日本は米(こめ)で成り立ったような国だ。大昔に日本に米づくりが伝わり、気候風土に適していたので安定した収穫が期待できた。それまでの狩猟生活とは違い、多くの労力を要するから人々は集団で定着するようになる。それが村になり、やがて大きなチカラを持つ集団組織が生まれた。
4世紀に大和朝廷という統一政権が生まれた後は計画的な米栽培が確立。田んぼの整備、農具開発が進む。栽培は広い地域に拡大し、645年、大化の改新以降は米が経済の中心になる。武家社会になるとさらに重要度は高まり、財政を潤すためには収穫量を増やすことが第一だった。
米が収めるものではなく食べるもの、いまに通じる食文化として語られる姿になったのは明治時代。1873年の租税制度によって、税は米でなくお金で収めることに変わってからだ。
とにかく、日本という国は米でひとつになっていったのである。人々のこころを癒す酒の世界にも、昔から米からつくる清酒、焼酎というものがあった。それぞれの土地で、地酒を醸造、蒸溜してきたのである。
そして21世紀、日本人の魂ともいえる米の新たなスピリッツ、ウオツカが日本で誕生した。2018年10月にまずは米国と漢字で当てられるウオツカの国アメリカで衝撃的デビューを果たす。人気上昇中だという。
その名は「ジャパニーズクラフトウオツカHAKU(白)」。米国先行発売から半年後の2019年4月、日本デビューとなった。
ボトルのラベルの墨文字を見て、数字のゾロ目が浮かんだ。なんとおめでたい名前なんだろうと頬がゆるんだ。
原料である米という漢字を解体すれば八十八。転じて、米づくりには88もの手間がかかると語られてきた。さらに88歳は米寿の祝い。
そして白。百という漢字の上の一を取れば、白となる。つまり99。究極の数字、完結や再生を意味するらしい。それに数え99は白寿の祝いなんだものね。と、述べながら、米を食べる日本人は語呂合わせが好きなんだな、とあらためて思う。
そんなことよりも透明感あふれるホワイトスピリッツにふさわしいブランド名だ。またウオツカのクセのないすっきりとした香味は無垢な感覚にあふれている。
白という色は邪気を祓い(はらい)、こころを癒すといわれてもいる。悪い気を浄化する。白鳥、白馬、白蛇などは神の化身として語られてきた。加えて白は、どんな色にも染まるのである。変化をも期待できる。白いキャンバスを絵の具で染め上げていくような創造性をも併せ持つ。
これはカクテルにおいてのウオツカの役割にも通じる。ベースとしてアルコール感をしっかりと湛え(たたえ)、他の酒類や果汁と見事に溶け合い調和する。不可欠といえるスピリッツなのだ。