Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

奏ウエルカム・パンチ

奏<白桃> 700ml
ROKU 300ml
レモンジュース 60ml
シュガーシロップ 60ml
ビルド/パンチボウル&グラス
すべての材料をお好みのフルーツやスパイスと一緒にパンチボウルに入れ、できればひと晩冷蔵庫で冷やす。提供直前に取り出して大きめの氷を入れる。グラスに取り分け、シャンパン、オレンジジュース、ソーダ水などで割る。オン・ザ・ロックも美味しい。

使用する材料には意味がある

酒に何かをミックスする飲み方、カクテルがいつ頃生まれたかは定かでない。紀元前のエジプトではビールにはちみつ、ナツメヤシのジュースを加えて飲んでいたらしい。古代ギリシアやローマではワインに水やはちみつを入れていたようだ。中世になるとヨーロッパでは寒さに耐えるためにワインにスパイスを加えて温めて飲んだ。

酒自体、いまわたしたちが口にしているような味わいの洗練はない。何かをミックスしなければ美味しくない、そんな酒質でもあったであろう。

現在のカクテルの原型とされているのはパンチ。夏の暑い季節にふさわしく、たっぷりのカクテルに満たされたパンチボウルに氷とともに浮かぶフルーツやスパイス、ハーブが涼やかさとともに華やいだ気分にさせてくれる。

パンチは17世紀後半にインドで考案されたとされる。おそらくイギリス東インド会社の社員たちが暑気払いにつくって飲んだのだろう。それが植民地インドから本国イギリスの上流階級に伝わり大人気となった。

Punchはヒンドゥスタニー語で5を意味する“Panch”に由来し、それが英語に転訛したようだ。

当初インドではココヤシの樹液から採るパームシュガーを原料につくる蒸溜酒アラックがベース。他に水または紅茶、レモン、砂糖、そしてナツメグを加えた。つまりアルコールの“強”、水や紅茶の“弱”、柑橘類の“酸”、砂糖の“甘”、ナツメグの“スパイス”の5要素で構成された。

イギリスでは中国でつくられていた大ぶりの陶磁器がパンチボウルとして重要なコレクション・アイテムとなる。お金持ちは中国に1年以上待ちで特注した。清涼感のあるガラス製品が誕生するまでは陶磁器が主役であった。

また銀製のものも登場し、ワインクーラーとしても役立ったようだ。現在、アンティーク市場では稀少品となっているらしい。

縁が波形になったパンチボウルがたくさんあるのはイギリス人の考案によるもの。レードルやワイングラスをかけやすく(ぶら下げる)するための配慮である。

パンチはやがてイギリスの植民地だったカリブ海地域や北米へと広まり、次第にポピュラーなドリンクとなっていく。

奏とROKUのパンチでサマー・パーティー

海を超えて伝わっていくと、地域によってさまざまな材料が使われアレンジされていく。イギリスでは赤ワインをベースにしたパンチが定着したが、カリブではラムが使われた。アメリカではラムやワイン。もちろん地域によって入手できるフルーツやスパイスは異なるし、水とか紅茶でなくてもいいだろう、となったり、ソーダ水やフルーツジュースを使ったりもした。

ある意味、酒やフルーツやスパイスを使ってパンチボウルにつくりあげるものは、とにかくパンチとなったのではなかろうか。

アメリカの場合、かつてフランスやスペインの植民地だった南部地域のパンチのベースにはブランデー、ラム、ボルドーの赤ワイン、マデイラワインなどがよく使われたようだ。東海岸ではライウイスキーも使われた。19世紀半ば以降には広く流通するようになったバーボンウイスキーも加わることになる。フルーツはイチゴやレモン、ライムなど。グァバジュースやパイナップルジュースもミックス素材となった。

スパイスとしてはハーブのミントの葉が大活躍する。ただし歴史的にイギリスの影響を受けなかったアメリカ南部ではパンチの名は一般的ではなく、芳香性のある飲料全般に使われていたジュレップの名で呼ばれたようだ。カクテル「ミントジュレップ」の原型である。


さて、今回は前回エッセイで取り上げたジャパニーズ・クラフトリキュール「奏 Kanade<白桃>」とクラフトジン「ROKU」を使ったカクテル「悟空」をパンチにアレンジしてみた。名前は「奏ウエルカム・パンチ」。親しい人たちをもてなすのにふさわしいウエルカム・ドリンクである。

やっぱり夏は桃がいちばん。スイカもいいけど、わたしの大好きな桃を使わずして夏のパンチはあり得ない。これから述べるレシピはホームパーティー用としておよそ15人分のものだ。

まず「奏<白桃>」を700ml、つまり1ボトルの中身をボウルに注ぎ込めばいい。そして次に「ROKU」を300ml。あとはレモンジュース、シュガーシロップを60mlずつ。最後にお好みのフルーツとスパイスを入れる。

今回の「奏ウエルカム・パンチ」のフルーツは桃、リンゴ、オレンジ、レモン、ライムである。スパイスはスターアニス(八角)と木の芽を入れた。そして、できるならばこれをひと晩、冷蔵庫の中で冷やすのがいい。フルーツもカクテルによく馴染む。桃やリンゴが変色することはない。

提供するまえに冷蔵庫から出したら、氷(できれば大ぶりのロックアイス)を入れて冷たさを保つようにする。それからグラスに注ぎ分けて、フルーツもお好みで適度に入れる。

グラスに氷を入れてオン・ザ・ロックで味わってもいいが、シャンパン(スパークリングワイン)、オレンジジュース、あるいはソーダ水で割るのもおすすめ。いろんな味が楽しめるのが「奏ウエルカム・パンチ」のよさ。

クラフトリキュール「奏<白桃>」の高品質なジューシー感はもちろん、クラフトジン「ROKU」が重要な役割を果たしている。スターアニスや木の芽といったスパイスをうまく受け止めて見事なハーモニーを奏でているのだ。日本のボタニカルを巧みに織り込んでつくられた「ROKU」ならではの懐の深さである。

さあ、この夏は「奏ウエルカム・パンチ」で楽しいパーティーをどうぞ。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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クラフトリキュール「奏 Kanade」
クラフトリキュール
「奏 Kanade」

ジャパニーズクラフトジン「ROKU」
ジャパニーズクラフトジン
「ROKU」

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