Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

「メーカーズマーク ミントジュレップ」Recipe 1 Maker’s Mark Mint Julep

メーカーズマーク 60ml
シュガーシロップ 1tsp.
ペパーミント生葉 15葉程度
スペアミント生葉 8葉程度
クラッシュドアイス 適量
ビルド/コリンズクラス
冷やしたグラスにミントの葉とシュガーシロップ、メーカーズマークを入れ、バースプーンをミントの葉に軽く押し付けながら材料をなじませる。クラッシュドアイスを詰め、バースプーンでグラスの表面に霜がつくまでステア。最後に新たにクラッシュドアイスを詰め、ミントの葉を飾り、ストローを入れる

「ジムビーム ミントジュレップ」Recipe 2 Jim Beam Mint Julep

ジムビーム 60ml
シュガーシロップ 1tsp.
ペパーミント生葉 15葉程度
スペアミント生葉 8葉程度
クラッシュドアイス 適量
ビルド/ジュレップカップ
メーカーズマーク・ミントジュレップと同様の処方

原料由来の香味特性がカクテルにも生きる

スイート&クールな「ミントジュレップ」を紹介しよう。6月になると状態のいいミントが市場に登場してくる。これから熱射に見舞われる季節になっていくが、ほどよい甘さのあるクールな刺激が涼を呼び、火照った身体をほぐしてくれる。

現在ではバーボンウイスキー、またはライウイスキーをベースにするのが一般的だ。わたしはバーで、ベースを「メーカーズマーク」に指定してオーダーすることが多い。

アメリカンウイスキーのなかでも、「メーカーズマーク」はクラフトの先鞭をつけたブランドといっていいだろう。“最高の原料を使い、できる限り人の手で少量生産する”。このポリシーを守り続けるために、“自分たちの目が行き届き、つねに厳選、吟味できる環境を保つ”ことに徹している。

原料のとうもろこし、小麦は蒸溜所近郊の契約農家が栽培した最高品質のものを使用。特長ともいえる、ふくらみのあるやわらかで繊細な香味を育む重要な役割を担う小麦はSoft Bread Winter Wheatという冬小麦のマイナー品種にこだわっている。麦芽は六条大麦。原料穀類配合比はとうもろこし70%・小麦16%・麦芽14%である。

プロセスウォーター(仕込み水)は蒸溜所の敷地内にあるスプリング・フェド湖の湧き水。他の蒸溜所にはない好立地であり、石灰岩(ライムストーン)に磨かれた良質で清冽なライムストーンウォーターで仕込んでいる。

こうした原料から生まれる香味には気品が漂う。オレンジ、ハチミツ、バニラといった香り。味わいはなめらかで、バニラ様に加えて繊細な複雑味がある。しなやかさがありながらふっくらとした小麦由来の温かな甘みは「メーカーズマーク」が抱いた特別ともいえるものだ。

この「メーカーズマーク」をベースにしたミントジュレップも特別なもので、スイート&クールな味わいといえよう。クセになる味わいでもあり、香味特性が生きたふくらみのあるしなやかな甘さにミントが軽快なタッチの爽やかさをそよがせる。

飲みながら、いつもアタマのなかでジャズが流れる。クールなジャズピアノの音色、わたしはキース・ジャレットのプレイをイメージしてしまう。

もうひとつ、「ジムビーム」ベースの「ミントジュレップ」もおすすめしたい。よりすっきりとした清涼感を求めているとき、わたしはこちらをオーダーすることがある。

ふくよかさのある「メーカーズマーク」ベースとはタッチが異なり、ほのかなスパイシーさと甘さのある口当たりにミントが放つ刺激が心地よい。とうもろこしを主体としながらも重要な脇役である小麦とライ麦との違いともいえるだろう。

バニラ様の甘みとともに独特の香ばしさとライ麦由来のスパイシーな感覚が「ジムビーム」にはあり、それが「ミントジュレップ」の爽快な清涼感につながっているようだ。こちらはジャズドラム、アート・ブレイキーが刻むビートが似合う。

どちらのベースも味わい深い。是非、飲み比べていただきたい。

ケンタッキーのジュレップカップへのこだわり

さて、こだわりはじめると、「ミントジュレップ」をどんなグラスで飲むかという点も気になってくる。使われるものとして、一般的なタンブラー、円筒形の背の高いコリンズグラス、ビールにも使われるゴブレット、そしてジュレップカップもある。

こちらも好みの問題であろう。わたしはコリンズグラスを好む。そして、ときにジュレップカップでつくってもらうと、とても新鮮な気持ちになる。

ジュレップの語源やミントジュレップの簡単な歴史に関しては『第21回サマー・タイム・ジュレップ』をご一読いただきたいのだが、グラスに関しては触れていなかった。

バーボンウイスキーの故郷ケッタキーでは、シルバーかピューター(錫/すず)のジュレップカップを使わなくてはいけない、と頑なに言い張る人たちがいるらしい。19世紀の文献に、娘の嫁入り道具としてジュレップカップを持たせるのは当たり前のこと、と書かれたものもあり、現在でも一部ではそうした風習を守っている家族もいるという。

ケンタッキーではいかに「ミントジュレップ」がポピュラーなドリンクであるかを物語っている。

とはいえ、かつてはベースとなる酒はさまざまだった。ワイン、ブランデー、ラム、ライウイスキーなど幅広い。ワインベースの場合、大きなパンチボウルにワイン、オレンジやストロベリー、レモンなどのジュースを入れ、さらにフルーツを浮かべ、かち割り氷で冷やし、そしてミントの葉をあしらうといったものだ。

ジュレップカップはボウルから取り分けて飲むために重宝したのである。

バーボンベースがポピュラーになっていく発端は1875年、ケンタッキー州ルイビルにチャーチルダウンズ競馬場が開場したことにある。5月17日に第1回ケンタッキーダービーが開催された。開会式の際、クラブハウス内で招待客にバーボンベースの「ミントジュレップ」がふるまわれた。

競馬場の裏手にはミントが生い茂っていたといわれており、好都合だったのである。

そこから年月を重ね、1938年にケンタッキーダービーのオフィシャルドリンクとなり、バーボンベースの「ミントジュレップ」の認知が高まり、スタンダードとなっていったようだ。

では、スイート&クールな「ミントジュレップ」を楽しみながら、暑い季節を乗り切っていただきたい。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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