジョレー ヌーヴォーです。2017年は素晴らしい天候に恵まれ、『香り高い中にもフレッシュな酸が活きて芳純』 というジョルジュ デュブッフ氏の評価です。
チーズと合わせてみると、ワインの持っている色々な香りが引き出されるように感じました。フレッシュないちごや花の香りだけでなく、奥に潜んでいる赤いさくらんぼやラズベリー、クランベリーなどを思わせる多彩な果実感が出てきたのが印象的でした。チーズの方は乳の中身部分と白カビの皮の部分とで全く異なる反応になりました。チーズの中身部分だけだとワインの華やかな果実感と綺麗に反応して、心地良い旨味だけを残していく感じでとても好印象です。それが、皮の部分と合わせると獣的な生臭さや、鉄のような香りが強く出て、魚介系の珍味を食べている時のような、「旨味もあるけど臭みも結構ある」という人を選ぶ感じのマリアージュに一変するという、とても面白い結果になりました。もちろん「臭いのが好き」という方もいらっしゃるので、どちらが良いとは決められないのですが、ヌーヴォーと合わせる時は皮を外して中身だけを合わせると、多くの方が素直に愉しめるマリアージュになると思います。

※ボジョレー ヌーヴォーは解禁前のため、通常のボジョレーでマリアージュを試しています。

似たもの同士の自然体のマリアージュ。

「日本人のための食事に良く合うチリワイン」として大人気のサンタプレミアムシリーズに新顔のピノ・ノワールが登場です。既存サンタプレミアム同様に収量制限した凝縮したぶどうの使用、フレンチオーク樽による6ヶ月熟成などのこだわりを持ったつくりをしています。
チリらしい素直な果実味と、まろやかなスパイスの香りが心地よく融合した、フルーティかつ繊細な味わいです。
チーズと合わせてみると、ワインの味わいに落ち着きとふくらみが出て来るように感じました。明らかにワイン単体よりも、チーズと合わせた方がワインが美味しく感じられます。ワインの味わいのバランスを崩さずに、美味しさだけを引き出す感じになっているのは、ワインの味わいの強さや滑らかなキャラクターとチーズの味わいの強さやキャラクターがとても良く似ているからだと思います。チーズの滑らかさとワインの滑らかなテクスチュアも程よく一致していて、自然に美味しいなと感じる組み合わせでした。

チャレンジまとめ

カマンベールチーズは最も人気のあるチーズの一つです。それだけに出会う機会も多く、ワインに合わせるチーズとして定番にしている方も多いかと思います。滑らかな食感や、乳脂肪の旨味など、華やかかつクセのない味わいで、人気の理由もよくわかります。
実際ワインと合わせてみても、ワインと喧嘩する要素が少なく良い印象を受けることの多いチーズでした。
ただこのチーズの味わいの本質は、白カビの香りと上品な乳の旨味が特徴の、味わいの強さよりは繊細さやキメの細かさにあると思いますので、ワインもあまりフルボディのどっしりとした味わいのものよりも、繊細さのあるものの方が相性が良いと思います。
今回、ウィリアム ヒルのずっしりと重量感のある完熟のシャルドネがどうもしっくり来なかったのはそれが原因だと思います。
もう一つ面白かったのが、ボジョレーの際に感じた、中身部分と皮部分のマリアージュの決定的な違いでした。フランスでも皮を外して食べる方も多いので、特に白カビタイプのように皮を形成するチーズの場合には、中身部分だけのマリアージュという事も考える必要があるなと改めて思いました。
いずれにせよ、有名で手に入りやすくて、ワインに合わせやすいカマンベール。やはり素晴らしいワインのお供です。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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