チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

フィリーチーズステーキサンドイッチ

第98回 2023年05月

フィリーチーズステーキサンドイッチ

チーズの味わい

フィラデルフィア名物のサンドイッチ。牛肉、タマネギ、パプリカ、チーズのハーモニーが一口で楽しめる、素敵なサンドイッチだと思います。ボリューム満点です!

準備するもの
小さめのバゲット(他のパンでも代用可)1個、牛肉の薄切り100g、タマネギ1/2個、パプリカ1/4個、チーズ50g、マヨネーズ、塩、胡椒、炒め用の油適宜
(1)タマネギは薄切りスライス、パプリカも薄切りにし、フライパンに油少々を温めてタマネギが色付くまで炒める。野菜を取り出し、牛肉も焼き目がつくまで焼く。塩胡椒で味付けする。
(2)切り開いたパンをトースターで軽く焼いて温める。マヨネーズを薄く切り口に塗っておく
(3)フライパンに野菜を戻し、その上に牛肉、チーズの順に重ねて再加熱し、チーズを溶かす。
(4)パンの上に具をのせて完成


よく合うワイン

E&J ガロ カーニヴォ カベルネ・ソーヴィニヨン 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ドライプルーン クローブ チョコレート

素材それぞれの甘さが口の中で爆発する組み合わせ。

カーニヴォ=肉食獣。名前の通り、お肉を食べるために生まれた赤ワインです。一時「肉専用黒ワイン」というキャッチフレーズで出していましたが、その名の通り黒と言っても良いくらいの、驚くほどに濃い色調が印象的です。味わいはしっかり濃厚。ドライフルーツに例えれらるような凝縮感のある力強い果実味と熟したタンニンが印象的です。
サンドイッチと合わせると、素晴らしい一体感が口の中に生まれました。甘くてコクのあるカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンらしい果実味と、牛肉の風味、パプリカとタマネギの甘さ、そしてそれらをまとめるチーズのまろやかさ。口の中でそれぞれの素材が持つ甘さと言う要素が爆発しながらも、驚く様な一体感があります。フィラデルフィアとカリフォルニアのサン・フランシスコまでは約5,000kmと同じ国だからと言って決して近いワケでもないのですが、それでこれだけしっくりと合う不思議さは、同じ国の食文化だからこそなせる技でしょうか。パプリカが入っている事もあり、このサンドイッチはコクのあるカベルネ・ソーヴィニヨンとの相性が凄く良いなと思いました。

ロス ヴァスコス ロゼ 2021

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

オレンジ チェリージャム 白胡椒

ワインの風味が際立つ。総合的な満足度の高い組み合わせ。

コルチャグア・ヴァレーの自社畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、10%程のシラーをブレンド。醸造責任者が「プロヴァンスのロゼの味わいをイメージした」と言う通りの、美しいピンク色でしっかり辛口のロゼワインです。赤ワイン用のぶどうよりも2週間程度早く収穫されているため、引き締まった酸が残され、さくらんぼを口に含んだ時のような、パリッとした果肉がイメージされる、鮮やかな果実味がたのしめます。
サンドイッチと合わせると、ワインの持つ酸味がクッキリと浮き上がってくる感じがありました。このワインのぶどうは元々ロゼ用に早摘みしたもので、セニエのロゼとは異なるフレッシュさが良さとなっていますが、そこが強調される感じだと思いました。さらにチェリーを連想させる果実味もグッと主張して来ます。サンドイッチの方はと言うと、そこを応援しながら見つめる感じで自分はそれ程前に出て来ません。ただ相性としては悪く無くて、このサンドイッチとワインの組み合わせだけで、大満足のランチが完成してしまうような満足感がありました。

ヤルンバ ワイシリーズ シラーズ/ヴィオニエ 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

スミレの花 ブラックチェリー ミックススパイス

強くなる果実味と、主張するスパイス。色々感じる面白い組み合わせ。

ヤルンバは現地のワイン評価本でワイナリー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた事もある、オーストラリアを代表する生産者の一つ。ワイシリーズはそのエントリーラインで、生産者のスタイルが強く表現されているように思います。シラーズと5%程度のヴィオニエ(白ぶどう)を一緒に発酵させてつくるこのワインは、濃厚でフルボディなオーストラリアン・シラーズとは一線を画した、華やかな香りとキメ細やかで涼やかな果実味を持ったエレガントな味わいです。
サンドイッチと合わせると、ワインが甘くなる感じがありました。より熟したチェリーのジャムや、リキュール感も感じさせるあたたかな果実味を強く感じる様になります。その奥から出て来る黒胡椒を中心とした各種のスパイス感が、牛肉とチーズの風味と混ざり合いながら主張して来る感じもシラーズらしくて良いなと思いました。サンドイッチの方はと言うと、味付けに使った黒胡椒の風味がギュッと出て来て、甘さよりもそれぞれの素材の味わいの方にフォーカスが合ってくるのが面白いところでした。

サンタ バイ サンタカロリーナ  シャルドネ 2022

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

白い花 蜜リンゴ バニラ

同じ方向性を感じる一体感のある組み合わせ。後口も〇。

お手軽価格としっかり満足の飲み応えで人気のサンタ バイ サンタカロリーナ。日本の食事によく合うチリワインを目指して、サンタ カロリーナとサントリーが共同で、しっかりと時間をかけて味わいの開発をしています。シャルドネは完熟の果実感とふくらみのある味わいが魅力。少しだけブレンドされたヴィオニエがまろやかなテクスチュアを与えています。オーク由来のヴァニラを連想させる甘い香りも含めて、とてもチーズと相性の良いワインだと思います。
サンドイッチと合わせると、一気に口の中全体にまろやかさが広がる感じがありました。チーズと牛の脂、タマネギの甘さにパンの甘香ばしい風味が重なり、重量感のある甘さがたのしめます。その強い味わいに対してサンタ(安いワインなので)は負けてしまうのでは?と思っていましたが、サンタの持つヴァニラやハチミツを連想させる甘い香りと豊かな果実味が、サンドイッチ同じ味わいの方向性にあるせいか、一体感があり、むしろ旨味が広がる感じです。ワインが持つ酸味が、チーズと牛脂のこってり感をスッキリさせてくれる感じもあり、これは想定よりも遥かに良い組み合わせでした。マヨネーズもこの相性の良さに一役買っている気がします。

チャレンジまとめ

今回は以前からずっとやりたいなと思っていたフィリーチーズステーキサンドイッチ。ステーキと言う名前ですが、一般的に日本で認識されているステーキではなく、薄切りの牛肉を炒めたものがステーキと呼ばれています。アメリカでは(ヨーロッパでもですね)、日本の様に薄くスライスした肉は通常販売されていないので、むしろこちらの方が珍しい牛肉の形状。某アメリカ大統領がチェーン店の牛丼を食べてこのサンドイッチの様だと言ったという話がありますが、なんとなくわかります。そんなステーキサンドイッチ、同じ素材を使ってはいますがチーズバーガーとは別物だなと今回やってみて思いました。一番大きな違いは噛むという作業の多さ。柔らかなバンズと挽肉の組み合わせのバーガーに対して、こちらはそれなりに硬さのあるパンと薄切りとは言えきちんと肉の組み合わせ。そうなると、やはりしっかりとした飲み応え(構造)とタンニンのあるワインが活きてくるなと思いました。アメリカのカベルネがトップになりましたが、素直に納得です。ロゼと白も意外なくらい相性が良かったのも印象的でした。味付けがシンプルで素直なのと、牛肉が薄切りだと言う事が理由だと思いますが、嬉しい驚きでした。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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