19世紀、アメリカの西部開拓時代に、フロンティアで開業した酒場兼食堂。フランス語のサロンsalon(客室)が語源。それを誤まってsaloonと綴ったもの。こういうふうに間違えるぐらいだから、サルーンにはヨーロッパ的な優雅な雰囲気は見られず、カウボーイや賭博師など荒くれ男の集まる、騒然とした場所だったようだ。
リチャード・アードーズの『大いなる酒場』(晶文社)によれば、1879年のコロラド州レッドヴィル町には、銀行4軒、教会4軒、雑貨店10軒に対し、サルーンは120軒もあったという。西部でのサルーンの繁昌ぶりがうかがえる記録だ。どうやら、開拓時代は、町に酒場が出来たのではなく、酒場あるところに町が出来たといえるのかも知れない。
こうして、西部開拓史をいろどったサルーンも、西海岸まで人が住みつき、フロンティアが消えるとともに減少していき、1930年から始まった禁酒法時代にほぼ消滅した。
リチャード・アードーズの『大いなる酒場』(晶文社)によれば、1879年のコロラド州レッドヴィル町には、銀行4軒、教会4軒、雑貨店10軒に対し、サルーンは120軒もあったという。西部でのサルーンの繁昌ぶりがうかがえる記録だ。どうやら、開拓時代は、町に酒場が出来たのではなく、酒場あるところに町が出来たといえるのかも知れない。
こうして、西部開拓史をいろどったサルーンも、西海岸まで人が住みつき、フロンティアが消えるとともに減少していき、1930年から始まった禁酒法時代にほぼ消滅した。
バーボン・ウイスキー製造で採用されている方法に、サワー・マッシュ法がある。前回蒸溜のさいに生じた蒸溜残液(アルコール分が取り除かれた残液、スティレージュと呼ぶ)の上澄みを、新しく糖化させようとするコーンなどの仕込み水に25%ほど加える方法。これにより、糖化条件がよくなり、酵母の栄養が補給され、製品の香味が増すといわれる。また、酵母を培養するさい、はじめに乳酸菌を生育させてPHを下げ、雑菌の繁殖をおさえることがある。これもサワー・マッシュ法と呼ばれる。ちなみに、マッシュはコーンなどに水を加えてトロトロになった状態のものをさす。マッシュ・ポテトのマッシュも、同じ意味。
日本の洋酒メーカー、サントリーが製造するウイスキー。 サントリーの創業者である鳥井信治郎は、ウイスキーの国産化に情熱を燃やし、京都郊外の山崎にわが国初のウイスキー蒸溜所を建設。試行錯誤ののちに1929年、日本初の本格ウイスキー「白札」を発表。ジャパニーズウイスキーの歴史はここに幕を開けた。以後、日本人の舌に合う日本人のためのウイスキーづくりを目指し改良を重ね、1937年発表の傑作「十二年もの」(のちの「角瓶」)を生み出した。第二次大戦後1950年には「トリス」を発売、“うまい、やすい”のキャッチフレーズのもと、ブームを巻き起こす。また同年「オールド」も発売。そのまろやかな味わいは多くの「オールド」ファンを得た。サントリーが生み出したものは、製品だけではない。トリス・ブームや水割りの普及、和食とウイスキーの組み合わせなど、庶民の間に日本独自のウイスキー文化をもたらしてきたのである。現在、サントリーは、1923年に着工した山崎蒸溜所、1973年に竣工した白州蒸溜所の2つのモルト蒸溜所をもち、山崎、白州、近江の3カ所のエージングセラーに計約80万樽の原酒が眠り、それぞれの味わいを育んでいる。
ウイスキーの単式蒸溜機に直接1000度の炎をあてて加熱すること。直火でゆっくり蒸溜することにより、もろみ(ウオッシュ)の1部が高熱でトーストされる結果、香ばしくて力強い味わいのモルト・ウイスキーが溜出する。サントリーでは、白州東蒸溜所と、山崎蒸溜所の1部でこの加熱方式を採用している。
日本産のウイスキーの総称。日本のウイスキーづくりは、鳥井信治郎が開設した山崎蒸溜所からはじまった。そして、国産初の本格的ウイスキー「サントリー白札」の発売以来、伝統的なウイスキーづくりのなかに、日本人の嗜好に合った風味を生かし、「角」「オールド」などを続々と発売、日本のウイスキー時代を築いた。こうしたサントリー・ウイスキーにみられるように、日本のウイスキーは、スモーキー・フレーバーがごく控え目で、マイルドな調和のとれた風味が特徴。しかも、オン・ザ・ロックスでも、水割りにしても味のバランスが崩れない。
英語でマチュレーション・エージング。酒を樽などで長時間貯蔵すること。ウイスキーの場合、蒸溜の終わった原酒をオークなどでつくった樽に入れ、長時間貯蔵する。その間、樽材を通じて不要な成分が空気中に蒸散していったり、徐々に樽に入ってきた空気によって原酒の成分が酸化したり、またエステル化が進んだり、樽材からリグニン、糖類などの成分が溶け出して微妙に影響しあうことによって、ウイスキー独特の香味成分が生成されていく。そのメカニズムはたいへん複雑で、まだ完全には解明されていない。熟成が”時の技”と神秘的に表現されるのはそのためである。
