Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

ゴッド・マザー

ピナクル ウオツカ 3/4
ディサローノ ・
アマレット
1/4
ビルド/
オールド
ファッションドグラス
グラスに氷

ソルティ・ドッグ

ピナクル ウオツカ 45ml
グレープフルーツ
ジュース
適量
ビルド/
オールド
ファッションドグラス
グラスの縁を塩でスノースタイルにする
氷は大きめのものを1個氷が早く溶けて水っぽくなると、ジューシーさが失われる

ウオツカ・マティーニオン・ザ・ロック

ピナクル ウオツカ 5/6
チンザノ ベルモット
エクストラドライ
1/6
ステア/
オールド
ファッションドグラス
グラスに氷
オリーブを入れ、
レモンピールを擦る

とても謙虚なスピリッツ

ウオツカというのは謙虚なスピリッツである。先日「ゴッド・マザー」を久しぶりに飲んで実感した。

このカクテル、スコッチウイスキーと杏(あんず)の核の芳香が効いたリキュール「ディサローノ・アマレット」を使った「ゴッド・ファーザー」のアレンジで、ウイスキーをウオツカに代えると「ゴッド・マザー」になる。

ひと口含んで感嘆した。「ディサローノ・アマレット」のアーモンド的な感覚はもちろんのこと、クリーミーさをうまく引き出しているのだ。

カクテルベースとしてウオツカはアルコール分というか、酒としての厚みをしっかりと出す役割を果たしながら、他の素材の風味を引き立てる。無色透明で、ほとんどがすっきりとしたキレを特長としているのだから当然ともいえるのだが、あらためてこのスピリッツの偉大さを認識した。



ところでウオツカは、歴史的にはロシアやポーランド、フィンランドをはじめ北欧、東欧系のスピリッツのイメージが強い。ポーランドでは11世紀には存在していたらしいし、ロシアでも12世紀には地酒として飲まれていたということだが、現代はウオツカといえばアメリカなのだ。生産量がいちばん多い国はアメリカであり、ブランドも数がわからないほどたくさんある。

この連載の第2回でも触れたが、1970年代、アメリカは白色革命と呼ばれるスピリッツブームが起こった。ジュースやソーダをミックスしたお手軽カクテルが流行し、ここからウオツカがぐんぐん伸張していく。

70年代から80年代前半までディスコの時代だった。日本のディスコのカウンターでもウオツカベースの「ウオツカ・トニック」「ブラッディ・メアリ」なんかがよくオーダーされていた。その頃、わたしがよく飲んだのは「ソルティ・ドッグ」である。

女子とチークを踊り、「ソルティ・ドッグ」を飲んでまた踊り、そしてフラれる、ということを毎週末繰り返すアンポンタン野郎であった。いまでもあまり変わらないのだけれど。

そもそもこのカクテル、1940年代にイギリスで生まれたジンとライムジュース、塩をシェークする「ソルティ・ドッグ・コリンズ」が原型である。ベトナム戦争後にアメリカの西海岸で大人気となったのだが、アメリカ人はグラスの縁に塩をまぶして、材料もウオツカとグレープフルーツジュースに代え、シェークもせずにオン・ザ・ロックで飲むスタイルにアレンジした。

「ソルティ・ドッグ」の名の由来は、イギリスで船の甲板員を指すスラングだそうで、潮をいっぱい浴びる仕事だから"しょっぱい奴"ということらしい。わたしの場合、踊って「ソルティ・ドッグ」を飲んでフラれるのだから、ほんとうに"しょっぱい"学生だったといえる。でも、グレープフルーツの酸味と塩の苦味が汗をかいたときにはたまらなく旨い。あの頃、喉を鳴らしながら何杯も飲んでいたから、若さってのは凄い。

カルフォルニアの空の色

70年代のウオツカシーンでもうひとつ記憶にあるのがアメリカで「ウオツカ・マティーニ」が流行したことだ。

これ、パワーランチといってクライアントを昼ご飯に接待してステーキなんぞを食べながら打ち合わせやプレゼンテーションをおこなったのだが、「マティーニ」3杯までは経費で落としてよい、などと言われていた。ところが、ランチにジンベースの「マティーニ」を飲むと、オフィスに戻ったときにジンの香りがして風紀上よくないということでより柔らかいオン・ザ・ロックの「ウオツカ・マティーニ」登場となったらしい。

1977年に第39代大統領となったジミー・カーターが「ランチにマティーニを飲むのはいかがなものか」と発言し、ニューヨークのビジネスマンたちから南部出身(ジョージア州)の田舎者呼ばわりされてしまったエピソードもある。カーターさんの気持ちもわからなくはない。



とはいえ、アメリカという国にはウオツカのたくさんのエピソードがあり、たくさんのブランドがある。いま人気を集めているのはフランス産の「ピナクルウオツカ」。アメリカンウオツカではないところが愉快だ。それだけウオツカへの関心が高く、品質が優れていれば受け入れることの証でもある。

香味はすっきりとクリアながら、原料の小麦由来と想われる、他のウオツカにはない独特のフルーティーさを抱いている。ボトルは爽やかなブルー。そして山の頂上を意味する“ピナクル”のブランド名を示す、白い山の頂きがあしらわれている。

この爽やかな色をしたボトルを見る度にパパス&ママスのヒット曲『夢のカルフォルニア』がアタマの中で流れ出す。みんな枯れ葉色で空は鉛色。こんな冬の日はカルフォルニアを夢見る、といった詩で、これからの季節にぴったり当てはまる。

自宅でオレンジジュース割りの「スクリュードライバー」や、もしライムジュースとジンジャーエールがあれば「モスコー・ミュール」、シンプルなジンジャーエール割りなどを味わってみるといい。すっきりとしていて飽きがこない。

暖かい部屋でパパス&ママスのコーラスを聴きながら、冬はウオツカ、というのもなかなか粋なものだ。

蛇足だが70年代はじめにアルバート・ハモンドの『カリフォルニアの青い空』がヒットした。こっちを選ばれる方もいらっしゃるかもしれない。でも、この曲はわたしにはちょっとかったるい。ウオツカベースのカクテルを飲み終わらないうちに眠っちゃいそうになる。

わたしは、やっぱりパパス&ママスだな。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 川田雅宏
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

ブランドサイト


ピナクル ウオツカ

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