鳩は平和の象徴とされる。きっかけはパブロ・ピカソ(1881―1973)が描いたリトグラフにあるといわれている。1949年制作。同年にパリで開催された世界平和評議会のポスターに採用されてからのことになる。
日本の古い世代は、鳩はスペイン語でパロマということを子供の頃から知っていた。こちらはアイ・ジョージ(本名・石松譲治/1933―)という歌手のおかげだった。香港生まれで、父が日本人、母がスペイン系フィリピン人のハーフである。
シンガーソングライターでもあった彼は、1961年にオリジナル作品である『硝子のジョニー』を大ヒットさせた。そして風貌だけでなくスケールの大きい歌声の持ち主で、歌謡曲だけでなく、日本にラテンミュージックを伝えた功労者といえよう。それとともに、当時としては数少ないギターの弾き語りで魅了した。
パロマが鳩であると知ったのはアイ・ジョージの歌声からだった。
彼は「ククルクク・パロマ/Coucouroucoucou Palom」を1961年の紅白で歌ったようだ。そのときのわたしはまだ幼児であったが、1970年代にかけてTVで彼がよく歌っていたので馴染み深い曲のひとつなった。
この曲は1954年にメキシコのトマス・メンデス(1927―1995)が発表したウァパンゴという民族舞踊の名曲である。
その「ククルクク・パロマ」は、アメリカのハリー・ベラフォンテ(1927-2023)が現地でこの曲を大いに気に入り、レパートリーに加えたことから世界に広まった。
日本では“鳩ポッポ”であるが、スペイン語圏の人たちは“ククルクク”となる。ポッポーってなんだかなー、とわたしは幼い頃に感じていた。汽車ポッポみたいじゃないか。
大袈裟だが、アイ・ジョージが世界の広さ、言語の違いなど、子供のわたしに教えてくれたような気がする。