Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

ROKU ジン・ビターズ

ROKUジン 1グラス
アロマチック
ビターズ
3drops
ビルド/シェリーグラス
冷凍庫で冷やしたジンを、冷凍庫で冷やしたグラスに半分程度注ぎ、3滴ビターズを落とす。そして再びジンで満たす。

ジンを華やいだ色に染め上げるカクテル

桃や桜の花で里山がピンクに染まる日本の春。桜の花が散れば青葉の季節がやってきて、やがてたくさんの実りに向かって自然が動き出す。

なんとなく春めいた名の「ピンク・ジン」というカクテルがある。ジンに、リンドウの根やハーブ、スパイスを原料にしてつくったビターズ(苦味酒)を少量加えて(振り入れる)、ステアしてつくるカクテルである。ジンのストレートにビターズでちょっとアクセントをつけた、いたってシンプルなもの。

昔、イギリス海軍の将校たちはこのカクテルを好んで飲んだ。ビターズに使われるリンドウの根の成分は消化促進、精神安定、風邪予防などの薬効があるとされ、また船酔いにも効くともいわれていたようだ。

19世紀までは加糖された甘口のジンが主流であり、そのため少量の苦味酒とのミックスは最高だった。だから多くのカクテルブックのレシピには、単にジンと表記されている。

19世紀末から広く流通しはじめ、現在主流になっているドライジンとレシピに明記されているのは「ジン・ビターズ」のほうである。ジンとビターズの分量は「ピンク・ジン」と同じ。つくり方が違う。

まずビターズを5滴グラスに振り入れる。グラスを傾けながら回し、内側をまんべんなくビターズでリンス(濡らす)したら、グラスを振り切って余分なビターズを捨てる。そして最後に冷えたドライジンを注ぐというやり方だ。

この「ジン・ビターズ」のつくり方をわたしは好まない。余分なビターズを振り切るというが、グラスの縁にはどうしてもビターズがしっかりと付着する。口にしたとき、ジンよりもビターズの苦みがガツンと立ってしまう。

好むつくり方は、まず冷凍庫で冷やしたドライジンをグラス半分ほど注ぎ、ビターズを3滴ほど落とす。そこに再びドライジンを注ぎ、そのままいじらない。ジンとビターズが自然に混じり合っていく味わいを楽しむ。

グラスもなんとなく華やいだ色に染まっていくのだ。

里山の恵みから生まれた四季香るクラフトジン

先日、「ジン・ビターズ」を四季の恵みの香りと味わいが凝縮されたジャパニーズ・クラフトジン[ROKU]で味わってみた。ピンク色の春も感じ取れる秀逸な風味のジンである。

欧米ではクラフトジンがブームらしい。ドライジンにまた独自の香味を加え、手間と時間をかけた、新たな個性を抱いたジンである。[ROKU] はジャパニーズの香味が凝縮されたクラフトジンで、海外でもとても人気が高い。

ドライジンの製法を簡単に述べると、連続式蒸溜機で蒸溜したグレーンスピリッツに、西洋杜松(ねず)の実(ジュニパーベリー)の他、多彩なボタニカル(草根木皮)を加えて、次に単式蒸溜器でゆっくりと再蒸溜して生みだす。

[ROKU]は、まず本格的なドライジンをつくりあげる上で核となるベーシックなボタニカル、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、アンジェリカシード、カルダモンシード、シナモン、ビターオレンジピール、レモンピールの8種を使用する。

これに製品名由来の日本の春夏秋冬、里山の恵み6種のボタニカルが加わる。春は八重桜、そして大島桜の葉の2種。夏は煎茶、玉露の茶の2種。秋は山椒の実。冬は柚子の皮。すべて旬の最良の状態で収穫して製造へと向かう。

[ROKU]の製法は特別なものだ。ジュニパーベリーをグレーンスピリッツに浸漬した液を単式蒸溜器(銅製ポットスチル)で一次蒸溜する。その一次蒸溜液にコリアンダー以下のベーシックなボタニカルを浸漬。漬け込んだあとのその一次蒸溜液をさらに単式蒸溜器(銅製ポットスチル)で二次蒸溜してキーとなるドライジンを生む。単式蒸溜器による2回蒸溜をおこなっているのだ。

そして里山の恵み6種のボタニカルは旬に収穫したものをそれぞれスピリッツに浸漬し、浸漬液を蒸溜する。とくに桜の花。一瞬ともいえる時、旬を逃さず収穫してスピリッツに浸漬する。

蒸溜器は6種のボタニカルの特性に合わせて使い分ける。大きくは銅製ポットスチルとステンレス製ポットスチルの2タイプ。銅製はモルトウイスキー蒸溜と同様、銅が触媒として働いてより複雑な香味成分を生みだす。反対にステンレス製の場合はすっきりと無垢なフレーバーを抽出できる。

たとえば柚子のように深みのあるリッチな香味を抽出したい場合は銅製。八重桜の繊細な甘く華やかなフローラルな感覚を抽出するにはステンレス製のポットスチル、といった使い分けをする。それぞれのボタニカルの最良の特長を抽出するために、最良の蒸溜方法を見極めておこなっているのだ。

最後に6種の個性的な香味を、8種のボタニカルからつくられたドライジンとブレンドする。手間と時間をかけた独自製法は、これぞクラフトジンである。


そんな豊かな香味特性を抱いたクラフトジンを冷凍庫で冷やして香味をロックしてしまい、しかもビターズを加えるのか。[ROKU]の繊細で複雑な風味を抑えるのか。そう反論される方もいらっしゃるだろう。

たしかに常温ストレート、あるいは水割り、ロックといったスタイルのほうが、繊細な味わいを存分に味わえる。でも、つくり方や温度差の面白味もあり、キーンと冷えた「ROKUジン・ビターズ」を口にすると、蕾(つぼみ)がほころぶように、口中で温められて四季の香味がポッと花開くのだ。

この感覚が楽しい。カクテルにもいろんな味わい方があるんだ、とわかっていただけたら嬉しい。さあ、八重桜や大島桜の葉の香味を探っていただきたい。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

ブランドサイト

ジャパニーズクラフトジン「ROKU」
ジャパニーズクラフトジン「ROKU」

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