ちょっと気になる俳句を見つけた。大人にはこんな時間もある。わたしには遠い記憶として、あるような、ないような。
『まどろみて 待つや柚子湯に ゐるひとを』
これは、日野草城(ひのそうじょう/1901-1956)という俳人の句である。こういう句もあるのか、と素人のわたしは新鮮だった。なんだかドキドキしたのである。
草城は、昭和初期に活躍した人のようだが、艶かしさのある句も多いらしい。その作風を“女性礼賛”と解説した文献もあった。
草城の句を目で追うと、柚子湯、の文字が効いている。日本の冬に出会う、和の柑橘の独特の香りがふんわりと感じられるのだ。そして、なんともいえない幸福な温かみがある。柚子だからハマるのである。
冬至に柚子湯に入る習慣は銭湯が広まっていった江戸時代にはじまるらしい。客寄せのために湯船に柚子を浮かべたらしい。“1年中風邪を引かない”との言い伝えはいつ頃からなのかわからない。効能など解明されていない時代になんとなく身体に良さそうだ、との認識があったのだろう。
中国揚子江原産の柚子が、奈良、飛鳥という時代の日本に渡来したとき、まずは薬用として栽培されたといわれている。果肉は食材としては不向きであり、薬効のある果実のイメージが定着していたのかもしれない。
江戸時代の人たちは、冬至を湯治(とうじ)に、柚子を融通(ゆうづう)にかけ、“湯に入り、融通よくまいりましょう”と語呂合わせで柚子湯に親しんだといわれてもいる。
さて、柚子の香にあふれたカクテルの話をしよう。
この冬いちばんのおすすめホットカクテルである。「ジャパニーズクラフトリキュール奏Kanade」シリーズの「奏<柚子>」と、「ジャパニーズクラフトジンROKU」との1対1をお湯で割るシンプルなもの。飲む柚子湯といえるだろう。
このクラフトリキュールとクラフトジンの相性が悪いはずはない。
まず「奏<柚子>」。フレッシュな感覚にあふれた、柑橘系の爽やかな香りが心地よい。味わいは繊細で、酸味と苦味が見事に調和している。国産柚子の果実、果皮の特性が十分生かされた原料酒に、柚子果汁も加えてブレンドした贅沢なものだ。
そして「ROKU」というクラフトジンは、ジュニパーベリーをはじめとしたトラディショナルなボタニカルの香味を抱いたジン原料酒に、6種の和のボタニカル原料酒をブレンドしている。
和のボタニカルには四季が香る。春の八重桜、大島桜の葉。夏は煎茶と玉露。秋は山椒の実。冬は、そう、和の柑橘系、柚子の皮である。「ROKU」にも柚子がしっかりと潜んでいるのだ。
この1対1のお湯割りは、柚子の柔らかい酸味とみずみずしさを秘めた「ROKU」が、「奏<柚子>」の優しい甘みと繊細な風味をうまく受け止めて調和している。