チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

コンテ 12ヶ月熟成

第33回 2017年09月

コンテ 12ヶ月熟成

チーズの味わい

フランス東部、スイスとの国境にあたるフランシュ・コンテ地方(ワインの産地だとジュラ地方に相当)の特産品。フランスのA.O.P.チーズ(産地が限定された高品質なチーズ)の中で、圧倒的な生産量No.1(※)の大人気チーズです。
重さ40kg程もある大型のチーズで、1個のコンテを生産するのに、450Lもの牛乳が必要となります。これはアルプス山麓の寒い冬の間の貴重な食糧とするために、出来るだけ水分を抜いて保存性を高めたことが理由です。原料である乳の旨味がギュッと凝縮された濃密でコクのある味わいと長期の熟成から生まれる、独特のナッツのような香ばしさが味わいの特長です。クセのない味わいなので、どんな方にも好まれるチーズです。6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月など熟成期間が異なるものがあり、熟成期間が長くなるほど凝縮感やコク、旨味が強くなりますが、今回は味わいのバランスに最も優れると思う12ヶ月で試しています。

※I.N.A.O. 2015年データより


よく合うワイン

ブーケ ド フロリア  シャルドネ / ヴィオニエ 2016※終売しました

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

黄桃 みかんの花 黄色いリンゴ

美味しいけど、お互いちょっと遠慮のある感じのマリアージュ。

「楽しいひとときに花を添えるワイン」をコンセプトにした新商品です。ワイン名の「フロリア」は、花のような(フローラルな)、オーストラリアワインからの造語で、ラベルにも花束をデザインしています。シャルドネ種を主体にアロマティック系品種であるヴィオニエ種をブレンドし、まろやかさや華やかさのあるワインに仕上げています。
チーズと合わせてみると、ワインの味わいに広がりや果実のコクが強く感じられるようになりました。チーズの乳の甘さや口の中で広がる旨味もしっかりと感じられ、全体として味わいのボリュームがワンランクアップして感じられました。「美味しいな。」と素直に感じるマリアージュです。ただ、このワインの特長である華やかな香りや、チーズの特長であるナッティな香ばしさがしっかり出ているとは言えず、本当の意味でお互いのいいところを出し切っているとは言えない気もします。「いい感じだけどまだ本音のとこは隠してる付き合い始めのカップル」という感じでしょうか。いい感じなんですけどね。

同一性のマリアージュの一つの良い例。しっくり馴染む組み合わせ。

1731年創業のブルゴーニュを代表する老舗生産者、ブシャール ペール エ フィスの名刺がわりと言える1本。コート シャロネーズ地区のぶどうを中心にブレンドした、ブルゴーニュ シャルドネの典型の味わいです。
チーズと合わせてみると、ワインの芯がとてもクッキリと感じられるようになりました。少し熟成したタッチを見せ始めているこのワインの複雑な香りは活かしながら、酸味とフレッシュな果実のハリが引き立つ感じで、ワインのスケール感が一回り大きく感じられます。チーズとワインに乳や香ばしいナッツの香りという共通点があるので、そこを軸にしっくりと馴染みながら複雑に広がる感じがとても魅力的なマリアージュとなりました。同一性のマリアージュの一つの良い例だと感じました。多くの方が美味しいと思える、安心感のあるマリアージュでもあると思います。

ワインというより果実をチーズと合わせているようなマリアージュ。

国産ワイン売上容量No.1(※1)のサントリー酸化防止剤無添加のおいしいワイン。シリーズから、初めてのプレミアム品が登場です。ポリフェノール量の多い希少なぶどうを使用し、サントリー既存無添加の約2倍(※2)のポリフェノール量を含む赤ワインを実現しました。
チーズと合わせてみると、ワインがフルーツソースのように感じられて、少し他のマリアージュとは異なる印象を受けました。チーズの乳の甘さや凝縮感が引き立つ感じです。このワインには少し残糖の甘さがあるので、その甘さもチーズのコクや甘さを引き立てている感じがしました。ただ、ワインとチーズのマリアージュと言って、僕が思う味わいの変化と少し違う感じがした(ワインとチーズというより、果物とチーズを合わせているような感覚)ので点数は辛めです。美味しいかどうかと言うと、美味しいです。
甘さのあるワインはチーズとは相性が良いので、このワインはフレッシュ系のチーズでも同じようにフルーツソース的な相性を愉しめると思いますし、濃厚な羊のハード系チーズなどでもとても美味しいと思います。

※1 インテージSRI調べ 国産ワイン市場2016年1月~2016年12月累計販売容量(L)
※2 2016年6月~2017年1月の酸化防止剤無添加のおいしいワイン。赤・濃い赤のポリフェノール平均値比

サントリー塩尻ワイナリー 塩尻メルロ 2014

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリー シダ 里芋

ワインの良さが引き出される、チーズが一歩引くマリアージュ。

サントリー日本ワインの新シリーズ(詳細はこちら)。長野県のサントリー塩尻ワイナリーで、自社管理畑や地元塩尻の契約栽培農家さんが栽培したぶどうから丁寧に醸造したワインたちです。塩尻は日本におけるメルロの代表産地として有名な土地。日本らしい独特のしっとり感と繊細な味わいが魅力のワインです。
チーズと合わせてみると、ワインの滑らかさが増す気がしました。口の中で、少しずつ果実の複雑さがふくらんでいく感じと、ワイン単体で飲んだ時よりもオーク樽由来の甘香ばしい味わいが強く出てくるのが印象的でした。ほのかに湿った感じのする日本らしい果実味や、日本のメルロらしいシダ植物の青さのある瑞々しさ、しなやかなテクスチュアなど、このワインの特長が一回り大きく見えてくる気がしました。チーズの味わいはどちらかというと黒子に徹して、自分はあまり姿を見せない感じでした。

チャレンジまとめ

コンテに合わせるワインの定番は同じ地方で生産されるジュラ地方の熟成した白ワイン。シャルドネやジュラ独自のサヴァニャンからのナッティでコクのある辛口が相性が良いと言われています。
今回4本のワインを試してみましたが、一番相性が良いと思われたのがブルゴーニュの辛口シャルドネでした。チーズの産地であるジュラとブルゴーニュは地理的にも近く、歴史的にも関係が深い土地柄です。ワインのタイプも似ているので、そのあたりがこの2つがびっくりするくらいしっくりと来る理由の一つなのでしょう。料理とワインの相性でも良く「土地の料理に土地のワイン」と言われますが、チーズでも「土地のチーズに土地のワイン」というのはやっぱり良く合うものですね。
コンテは乳の味わいをそのまま凝縮したようなクセのない味わいのチーズなので、他の3本のワインともどれも素直に愉しめました。
例えばパーティーなどで何種類かのチーズを盛り合わせにする時などには、一つ入れておくと苦手な方が少ないので良いのはないかと思います。ただ、基本的な相性を考えると、コクのある白ワインの方が相性の良いチーズだと思いました。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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