新たなリキュールが2019年6月に誕生した。その名はジャパニーズクラフトリキュール「奏 Kanade」。抹茶、柚子、白桃の3タイプの味わいでの登場となった。
製品名は、楽器を奏でる、演奏といったワードをイメージさせ、心地良さそうな香味感覚が伝わってくる。ところが、奏(かなで)の本来の意味は音楽的なものではないらしい。
漢字の成り立ちには“差し上げる”“申し上げる”の意味があるという。上部は神様を呼び寄せる木の枝を表し、末広がりの下部の天は“神の降臨を願い、お供えする。ものを差し出す”様子を物語るらしい。
そして神様を待ち望む礼式として舞い踊ることにより、奏でるとか演奏するといった解釈につながったという。
ならば、このリキュールを飲めば神が宿ってくれるかもしれない、なんてことにはならないだろうが、それでもなんだかこころ穏やかな幸せな心地にしてくれそうな気がする。
3品それそれがオン・ザ・ロックで十分楽しめる。和の素材の高い品質感に満ちていて、クラフトリキュールとしての洗練を堪能できるはずだ。
順にカクテルにして味わってみた。凝ったレシピではない。すべてグラスに直接つくるビルド。できるだけ「奏」の味わいを感じ取れるシンプルなものにした。面白いことに、合わせたスピリッツの素晴らしさをも知ることとなる。
まず「奏<抹茶>」。ベースである京都宇治産の抹茶浸漬酒と宇治産の玉露浸漬酒が品質の高さを語り、上質なお茶の美味しさ、すっきりとしたしなやかな味わいで魅了する。
スタンダードカクテルに、家庭でも楽しめる抹茶リキュールとウーロン茶の1対1をロックで味わう「照葉樹林」がある。極めて優しい味わいなのだが、これをアレンジしてみた。バーで飲む「照葉樹林」といえるだろう。
国産米を原料にて生まれたジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」を「奏<抹茶>」に合わせ、それをウーロン茶で伸ばすというもの。口にすると、すっきりとしたお茶の風味に、よりカクテルらしいというか、アルコール感が高まったなかに心地よい辛みがある。
ほどよい辛みは「HAKU」がもたらしていて、米の弾力感のある甘みを抱いたウオツカから表出したこの味わいには驚かされた。ミックスの妙。カクテル素材として、「HAKU」でなくてはならないという存在感を示している。
「照葉樹林」のアレンジではあるが、ウオツカを加えたことからあえてネーミングした。
「別れ霜」。八十八夜の別称で、霜の季節の終わりを言う。ここから新茶の摘み取りがはじまり、米づくり、田植えのシーズンがはじまるのである。茶と米のミックスからイメージしたものだ。