チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

鶏ももソテーのチーズマスタードソース

第94回 2022年11月

鶏ももソテーのチーズマスタードソース

チーズの味わい

カリカリの鶏の皮の香ばしさと、コクがありつつさっぱりとした酸味を持つチーズマスタードソースの素晴らしいハーモニー。ワインが止まらない一品です。

準備するもの
鶏もも肉1枚、じゃがいも2個、シュレッドチーズ50g、マスタード大さじ1、白ワイン20ml、油、塩適宜

つくり方
(1)下準備をする。鶏もも肉は両面に塩を振る。じゃがいもはラップフィルムに包んで電子レンジで3分加熱し、一口サイズにカットする。
(2)中火で加熱したフライパンに油をしき、鶏もも肉を皮目から入れて、皮がカリカリになるまで焼きつける。鶏皮の脂が出たところでじゃがいもを投入し、脂で揚げるように焼き目をつける。鶏肉を裏返し火が通るまで焼く。
お皿に盛り、アルミホイルを被せて保温しておく。
(3)フライパンに白ワインを入れ、加熱しアルコールを飛ばす。沸騰したらチーズとマスタードを入れ混ぜる、チーズが溶けてソース状になったら(2)の鶏にかける。


よく合うワイン

サントリー フロム ファーム 甲州 日本の白 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

かぼす 青リンゴ 食パン

馴染みつつ味わいに膨らみが出る、抜群の組み合わせ。

この秋、ブランドを一新したサントリー日本ワインの名刺代わりとも言うべき1本です。登美の丘ワイナリーに近く標高の高い山梨県西部エリアの甲州が多くブレンドされる事で、和の柑橘を連想させる香りと、すっきりとしたキレの良い酸味、日本ワインらしいしっとりとした果実味が特長の味わいとなっています。11月3日には山梨ヌーボーという事で、新酒も発売されています。今年の山梨県の甲州は収量こそ減ったものの、病気が少なく品質的には2021年に続くとても良い年になっていますので是非新酒とも試してみて下さい。
鶏のチーズマスタードソースと合わせると、ワインのボリュームが一気に増す感じがありました。元々はかぼすや夏みかんなど和の柑橘系を思わせる酸を愉しむ、スッキリ系の味わいがこのワインの持ち味ですが、ソースの軽快な酸味と乳のコクがそこを一気に膨らませてくれます。元々塩味の焼鳥とこのワインは抜群に相性が良いので、鶏肉との相性は安心していましたが、ソースとこれだけ良い反応をしてくれる事にビックリしました。これは相当にオススメです。特に香ばしく焼き目をつけた皮目+チーズソースの部分との相性は最高でした。

嫌いな人がとても少なそう。地元で愛される安心感抜群のペアリング。

不安定な世界情勢や円安の影響を受けて、価格に関するニュースが多かった今年のボジョレー・ヌーヴォー。しかし、2022年のボジョレーを含むブルゴーニュ地方は品質・量共に素晴らしい出来となりました。乾燥して暑い7月・8月のおかげで、ぶどうは早々と完熟し、収穫開始日は8月17日!これは50年に一度の年と言われた2003年(8月14日)に次ぐ早さです。果実味たっぷりのヌーヴォーを、2022年という年だからこそお愉しみ下さい。
鶏のチーズマスタードソースと合わせると、凄く自然体の相性の良さを感じました。ボジョレーと鶏肉とチーズマスタードソースと、三者が不必要に主張する事なく、でもそれぞれの味わいはしっかりと守りながらじんわりと口の中に美味しさが広がっていきます。白ワインと合わせた時とはまた異なる、赤ワインならではのタンニンがある事による口の中での複雑さと味わいの伸びが感じられます。ボジョレーと鶏はとても相性が良く、実際にジョルジュ・デュブッフ社のランチでも良く出て来ます。地元で愛される組み合わせならではの安心感抜群のペアリングだと思います。ワインと料理を合わせる時には必ず好き嫌いが出て来ますが、「嫌い」がとても少なそうな組み合わせだと思いました。
※解禁前のため試食には通常のボジョレー2021年を使用しました。

