チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

鶏ササミのコルドン・ブルー風とパセリポテト

第101回 2023年11月

鶏ササミのコルドン・ブルー風とパセリポテト

チーズの味わい

安心の淡泊な鶏肉とコクと脂肪を与えるチーズの組み合わせ。パセリポテトも簡単ですが、色々なワインに良く合う優秀なおつまみです。

準備するもの
鶏ささみ3本、チーズ(ゴーダチーズ使用)60g、大葉3枚(お好みで)、塩胡椒、卵1個、小麦粉、パン粉、揚げ油適量、レモン1/2個、じゃがいも1個、パセリ1枝、バター10g、塩適宜

つくり方
(1)パセリポテトをつくる。じゃがいもにラップフィルムにかけ柔らかくなるまで加熱する。熱いうちに一口大に切り、バターとみじん切りのパセリと混ぜ、塩で調味する。
(2)鶏ササミのコルドン・ブルー風をつくる。ササミをラップで包み、叩いて薄く伸ばす。塩胡椒をふる。その上に大葉1枚(無くても可)と細かく切ったチーズ1/3ずつを載せ、くるくると巻く。小麦粉、溶き卵、パン粉の順につけ、180℃の油で火が通るまで揚げる。
(3)(1)と(2)を皿に盛り、半分に切ったレモンを添える。


よく合うワイン

ジョルジュ デュブッフ ボジョレー  ヌーヴォー 2023

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

■ベリー■いちご ラズベリー 赤い花

それぞれのポテンシャルを完全に引き出す、鮮やかな組み合わせ

2023年は日本だけでなく、フランスのボジョレー地方も猛暑に見舞われた年でした。そのおかげでぶどうは見事に熟しています。ただ、8月の中盤から後半に雨が降っており、その後に晴れに恵まれたため、フレッシュ感は失わないまま、病気も広がらずに良い熟度を得られました。今年の収穫開始日は9月1日と、8月の収穫開始が続いたここ数年よりも落ち着いています。ヌーヴォーらしい鮮やかな果実味と甘い果実感を両立した年と言えるのではないでしょうか。
ササミのコルドン・ブルー風と合わせると、鮮やかなイチゴやラズベリーを思わせる赤い果実味がクッキリと浮かび上がりました。果実はただただ甘く素直で、コルドン・ブルーに使った胡椒の風味やチーズの旨味など、素材の要素が次々と浮かび上がって来る感じで、美味しさしかありません。料理とワイン、それぞれのポテンシャルを鮮やかに、かつ遺憾なく引き出す素晴らしい組み合わせだと思いました。パセリポテトとの相性も抜群なので、言う事無しです。
※解禁前のため、テイスティングは通常のボジョレーを使用しています。

サントリーフロムファーム 新酒 甲州 2023

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

夏みかん 白桃 食パン

新酒の風味が口の中で爆発する。素晴らしい組み合わせ

2023年は山梨県にとって素晴らしいヴィンテージとなりました。猛暑ではありましたが、毎年悩まされる夏場~収穫期にかけての秋雨と台風の影響が殆どなく、雨量は平年の約2割とぶどうに強い水分ストレスがかかりました。その結果として、ぶどうの熟度が新酒収穫の時点で例年の通常のワインの収穫時を超えるレベルまで上昇。新酒ならではのフレッシュ感や爽やかな酸味を持ちながら、果実の厚みも併せ持つ稀有なヴィンテージとなっています。
ササミのコルドン・ブルー風と合わせると、フレッシュな果実味がさらに爆発的に口の中で広がる感じがありました。絞ったレモンの風味も効果的に広がり、爽やかな柑橘感や白桃を思わせる豊かな果実味に加えて、もぎたてのサクサクの果肉の青りんごや洋梨を思わせるフレーバーも出て来て、口の中が果実で溢れます。ササミやチーズさらに衣のパン粉の風味が果実と良い感じで馴染んで行くのも魅力的。特にまだ発酵したてで酵母の風味が残る、新酒ならではの良さをチーズの発酵感と、衣のパン粉のイースト感とが大きく膨らませてくれているように思いました。パセリポテトもじゃがいもの旨味は出しつつも、新酒の爽やかな酸味で後口が軽快になりとても良い相性でした!

