スイート&クールな「ミントジュレップ」を紹介しよう。6月になると状態のいいミントが市場に登場してくる。これから熱射に見舞われる季節になっていくが、ほどよい甘さのあるクールな刺激が涼を呼び、火照った身体をほぐしてくれる。
現在ではバーボンウイスキー、またはライウイスキーをベースにするのが一般的だ。わたしはバーで、ベースを「メーカーズマーク」に指定してオーダーすることが多い。
アメリカンウイスキーのなかでも、「メーカーズマーク」はクラフトの先鞭をつけたブランドといっていいだろう。“最高の原料を使い、できる限り人の手で少量生産する”。このポリシーを守り続けるために、“自分たちの目が行き届き、つねに厳選、吟味できる環境を保つ”ことに徹している。
原料のとうもろこし、小麦は蒸溜所近郊の契約農家が栽培した最高品質のものを使用。特長ともいえる、ふくらみのあるやわらかで繊細な香味を育む重要な役割を担う小麦はSoft Bread Winter Wheatという冬小麦のマイナー品種にこだわっている。麦芽は六条大麦。原料穀類配合比はとうもろこし70%・小麦16%・麦芽14%である。
プロセスウォーター(仕込み水)は蒸溜所の敷地内にあるスプリング・フェド湖の湧き水。他の蒸溜所にはない好立地であり、石灰岩(ライムストーン)に磨かれた良質で清冽なライムストーンウォーターで仕込んでいる。
こうした原料から生まれる香味には気品が漂う。オレンジ、ハチミツ、バニラといった香り。味わいはなめらかで、バニラ様に加えて繊細な複雑味がある。しなやかさがありながらふっくらとした小麦由来の温かな甘みは「メーカーズマーク」が抱いた特別ともいえるものだ。
この「メーカーズマーク」をベースにしたミントジュレップも特別なもので、スイート&クールな味わいといえよう。クセになる味わいでもあり、香味特性が生きたふくらみのあるしなやかな甘さにミントが軽快なタッチの爽やかさをそよがせる。
飲みながら、いつもアタマのなかでジャズが流れる。クールなジャズピアノの音色、わたしはキース・ジャレットのプレイをイメージしてしまう。
もうひとつ、「ジムビーム」ベースの「ミントジュレップ」もおすすめしたい。よりすっきりとした清涼感を求めているとき、わたしはこちらをオーダーすることがある。
ふくよかさのある「メーカーズマーク」ベースとはタッチが異なり、ほのかなスパイシーさと甘さのある口当たりにミントが放つ刺激が心地よい。とうもろこしを主体としながらも重要な脇役である小麦とライ麦との違いともいえるだろう。
バニラ様の甘みとともに独特の香ばしさとライ麦由来のスパイシーな感覚が「ジムビーム」にはあり、それが「ミントジュレップ」の爽快な清涼感につながっているようだ。こちらはジャズドラム、アート・ブレイキーが刻むビートが似合う。
どちらのベースも味わい深い。是非、飲み比べていただきたい。