英語でディスティレーション。蒸溜所のことはディスティラリーという。蒸溜とは、液体を加熱し、沸騰点のちがう揮発成分を分離・濃縮すること。ウイスキーの場合、穀物を発酵させたアルコール含有液を、蒸溜機にかけて、アルコール濃度の高い酒をとり出すこと。1気圧のもとで、水の沸騰点は100度だが、酒の主成分であるエチル・アルコールの沸騰点は78.325度。この差を利用して始めに蒸発してくるエチル・アルコールの気体を冷却して、高濃度の酒にするのである。ジャパニーズ・ウイスキーやスコッチ・ウイスキーは、大麦麦芽の発酵液を単式蒸溜機で2回蒸溜して、アルコール度数70度前後のモルト・ウイスキーをつくる。また、穀物の発酵液を連続式蒸溜機で蒸溜して、93度前後のグレーン・ウイスキーをつくる。アイリッシュ・ウイスキーは穀物の発酵液を単式蒸溜機で3回蒸溜して、原酒とする。アメリカやカナダのウイスキーは1部の例外を除いて、連続式蒸溜機で蒸溜する。
酒の”1杯分”のこと。シングルともいう。日本では、ふつう30mlをワン・ショットとする場合が多い。また、ワン・フィンガーもほぼ同量をさす。以上は、アメリカにも通用するが、イギリスでは事情が異なる。南のイングランドでは、45ml、北のスコットランドでは60ml、お隣のアイルランドでは75mlがワン・ショットの量。
ウイスキーの原料となる大麦を、擬人化した呼び方。スコットランドでは、17世紀初めからこういう表現が詩的に用いられていたらしい。ウイスキーに関する優れた詩を残したスコットランドのロバート・バーンズは、1782年、「ジョン・バーリーコーン」というバラードで、この語に新しい生命を吹き込み、ウイスキー・ファンにこの語を浸透させた。
モルト・ウイスキーのうち、同一蒸溜所のモルト・ウイスキーだけを使った製品のこと。蒸溜所の個性がはっきり現われ、個性豊かなウイスキーとなる。
スコットランドでつくられるウイスキーの総称。大麦麦芽を乾燥させるさいに焚くピートの香りが残っているのが特徴。その香りを、スモーキー・フレーバーといい、濃淡はあるが、スコッチのモルト・ウイスキー、ブレンデッド・ウイスキーに共通して溶け込んでいる。そのため、スコッチ・ウイスキーは、個性が強く、重厚な味わいと評される。
酒をそのまま割らずに飲むこと。それをストレートと呼ぶようになったのは、アメリカのケンタッキー州で1855年から起ったという。ウイスキーの場合、アルコール度数が強いので、チェイサーとして水などを添え、それと交互に飲むことが多い。アメリカでは、最近、ストレート・アップ、略してアップともいう。また、イギリスでは、ニートということもある。
アメリカのウイスキーに関してストレート・ウイスキーという場合は、内側を焦がしたホワイト・オークの新樽で2年以上熟成させたウイスキー(コーン・ウイスキーを除く)をさす。アイリッシュ・ウイスキーに関して使われる場合は、単式蒸溜機で3回蒸溜した原酒だけで製品化したものをさす。
アメリカの禁酒法時代にも、もぐり営業をしていた酒場のこと。”こっそりと酒を注文する”というのが、この名称の語源。禁酒法時代後半の1929年、ニューヨークには約32000軒のスピークイージーがあった。禁酒法廃止前年の1932年には、全米に22万軒近くあったという。多くは、洋服屋、床屋、薬局、さらには葬儀屋の奥の一室で営業したり、覗き穴つきの地下室で営業した。ニューヨークの高級レストラン・バーとして今も健在の「21クラブ」(マンハッタン52丁目)の地下の酒蔵(セラー)は、そうしたスピークイージーの超高級店であった。現在もこの店を訪れると、もぐり酒場時代の隠し扉を名残りとして見ることができる。
スコットランドのスペイ川河畔の地の意。地理的にはハイランドに含まれるが、40以上のウイスキー蒸溜所が集中し、そのモルト・ウイスキーは似たような特徴を持つので、近年ハイランドと分けて見られるようになった。端麗なピート香をもち、味わいに落ちついたエレガントさと深みのあるのが特徴。なお、スペイ川は鮭釣りでも有名。
モルト・ウイスキー特有の香味。製造工程中、原料の大麦を発芽させて、ほどよいところで乾燥させ、芽の成長をとめる必要がある。このとき、燃料として使われるピートの独特の燻香が麦芽に焚き込められ、のちにモルト・ウイスキーの快い燻香となる。スコッチと日本のウイスキーを特徴づける香味だが、最近では両者ともあまり強い香りづけをしなくなった。サントリー・ウイスキーの場合、スモーキー・フレーバーをごくおさえ、日本人の嗜好に合った独自の風味をつくりあげている。
スコットランドで、乾杯をするときの掛け声。イングランドの”チアーズ”と同じ。もともと、スラーンジはゲール語で”健康”の意味。乾杯のとき、グラスを唇のあたりまで持ちあげ、”健康を祈って!”とやるわけである。丁寧にやると、スラーンジ・ヴァー、スラーンジ・ヴォルSlainte mhath,Slainte mhor(よき健康、最高の健康)となるが、略してただ単にスラーンジとやることが多い。今でも、スコットランド全土で、ゲール語が喋れない人も、この掛け声で乾杯する。
ウイスキーの蒸溜に関してヘッド(頭)という場合、ポット・スチルから溜出してくる最初の部分の液体をいう。これは、モロミから最初に蒸発してきた成分を冷却機で液体化した液体だが、不快な香味成分を含んでいるため、次に溜出してくるハート(中溜)の液体を受ける前に分離して、熟成には使わない。フォアショットForeshotsともいう。どちらの場合も、語尾にSを付けて複数形にするのがふつうである。