ジョルジュ デュブッフ オレンジ ヌーヴォー 2023

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

マーマレード あんず 白胡椒

とても美味しいけど、フレッシュな感じではない組み合わせ

2023年のオレンジ ヌーヴォーはこれまで使用して来たマスカットのブレンドを止め、グルナッシュ・ブラン、ヴィオニエ、ロール(ヴェルメンティーノ)の3品種ブレンドとなりました。その結果として、よりコクのある杏やオレンジ・マーマレードを思わせる風味が強く、飲み応えのある味わいになっています。
ササミのコルドン・ブルー風と合わせると、ワインのどっしりとした力強い果実味がしっかり前に出て来ました。料理側はと言うと、ササミの淡泊な旨味がきちんと感じられ、ワインにある胡椒の風味と衣の香ばしさやチーズの甘さとの出会いも心地よく、しっかりとお互いを受け止めているなと思わされます。ただ、どちらかと言うと、落ち着いた印象が中心となり、折角の新酒で味わいたいフレッシュさという点で言うと、プラスになっていないのかなという事で少し採点を辛くしています。
※解禁前のためテイスティングには前年のヴィンテージを使用しています。

サントリーフロムファーム 新酒 マスカット・ベーリーA ロゼ 2023

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

赤ぶどうジュース 綿あめ ■ベリー■いちご

不思議とフレッシュさが減退する。しっくり来ない組み合わせ

甲州のところでも述べましたが、山梨県の2023年は素晴らしい熟度に恵まれた2013年以来のグレートヴィンテージとなりました。マスカット・ベーリーAもフレッシュでありながら、素晴らしく健全で完熟のぶどうがそのまま液体になった様に思えるまろやかで魅力的な味わいです。少し甘さがありますが、甘口ではなくやや辛口の味わい設計でその素直で充実した果実味を満喫出来ると思います。
ササミのコルドン・ブルー風と合わせると、不思議と口の中がぼんやりとする感じになってしまいました。新酒単体で飲むとマスカット・ベーリーAをそのまま口の中で頬張るような、とても魅力的な果実味が広がるのですが、コルドン・ブルー風と合わせるとその果実味が不思議にフレッシュさを失ってしまうのです。このワインは、少し残糖の残った甘さのあるロゼで、その甘さがフレッシュな果実味と合う事で素敵な美味しさになるのですが、不思議とそのフレッシュさが失われてしまう感じになります。衣が邪魔するのか、レモンが邪魔するのか、どうもしっくり来ない感じでした。パセリポテトとは良い感じです。

チャレンジまとめ

今回は新酒祭りという事で、日本とフランスの新酒たちをピックアップしました。これまで数々のマリアージュ実験をやってきましたが、新酒だけというのは実は初めて。新酒を尊ぶ国と言えばオーストリア!という事でシュニッツェル(カツ)とチーズの黄金の組み合わせでチャレンジしてみました。フレッシュ感を損ないたくないので、カツですがソースではなく、シンプルにレモンを搾るのみ。結果としては、特に白ワインとの相性が明らかにアップし、フレッシュな白とこのタイプの料理との間違いのない相性を再確認する事になりました。
もう一つ本当に良かったのがボジョレー。ヌーヴォー解禁前に取材をせざるを得ないので、今年のボジョレー・ヌーヴォーとは試せていませんが、ガメというぶどう品種と鶏や豚などのホワイトミートとの本質的な相性の良さをまざまざと見せつけられた気がしました。今回は鶏ササミでしたが、チーズ入りのトンカツなどでも間違いないと思います。トンカツはジョルジュ デュブッフ社の輸出部長であるアドリアン デュブッフ=ラコンブ氏の大好物でもあり、彼のボジョレーと和食のマリアージュのイチ押しです。これも間違いありませんので機会があれば、試してみて下さい。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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