Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

マタドール

サウザ ブルー 30ml
パイナップルジュース 45ml
ライムジュース 15ml
シェーク/ロックグラス
氷を入れたオールドファッションドグラスに注ぐ

メキシカン

サウザ シルバー 1/2
パイナップルジュース 1/2
グレナデンシロップ 1dash
シェーク/カクテルグラス

スタイリングの似ている素材のミックス

テキーラベースのカクテル「マタドール」と「メキシカン」のふたつを紹介しよう。どちらもパイナップルジュースを使用するのだが、洒落っ気というか、ダジャレっ気から生まれたカクテルなのでは、と勘ぐりたくなってしまう。

テキーラの原料はBlue Agave(ブルーアガベ/英語)で、アロエに近い竜舌蘭(リュウゼツラン)の一種。原料として使われるのはその地下茎である。球茎の巨大なパイナップルのような形からスペイン語で「ピニャ」とも呼ばれる。 詳しくはテキーラ「サウザ ブルー」について触れた連載41回『ヒマドールは忙しい』をご一読いただきたい。

何を言いたいか、この段階でわかった方もいらっしゃるだろう。ピニャはパイナップル。カクテルを創作した人は、ピニャとも称される原料からつくられるテキーラをベースにするのだとしたら、パイナップルジュースをミックスしたらいいんじゃないか、とヒョイっと気軽にやってみた。そしたらハマっちゃった。そんなふうに勝手な解釈をふくらませてしまうのだ。


ではまず「マタドール」。テキーラ、パイナップルジュース、そしてライムジュースをシェークして、オン・ザ・ロックで味わう。マタドールとは闘牛士。どうしてこの名がついたのかはよくわからない。

通常のミックス配分でいけば、テキーラとパイナップルによって生まれる柔らかな甘みに、ライムの酸味がふんわりとそよぎ、爽やかなすっきりとした味わいとなる。ただしライムジュースの加減で味わいのニュアンスは変わる。

パイナップルが店頭に並びはじめる6月頃からはフレッシュな甘みを感じてみてはいかがだろう。いまの季節に飲む、市販のパイナップルジュースでつくる一杯とはひと味違う。

そのときはライムジュースを5mlくらい減らしてもいい。酸味を適度に抑え、テキーラの独特の甘いコクとパイナップルのフレッシュな甘みが、シェークによってプクプクとしたふくらみのある味わいとなる。

つづいて「メキシカン」。こちらはカクテルグラスにおさめるオーソドックスなタイプ。フォーマルになった「マタドール」といえようか。

テキーラとパイナップルジュースが同量で、グレナデンシロップが加わる。微量のグレナデンシロップは風味づけというよりも、あくまで色調のためにある、といった感覚であろう。当然だが、これもフレッシュのパイナップルジュースか市販のジュースを使うかによって味わいのふくらみは異なってくる。

今回、どちらのカクテルもベースを「サウザ ブルー」で楽しんでみた。これはパイナップルの甘みをしっかりと味わいたかったからだ。あえて柔らかい味わいを試してみた。

「サウザ ブルー」はブルーアガベ100%。ザ・アガベともいえるすっきりとしたピュアな高品質(連載41回参照)さ、スタイリッシュさを堪能するには、ほんとうはストレートでじっくりと楽しむほうがいいだろう。

テキーラ感を強調したい場合はミクストという分類に入る「サウザ シルバー」(連載26回参照)がいい。とくに「メキシカン」を飲むとき、テキーラの香味をもっと感じたいと思ったら「サウザ シルバー」をおすすめする。

原料の使用割合によってテキーラはミクスト(Mixtos)とブルーアガベ100%とのふたつのカテゴリーに分けられている。多くのテキーラがミクストであり、ブルーアガベを51%以上使用し、残りはサトウキビの糖蜜や砂糖、ブドウ糖などで補糖したりする。なかでもサウザ社のミクストである「サウザ シルバー」や「サウザ ゴールド」はメキシコ産トウモロコシを使用しており、他社とは異なる独自の高品質な香味づくりにこだわりつづけている。

サウザ家三代がテキーラを世界へと広めた

サウザ社はメキシコ、ハリスコ州グアダラハラ市近郊のテキーラヴァレーにある。創業家三代にわたり、テキーラ業界の発展に尽くしてきた名門である。

創業者は“テキーラの父”とされるメキシコの偉人、ドン・セノビオ・サウザ(1842−1903)。2代目はドン・エラディオ・サウザ(1883−1946)。3代目はドン・フランシスコ・ファビエル・サウザ(1903-1990)。

初代セノビオは現在につながる新しい製法や設備を導入し、ラベルにはじめて“テキーラ”と記した人だ。それまでアガベからつくられる蒸溜酒はすべてメスカル(Mezcal)と呼ばれた。創業の1873年、アメリカで開催された酒類コンペティションにテキーラのラベルを貼って出品する。この年は“テキーラ”と「サウザ シルバー」の誕生年であり、さらにはテキーラがはじめて他国へと渡った記念の年である。

1906年、息子のエラディオ・サウザが跡を継ぐ。樽売りが一般的だった20世紀初頭のメキシコで、瓶詰めによる販売を拡大させたのは彼の功績だ。ヨーロッパにもテキーラを輸出する。彼は名品「サウザ ゴールド」を誕生させた。

1946年からはエラディオの息子ファビエルの時代。グローバル展開を促進させ、自社製品のみならずテキーラというスピリッツを世界に認知させた男である。最大の功績は、メキシコ政府へ働きかけてテキーラの原産地呼称制を1974年に成立させたことだ。当時、世界各地でテキーラの模造品がつくられ、イメージダウンにつながる懸念があった。テキーラの品質と正統性を守るという彼の強い信念がなかったならば原産地呼称は結実しなかった。

これによりメキシコ政府機関がテキーラを管理することになり、規定に即したものだけがテキーラを名乗ることができるようになった。

さあ、テキーラの名門「サウザ」を是非お試しいただき、愛していただきたい。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 川田雅宏
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

ブランドサイト

テキーラ サウザ ブルー
テキーラ サウザ ブルー

テキーラ サウザ シルバー
テキーラ サウザ シルバー

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