チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

グジェール

第99回 2023年07月

グジェール

チーズの味わい

グジェールはグリュイエールチーズを練り込んで焼いたシュー皮です。見た目はミニシュークリームですが、中には何も入っておらず、チーズの風味と塩味で食べるフィンガーフードです。

準備するもの
今回はオーブンで温め直してそのまま食べられる、冷凍のグジェールを使用しました。手作りももちろん可能で、その場合にはお好みに応じて色々アレンジする楽しみがあります。レシピはインターネットを検索して頂くと色々と見つかりますので、お好きなものでつくってみて下さい。


よく合うワイン

ウィリアム フェーブル シャブリ 2021

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

レモン 黄色いリンゴ 石

全ての要素が力強くかつ鮮明に浮き彫りになる、文句無しの組み合わせ。

シャブリと言えばこれ。と言ってしまっても良いような、基本の一本です。基本だからと言って平均品質なわけではなく、シャブリの味わいの要素を全てしっかりと持ち合わせたお手本のような味わい。近年暑い年が続いてシャブリの本来の魅力である引き締まった酸味の部分で心配になる事もありましたあが、久しぶりに冷涼だった2021年は生産量は減ったものの、味わいは流石と言って良い実にシャブリらしい感じに仕上がっています!
グジェールと合わせると、ワインの格がワンランク上がる感じがありました。クリーンな果実味、引き締まった酸味、強靭なミネラル感というこのワインが持つ基本の要素が全てしっかりと引き出されて、さらにワインだけで飲むよりも一回り大きく感じられます。大きくなるだけでなく、一つ一つの要素がより鮮明にクッキリと見えるようになる感じもあり、かつグジェールのチーズの香りも心地よく余韻に広がりで、お互いの良いところをきちんと見せつつ全体がの味わいが大きくなるという理想的ペアリングとなりました。文句無しです。

ロバート ヴァイル ジュニア シュペートブルグンダー 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ラズベリー 赤い花 梅干

軽やかさと軽やかさの相乗効果、優しい旨味広がる組み合わせ。

ロバート ヴァイルは1988年にサントリーが経営に参画した、ドイツ皇帝に愛された歴史を持つドイツ・ラインガウの名門ワイナリーです。ジュニアはその新しい挑戦のシリーズで、近年ドイツで著しい発展を遂げるシャルドネやピノ・ノワールなどのブルゴーニュ系品種を契約栽培農家から購入して生産されるワインです。完璧なバランスと緻密な骨格を持つ本家ロバート・ヴァイルのリースリングとはまた一味違う、楽しんでワインをつくってるように思える素直でカジュアルな味わいです。
グジェールと合わせると、ほっこりとした優しい果実感が口いっぱいに広がりました。キメの細かい赤果実と、繊細な酸味、そしてグジェールと一緒になる事で顕れる乳製品のまろやかな旨味感が心地よいです。このワインは色も淡いですし、決して強いワインではないのですが、グジェールのような軽やかさと程よい旨味を併せ持ったフィンガーフードと一緒に飲むと、軽やかさと軽やかさの相乗と言うのか、このワインの良さがいい感じで引き出される様に思いました。少し冷やしめにしてもタンニンが気になる事も無いので、夏の赤としてとても良いワインだと思います。

レオナルド キャンティ リゼルヴァ 2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ブラックチェリージャム ■動物■なめし皮 コーヒー

ワインのコクや熟成感がグッと増す、満足感のある組み合わせ。

レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」のラベルが印象的なこのワインは、その名の通り、レオナルド・ダ・ヴィンチの生まれ故郷ヴィンチ村に畑を持つワイナリーです。ここは昨年、”テッレ・ディ・ヴィンチ”の名で、キャンティの8番目のサブ・ゾーンとして申請された話題のエリア。常に吹く海風と、海洋生物の化石が堆積した独特の土壌から生まれるのは、キメ細かく上品な味わいのキャンティです。こちらはオーク樽で10ヶ月以上の熟成を施したその上級品。
グジェールと合わせると、ワインのコクが増し、より熟成感を感じるようになりました。このワインは元々リゼルヴァ(通常よりも長い熟成期間を経てから出荷される上級品、同じワインを通常よりも長く熟成させるわけではなく、長期熟成可能な力のある原酒を選んで熟成させるのでよりコクのある複雑な味わいになる)ですが、熟成によって現れるドライフルーツやコーヒー、動物などの要素が、グジェールと一緒に飲む事で、より拡大鏡で見るように鮮明に顕れる感じがあります。タールの様な強さも出て来て、飲んだ満足感がアップする組み合わせでした。

フレシネ プロセッコ

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

白い花 青リンゴ ■その他果実■メロン

果実と香ばしさが分離する、打ち消し合う組み合わせ。

2013年にシャンパンを抜き去り、今や圧倒的な世界で最も売れているスパークリングワインとなったプロセッコ。その魅力はカヴァの雄であるフレシネ社も惹きつけたようで、フレシネブランドのプロセッコが登場する事になりました。独特の華やかなデザインボトルで、プロセッコが醸し出す軽やかなウキウキとした気分が良く表現されていると思います。パーティの最初に出せば一気に場が盛り上がりそうですね!
グジェールと合わせると、ワインが持っているメロンや白桃を思わせるジューシーな果実感がしっかりと前に出て来て、甘く感じる様になりました。ただ、焼けたシュー生地&チーズの香ばしさと、プロセッコのフルーティさはある意味相反する要素で、不思議と分離するような感覚になります。プロセッコの最大の魅力である軽やかさも、少し減少する感じで、お互いの良さを打ち消し合うような感じになりました。カヴァやシャンパンの方がこの香ばしさと相性は間違いなく良いでしょう。ただ、悪い感じが出て来る事は無く普通に美味しいのは美味しいです。

チャレンジまとめ

グジェールと出会ったのは10数年前、初めてシャブリに行った時でした。焼けたチーズとシュー生地の香ばしさと、キリっと冷えたシャブリとの相性が抜群で、随分沢山食べてしまった記憶があります。その後もブルゴーニュに行くと良く出て来て何となくブルゴーニュの料理なのかな?と思っていたのですが、今回調べてみると、ブルゴーニュの中でも北部のヨンヌ県(シャブリがあるエリア)発祥の料理の様で、シャブリとの相性が抜群だったのも納得です。最近は冷凍ものや市販品とかも出て来ているので、とても楽になりました(今回も冷凍のものを使っています)。改めて思ったのは、ワインのおつまみとしてのその優秀さ。元々白ワインのおつまみとして素晴らしいのはわかっていましたが、赤ワインとも想像以上に良く合って凄く愉しめました。スパークリングワインやキリっと冷えた白ワインと、アペリティフのおつまみやその日の食事のスターターとして楽しむというのが基本だとは思いますが、例えば半分に切ってシャルキュトリーや各種ペーストなどを挟んだりする事で、よりコクのある赤ワインとも可能性が広がると思いました。手作りも出来るので、その場合は混ぜ込むチーズやスパイス、あとは肉加工品などの存在で色々応用の効く素晴らしいおつまみになります。まずは一度お試しを。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

つづきを読む