ウイスキーを楽しむにあたっては、色、香り、味の3つがポイント。国産とスコッチ・ウイスキーの場合、香りについては、モルティー、エステリー、ウッディーなどが重要なキーワードになる。モルティーとは、麦芽のもろみに由来する旨味に富んだリッチな香りのこと。エステリーとは、熟成による甘く華やかな香り。華やかさがふくいくと立ち昇れば、フラングラント(芳香性の)と評価され、リンゴや西洋梨のような果実香をもてば、フルーティー(果実香のある)と評価される。ウッディーとは、深い森林を思わせる落ちついた香り。焦げたオーク樽の木香があれば、バーボン様(よう)と評される。バニラ香を連想させる新樽の香り、古樽貯蔵した穏やかでバランスのとれた木香などの溶け込んだウイスキーもある。
これら以外では、ピート香によるスモーキーな香り、上質石けんを連想させるファッティー(脂肪酸に似た香り)、薬くさいメディシナルなどの評価用語がある。今晩、愛する銘柄からこれらの香りを探し出してみては?
蒸溜機から溜出してくる蒸溜新酒(ニュー・ポット)を、樽に詰めて熟成させ、熟成のピークに達したら、直接瓶詰めした場合のアルコール度数のこと。アルコール度数は、熟成期間中に1樽ごとに異なってくる。したがって同一蒸溜所で、同一期間に蒸溜した酒のすべてが、同一カスク・ストレングスで仕上がる可能性はごく少ない。
カナダでつくられるウイスキーの総称。ライ麦を主原料とし、穏やかな香りをもつフレーバーリング・ウイスキーと、とうもろこしを主原料とし、クリーンな味のベース・ウイスキーとをブレンドしてつくられる。味はライトで、香りはデリケート。
木の桶で行う発酵法。ウイスキーの発酵工程において使われる発酵槽には、ステンレスと木桶の2種類がある。ステンレス・タンクと比較すると、木桶には次のような特徴がある。
1.森などに棲む乳酸菌などのミクロフローラ(微生物)が温かい木桶にやってきて、発酵プロセスを複雑にし、もろみに多様な成分を生成させる。
2.保温性にすぐれているので、上面酵母の活性化に有利。
1.森などに棲む乳酸菌などのミクロフローラ(微生物)が温かい木桶にやってきて、発酵プロセスを複雑にし、もろみに多様な成分を生成させる。
2.保温性にすぐれているので、上面酵母の活性化に有利。
ウイスキーの原料となる大麦麦芽を、熱風で乾燥させる設備。日本名を乾燥塔、英名をキルンという。サントリー白州蒸溜所にあるウイスキー博物館は、大正時代、山崎蒸溜所に建設されたキルンを復元したもの。蒸溜所にそびえるその姿は、ウイスキーづくりのシンボルといっていいだろう。
飲酒を禁じる法律。古代バビロニアから、20世紀のアメリカまで、いろいろな時代、いろいろな国で発令されてきた。日本でも、聖武天皇の時代や北条時宗の時代に、禁酒令が出されている。現在、宗教上の理由などで、禁酒を国法にしている国は少なくない。アメリカの禁酒法は、史上稀にみる愚法と嘲笑されたり、高貴なる実験(ノーブル・エクスペリメント)と皮肉られたりしてきた。合衆国憲法修正案第18条による禁酒は、1920年1月17日午前0時1分から発効した。だが、酒の製造、運搬、販売を禁止したものの、飲酒そのものは禁じられなかったので、飲酒する人が逆に増え、アル・カポネなどのマフィアが密造、密輸に暗躍するという皮肉な結果を招いた。そのため、修正案第18条の撤廃を求める憲法修正案第21条が上程され、各州承認の最後に残ったユタ州で1933年12月5日午後3時32分30秒(山地標準時)に批准が成立。これは、東部標準時の5時32分30秒に当たる。こうして、13年10カ月19日に及んだアメリカの禁酒法時代は終結したのであった。
グレーンとは穀物のこと。グレーン・ウイスキーは、その穀物のうちとうもろこしなどの穀物を主原料に、大麦麦芽を加えて糖化、発酵させ、連続式蒸溜機で蒸溜したウイスキーをさす。溜出時のアルコール度数は94.5度ぐらいまで。これが95度以上になると、グレーン・スピリッツに区分される。原料由来のクセが消え、ウイスキーとしてのアインデンティティが失われるからだ。グレーン・ウイスキーは、そのグレーン・スピリッツほどではないが、やはり個性が少なく、ライトで穏やかな性格をもつ。そのため、サイレント・スピリッツと呼ばれることがある。これに対して、モルト・ウイスキーは個性が強いので、ラウド(声高な)・スピリッツと呼ばれる。
ウイスキーの蒸溜に関してテイル(尻尾)もしくはフェインツ(feints)という場合、ポット・スチルから溜出してくるヘッド、ハートのあとの最後の部分をいう。アルコール度数低く、快適でないオイル成分を含み、熟成には向かない部分なので、蒸溜技術者の判断によってハートの部分から分離される。
英語でアンバーamber。蒸溜されたばかりのウイスキーは無色透明であるが、ホワイト・オークの樽に詰められ、貯蔵庫(エージング・セラー)で眠りにつく間に、少しずつこのアンバーの色に色づいていく。これは樽材のホワイト・オークに含まれるタンニン、リグニンなどの成分や、また樽を焦がすことによって変化した樽材の成分が溶け出すことなどによる。