ミオネット プロセッコ DOC トレヴィーゾ ブリュット

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

白い花 ■その他果実■メロン レモン

何とも軽快。軽く愉しみたい時に最高の組み合わせ。

ミオネットはプロセッコ発祥の地ヴァルドッビアーデネで1887年に創業した老舗プロセッコメーカー。オレンジラベルが印象的です。国際的に販売されているプロセッコブランドとしては最も売れており※、プロセッコのリーディングブランドとして知られています。プロセッコらしい軽やかでフレッシュな果実味と、白い花やメロンを思わせる華やかな香りが魅力です。
鶏のチーズマスタードソースと合わせると、ソースの香りと、軽快な酸味がとても心地よく感じられました。プロセッコ側もふわりと軽やかで柔らかな果実の華やかさがきちんと出て来ます。さらにソースの酸味がプロセッコの余韻を引き締めてくれる事で、余韻に出る鶏肉の旨味もしっかりとたのしめます。全体に軽やかな印象のペアリングで、メインにしっかりという組み合わせでは無いですが、ランチや軽く済ませたい夜なんかに素晴らしくたのしめる組み合わせだと思います。
※IWSRのInternational Brandの規定による。IWSR2020 スパークリングワイン販売数量

ドメーヌ ド オーシエール オーシエール セレクション2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

ラベンダー ブラックチェリー クローブ

ワインが甘く柔らかくなる、ワイン主導の組み合わせ。

オーシエールはボルドーを拠点とし、メドック格付け1級筆頭のシャトー・ラフィット・ロートシルトを擁するドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト(DBR)社がラングドックに1999年に取得したワイナリー。このワインはそのエントリーラインで、カベルネやメルロなどのボルドー品種と、シラーなどのラングドックの品種のブレンドで構成されている、まさに南仏とボルドーの融合とも言うべきワインです。このつくり手ならではのエレガンスを十分に感じて頂けると思います。
鶏のチーズマスタードソースと合わせると、ワイン側のまろやかさが際立つ感じがありました。ワイン単体だとブラックチェリーを連想させる小粒の黒~黒紫の果実の印象を受けるのですが、料理と合わせるとそれがまろやかになり、プラムや無花果などのトロリと柔らかな果肉を感じさせる果実のイメージになります。よりゆったりと、より柔らかく、より甘く、そんなイメージの味の変化です。ただ、少しワインの方が強いのか料理側は完全にワインの引き立て役みたいな感じになってしまいました。「このワインを美味しく飲む」という点では凄く良いのですが...。ちょっと黒胡椒を振ったりすればもっと良く合ったかもしれません。

チャレンジまとめ

11月は新酒の季節です。ボジョレー・ヌーヴォーが11月第3木曜日解禁なのは良く知られていますが、最近は日本の新酒も良く見かけるようになりました。それ以外の国の新酒も北半球の産地であれば、大体この頃に解禁になります(イタリアのノヴェッロ10月30日、オーストリアのホイリゲ11月11日など)。
今回の料理、鶏肉のチーズマスタードソースですが、イメージはブルゴーニュ。ブルゴーニュの中心都市であるディジョンの名物マスタードと、すぐお隣のジュラ地方で取れるコンテチーズでつくるソースを、同じくこの地方の名産品であるブレスの鶏もも肉のソテーにかけると素晴らしいご馳走になります。そこまで贅沢な食材を使用しなくても、今回の簡易版でもとても美味しいのがこの料理。王道のお相手はブルゴーニュのコクのある辛口白ワインだと思いますが、今回はあえて外して試してみました。
結論としては、どれも美味しかったです。甲州が1位にはなりましたが、他も素直に愉しめました。鶏肉はやっぱり万能だなあと思います。そして、チーズマスタードソースがこれだけでもワインが飲めてしまうくらい存在感を発揮していました。このソース、本当に1分くらいで出来てしまうのですが、とても良くワイン(特に白と軽めの赤)に合うと思います。是非お試し下さい!

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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