爽やかではあるが、ややチーズの方が強いマリアージュ。
リースリング・フォルテは、甲州三尺×リースリングの掛け合わせで生まれた、日本独自品種。サントリーが生み出した品種で、サントリージャパンプレミアムシリーズですが、実は登美の丘ワイナリー産のぶどうが100%使用されています。夏みかんを連想させる爽やかな香りと、フレッシュな果実味が特長で、初夏~夏にかけて、特に美味しいと感じるワインの一つです。
チーズと合わせてみると、ワインの味わいがクッキリと浮かび上がるような印象を受けました。元々フレッシュさや軽やかな果実味を愉しむタイプのワインですが、単体で飲むよりもさらに酸がクッキリ、果実味もクッキリと目立つ印象です。爽やかで、この季節(5月)にはいいマリアージュだと思いました。ただ、味わいの強さという点では明らかにチーズの方が強く、旨味の持続時間が長いので、ワインの味わいの方が先に消えてしまって物足りなく感じるところもありました。
チーズもワインも1ランクアップした味に感じる、とてもいいマリアージュ。
ビニャ マイポのカジュアルラインからこの3月に発売された新製品。彼らが最もこだわりを持っているぶどう品種シラーを85%、カベルネ・ソーヴィニヨンを15%ブレンドした、しっかりした果実味とスパイシーさが特長のワインです。
チーズと合わせてみると、ワインの味わいがグッと複雑さを増して感じられました。果実味とスパイスのタッチ、少し肉を思わせる部分が融合して、全体の厚みがぐっと膨らみます。テクスチュアはよりまろやかに、滑らかなコクとリキュールっぽいふくらみも出てきて、いいことずくめです。チーズはチーズで、旨味が大きく広がる感じで、単体よりも遥かに美味しくなりました。1ランク上のワインを飲んでいる感じにさせてくれるいいマリアージュでした。
ワインとチーズ双方の甘さがもの凄く前に出てくるマリアージュ。
マクマレーはアメリカ・カリフォルニア州のソノマ地区にある、ピノ・ノワールだけに特化したプレミアムワイナリーです。このワインはセントラルコースト地区のぶどうを使用した彼らのベースとなる1本。完熟したやわらかな果実味と、滑らかな口当たりが特長です。
チーズと合わせてみると、ワインの甘さがドンと引き出される感じになりました。それに合わせてチーズの乳の甘みも強く感じられ、口の中を豊かに満たしてくれる印象です。ワインの果実味の印象がそれまでのチェリーや梅の印象から、一気にラムレーズンや干した杏などのドライフルーツの印象に変化して、甘さとコクを前面に出してきたのも面白いところでした。酸味やタンニンは(元々それほど強いワインではないですが)とてもまろやかになり、たっぷりとした豊かさを感じるマリアージュでした。
お互いの味わいに関与しない「無関心のマリアージュ」。
世界70カ国以上で販売されているポートワインのビッグブランド。ホワイトポートは普段なかなか口にすることのないお酒ですが、あたたかさとコクのある甘口で、ゆったりとした時間を愉しむのにとても適したお酒だと思います。ソーダやトニックで割って飲むのもオススメです。
チーズと合わせてみると、なかなか珍しいタイプの反応を示しました。これまでの連載では一度も発生しなかった、お互いが自分たちの味わいだけをそのまま主張して出し合って、お互いの味わいにあまり関与しないという、「無関心のマリアージュ」です。特に悪い部分が出てくるわけでもなく、ただ変化がないのです。ともに味わいの強いワインでありチーズですので、劇的に素晴らしい変化があればいいなと期待していただけに、肩透かしをくらったような気になる組み合わせでした。