寒い季節、身体を温めてくれるドリンクはさまざまにある。日本には卵酒や生姜湯などがあるが、ヨーロッパの国々ではホットワインがよく飲まれる。
ドイツやオーストリアは「グリューワイン」といって赤ワインにシナモンやカルダモン、ジンジャー、オレンジなどを加えた甘いホットワインが定番だ。似たようなドリンクをスカンジナビアの国々では「グルッグ」、フランスではホットワインは「ヴァン・ショー」と呼ばれている。
北米はどうかというと、ホットワインではないが卵を使った「エッグ・ノッグ」が定番である。もともとはノンアルコールだったようで、ミルクセーキみたいな味といっていい。ブランデーといったアルコールを入れると卵酒となる。バーテンダーがシェークした冷たいのを飲むのもいいが、やはりホットがいい。それにアメリカでは店で飲むというよりも家庭で味わうカクテルだ。スーパーの棚には瓶詰め「エッグ・ノッグ」がたくさん置いてある。
日本のバーではクリスマスシーズンになると「エッグ・ノッグ」を飲ませてくれるところもある。ただし生卵を扱わないバーも多いことを知っておいていただきたい。いろいろ理由はあるが、ひとつには生卵を使うカクテルはそんなに出ない。しかもたまにオーダーが入っても多くは卵白だけを使うカクテルである。
たとえば、わたしの好きなカクテルのひとつに連載第1回で紹介したシャルトリューズ ヴェールをベースにした「サンジェルマン」がある。これも卵白だ。横浜生まれのカクテル「ミリオンダラー」もそう。「ピンクレディ」「クローバー・クラブ」なども卵白である。そして「エッグ・ノッグ」。これは全卵を使う。
今回は「ホット・ブランデー・エッグ・ノッグ」を紹介しよう。材料はブランデー、ダークラム、砂糖、卵、牛乳である。
バーでホットカクテルとしてサービスする場合はかなり手間がかかる。熱い牛乳を入れると卵が凝固してしまうので、まず卵白と卵黄に分け、別々に泡立てる。そしてふたつを合わせて砂糖を加えて再び十分に泡立て、混ぜる。これをグラスに入れ、ブランデーとラムを注ぎ、熱した牛乳を満たしステアするのだ。
ここまでの説明でおわかりの方もいらっしゃるだろう。バーが忙しい時分にオーダーするのは絶対避けなければならない。迷惑がかかる。ホットにしないのであればまだ救いはある。シェークしてグラスに注いで、牛乳で満たせばいい。またシェークではなく、すべての材料をブレンダー(ミキサー)でミックスするバーテンダーもいらっしゃる。