ザ・ビーチ・ボーイズのハーモニーが夏の到来を告げる。
こんな書き出しが通じたのは20世紀までだった。かつては夏のBGMの定番曲といえば、ハワイアンかビーチ・ボーイズ。商店街を歩けばどこからともなく聞こえてきたものだが、いまは季節感とは無関係に流行の曲が流れている町が多いような気がする。海の家はどうだろうか。根強いのはサザンあたりか。ビーチから久しく足が遠のいてしまい、よくわからない。
でも、今年はちょっと違う。8月にはビーチ・ボーイズが33年ぶりに来日する。デビュー50周年。久しぶりに再結成し、すでにはじまっているアメリカでのツアーは大好評らしい。また最新作『神の創りしラジオ』もいい。半世紀経っても、彼らのサウンドは輝きを失ってはいない。軽快なメロディー・ラインに爽やかなコーラス。ハーモニーのよさがこころに涼風をなびかせる。日本でも、山下達郎、大瀧詠一をはじめ多くのミュージシャンたちが影響を受けているというのも頷ける。
先日、出先でひと休みするためにオープンテラスのある喫茶店に入ったら、ビーチ・ボーイズの曲が流れていて嬉しくなった。コーヒーのはずだったのにビールを飲んだ。
ティーンエイジャーの頃、『サーフィンUSA』『ファン・ファン・ファン』といったビーチ・ボーイズ・サウンドを聴くと、かき氷のブルーハワイを食べなきゃいけないような気になったし、早く海にいかなくちゃ、と胸が躍った。
気分だけはアメリカ、ウエスト・コーストの少年になりきる。砂浜、サーフィン、ビキニの女の娘といったシーンが浮かび上がり、夏休みに恋のひとつでも生まれそうな勢いがつく。
ところが夏という時間は日に焼けただけでエンディングとなり、気がつけば秋。無為に時間をつぶしてしまった、と反省をする訳でもなく季節は巡り、またあのサウンドに勢いづく同じ夏がくる。
そんなことを思い出しながらビールを飲むのだが、どうもしっくりこない。
ビーチ・ボーイズのサウンドにはジューシーな清涼感のあるカクテルのほうが似合う。それにビーチで海を眺めている気分だから、潮風の塩っぱさには甘みが必要だ。とはいっても喫茶店だからカクテルなんぞ望めない。リキュールでもあればいいのに、と思ってしまうのは酒好きの我が儘だろう。
そこで何がいいか想い巡らせてみる。浮かんだのが新時代のフレッシュさにあふれたグアバリキュールやマンゴーリキュールだ。リゾート地へ出かけなくても、トロピカルな感覚が欲しい。