メキシコの酒テキーラづくりにはヒマドール(jimador)という仕事人がいる。以前、何の仕事に携わっている人なのかわからなくて、暇な人って訳はないだろうからと、テキーラに詳しい方に質問した。
すると、ヒマとは「収穫する」って意味だと教えられた。そうか、原料のアガベを収穫する人なんだ、と理解した。
テキーラの原料は英語でBlue Agave(ブルーアガベ)。原産地メキシコではアガベもしくはマゲイ(Maguey)と呼んでいる。正式にはアガベ・アスール・テキラーナ・ウェーバー。アロエに近い竜舌蘭(リュウゼツラン)の一種だそうだ。
原料に使われるのはサボテンのような葉の部分ではなく、地下茎。直径70~80cm、重さ40kgくらいまで育った大きな球茎である。巨大なパイナップルのようなので、“ピニャ”とスペイン語での呼び方をされている。
ヒマドールは大きなピニャを土中からあっという間に掘り起こし、コアという独特の形をした刃で葉を切り落とす。
テキーラは原料の使用割合によってブルーアガベ100%とミクストのふたつのカテゴリーに分けられている。ミクストはブルーアガベを51%以上使用しなければいけない。
いまブルーアガベ100%の正統派テキーラがアメリカで人気となっている。バーテンダーはもとよりセレブの間でよく飲まれているようだ。
そこで「サウザ ブルー」をご紹介しよう。これが実にいい。
冷たくしてもいいのだが、まずは常温のストレートで楽しむことをおすすめする。せっかくの100%の香りや味わい、アガベ本来の甘みとコクを冷やして抑え込むのはもったいない。フルーティーさも潜む柔らかいほっくりとした香り、穀物様の甘く滑らかな味わいをじっくりと堪能していただきたい。
小ぶりのワイングラスに注いでゆったりと楽しむといい。新鮮なブルーアガベだけを使用した品質の高さを実感できるはずだ。
焼酎を好まれる方ならば、たまには「サウザ ブルー」がいいと実感されるだろう。わたしはいま、焼酎が飲みたくなるとあえて「サウザ ブルー」を常温で楽しんでいる。半分ほど啜るとワイングラスに氷をひとつ落とす。これにはまっている。
このしなやかな味わいは、サウザ社のヒマドールのおかげである。ピニャが良質であるかどうかが大前提ではあるが、収穫のタイミングと、収穫後にいかに素早く蒸溜所に運び入れて製造に向かわせるかも重要なポイントである。
数日間、太陽の下にピニャを放置する蒸溜所もあるなかで、サウザはフレッシュな状態で仕込んでいる。ヒマドールさんたちが一生懸命に働いてくれているおかげといえる。
だから最良のアガベジュースを採取でき、最高品質のブルーアガベ100%テキーラが誕生するのだ。