チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

オリーブオイル漬けのシェ―ブルチーズと フルーツトマト

第79回 2021年07月

オリーブオイル漬けのシェ―ブルチーズと フルーツトマト

チーズの味わい

シェーブルチーズは僕の大好物。チーズをオイルに漬け込んでおけば、夏場の熟したトマトと混ぜるだけ。実に簡単ですが、体に染み込む美味しさのある一品です。しっかり冷やしてお愉しみ下さい。

準備するもの
食べごろのシェ―ブルチーズ100g、オリーブオイル適量、好みのハーブやスパイス(ローリエ、オレガノ、ピンクペッパー使用)、フルーツトマト2個

つくり方
①密閉出来る容器に入れたオリーブオイルに好みのハーブやスパイスを加え、最後にシェーブルチーズを加える(塊のままでOK)。お好みの期間(2日~1週間程度)漬け込む
②フルーツトマトを食べやすいサイズにカットする。
③シェーブルチーズを食べやすいサイズにカットし、漬け込んだオイルやハーブとともにトマトと混ぜる。
④よく冷やす。


よく合うワイン

レオナルド ヴェルメンティーノ 2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

白桃 グレープフルーツ 白い花

香りにも味わいにも地中海の太陽を感じる、豊かな組み合わせ。

地中海を代表する白ワイン用のぶどう品種として、近年注目の高まるヴェルメンティーノ。ジューシーな桃や熟したグレープフルーツなどの柑橘を連想させる鮮やかな香りと、イキイキとした酸味のメリハリのある味わいが魅力です。リグーリア州、サルデーニャ島、コルシカ島などのものが有名ですが、こちらは増加中のトスカーナ州の海沿いのもの。程よいアロマティックさと果実のボリューム感の両方をおたのしみ頂けます。
シェーブルチーズと合わせると、ワイン単体で飲んだ時にはあまり感じなかった、地中海のハーブ(タイムやローズマリー)や熟れたメロンなど、地中海の太陽の恵みを連想させる香りが、ドンと口の中に広がりました。ワインの味わいは、より果実がまろやかなふくらみを見せ、トロリとしたテクスチュアがたのしめます。チーズの方は山羊乳の爽やかな甘さが強調されるように思いました。ワイン、料理共に単体で飲むよりもまろやかに、そして複雑さを増す感じです。香りにも味わいにも地中海の太陽を感じさせる、何か心たのしくさせる組み合わせでした。

フォルタン ガイア オーガニック 白 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

黄桃 はちみつ 白胡椒

味わいの引き締まる部分に焦点が当たる、興味深い組み合わせ。

フォルタン ガイアは「野菜に良く合うオーガニックワイン」をコンセプトにして、野菜料理で知られるミシュラン2つ星シェフのジャン・リュック・ラバネル氏と共同開発されたシリーズ。ラングドック地方産のヴィオニエとシャルドネのブレンドで生まれる、華やかで甘い香りと、やわらかで豊かな果実味、心地よいスパイシーさが魅力です。
シェーブルチーズと合わせると、こちらはヴェルメンティーノとはまた異なる感じになりました。果実の豊かさを主張したヴェルメンティーノに対して、こちらはワインのコクのあるドライさや、白胡椒や生姜を連想させるようなスパイシーさが強調されます。シェーブルの方は、元々山羊乳チーズが持っている少しほろ苦いようなキメ細かいミネラル感が良く伝わる感じがしました。味わいが広がると言うよりは、むしろキュッとポイント、ポイントの味わいに意識がフォーカスされて、それが次々と変化していく、興味深い組み合わせになりました。

ロス ヴァスコス ロゼ 2020

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

さくらんぼ ラズベリー ローズマリー

ワイン、チーズ、トマトの一体感が凄い。最高と言える組み合わせ。

コルチャグア・ヴァレーの自社畑のカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、10%程のシラーをブレンド。醸造責任者が「プロヴァンスのロゼの味わいをイメージした」と言う通りの、美しいピンク色でしっかり辛口のロゼワインです。赤ワイン用のぶどうよりも2週間程度早く収穫されているため、引き締まった酸が残され、さくらんぼを口に含んだ時のような、パリッとした果肉がイメージされる、鮮やかな果実味がたのしめます。
シェーブルチーズと合わせると、ワイン・チーズ・トマトの3つの間に見事なまでの一体感が生まれました。ワインは魅力的なさくらんぼを連想させるアロマを放ち、チーズは優しくかつ上品に香りと乳の甘さを主張します。さすがはプロヴァンススタイルと言うべきか、フルーツトマトの風味も余韻までとてもいい感じですし、ピンクペッパーやオリーブオイルの風味も鮮やかに口中に広がります。やってる方もビックリの、全ての要素が主張しつつも一体化する素晴らしい組み合わせとなりました。最高です。

ダークホース ピノ・ノワール 2018

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

プラム ドライプルーン クローブ

ワインの甘いトーンが強く出る、ややワインが強い組み合わせ。

常識に捉われないワインづくりがコンセプトのダークホース。単一品種で醸造される事の多いピノ・ノワールにグルナッシュやゲヴュルツトラミネールをブレンドしたり、より豊かな果実味を引き出すためにこれまたピノ・ノワールではあまり行われない高温浸漬を行うなど、このワインでもしっかり型破りなつくりを貫いています。たっぷり豊かな甘い果実をたのしめる1本です。
シェーブルチーズと合わせると、ワインの甘さが強調される感じがありました。より華やかにクローブやシナモン、ヴァニラを思わせる甘い香りが出て来て、果実もドライフルーツ的な甘いトーンが強くなります。酸味はあまり感じず、ひたすらまろやか。ただ、残念な事にワインが強いのか、シェーブルの繊細な香りが、ワイン側の甘いヴァニラなどの香りに負けて消えてしまう感じがあります。ワインがかなりまったり系なので、少し料理側と方向性が違ったのかも知れません。

チャレンジまとめ

5月から夏場にかけてはシェーブルチーズが特に美味しく感じられる季節です。子ヤギを産んで、青草を食べ始めた山羊の乳からつくられるチーズの美味しさはこの季節ならでは。繊細な甘み、心地よい酸味、キメ細かなテクスチュア。シェーブルには他のチーズには無い魅力があります。山羊乳には特有の香りがあって、それが苦手な方もいらっしゃると思います。オリーブオイルに漬ける事で、そのクセや酸味がまろやかになりますので、シェーブル初心者という方にもオススメのメニューです。
さて、そんなシェーブルに合わせるワインの定番はソーヴィニヨン・ブランの辛口白です。しかし、今回はそこにトマトとオリーブオイルが加わります。料理のイメージからしても地中海のワインが相性が良いのかなという事で、そのエリアのワインを集めて試してみました(チリもカリフォルニアも主力の産地は地中海性気候です)。オリーブオイルと相性の良いまろやかな白も相性良かったのですが、今回の一押しは辛口ロゼとなりました。ロス ヴァスコスのロゼは、シェーブルチーズだけでなく、トマトやオリーブオイルも全て活かす、完璧と言って良い相性を見せてくれたと思います。そういえば現地ではオリーブオイルも自分たちでつくってたし、自社畑でつくったトマトもご馳走になったなあ、なんて事も思い出しました。とても自然体、そして全ての要素が活きる見事な組み合わせでした。上でも書きましたが、最高です。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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