Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

ジン・フィズ Recipe 1 Gin Fizz

ビーフィータージン
47度
45ml
レモンジュース 15ml
砂糖 2tsp.
ソーダ水 適量
シェーク/タンブラー
ソーダ水以外の材料をシェークしてタンブラーに注ぎ、氷を加え、冷やしたソーダ水を満たす

グリーンティ・フィズ Recipe 2 Green Tea Fizz

奏<抹茶> 40ml
レモンジュース 20ml
砂糖 1tsp.
ソーダ水 適量
シェーク/タンブラー
処方は、上記「ジン・フィズ」と同様

ピーチ・フィズ Recipe 3 Peach Fizz

奏<白桃> 40ml
レモンジュース 20ml
砂糖 1tsp.
ソーダ水 適量
処方は、上記「ジン・フィズ」と同様

1882年以前に存在していたカクテル

カクテル「ジン・フィズ」を取り上げようとして、深い森に足を踏み入れてしまった。古くに誕生したカクテルで、現在はマイナーになりつつあるけれど、美味しいよ、と伝えたい気持ちだけであった。ところが。

Fizzとはソーダ水の炭酸ガスが弾ける音からきた擬声語だといわれている。シュッ、という音がどうしてフィズとして捉えられるのか疑問なのだが、それよりもまったくもって余計な発見をしてしまったのだ。


これまで、1888年にアメリカはニューオーリンズの『インペリア・キャビネット・サロン』のヘンリー・ラモスによって「ジン・フィズ」は誕生した、と伝えられてきた。彼がレモン・スカッシュにジンを加えた、という文章を目にすることが多い。

先日、いくつかの古いカクテルブックを眺めていた。そのひとつに1882年に刊行された、ハリー・ジョンソンというワシントンD.C.のバーテンダーが著した『バーテンダーズ・マニュアル』があった。久しぶりの衝撃だった。この本にいろいろなフィズが掲載されているではないか。

卵黄を使った「ゴールデン・フィズ」、卵白を使う「シルバー・フィズ」、それに「ウイスキー・フィズ」や「モーニング・グローリー・フィズ」といったレシピも掲載されている。そして当然「ジン・フィズ」も紹介されている。ヘンリー・ラモス創作以前に存在していたカクテルなのだ。

ハリー・ジョンソンの本では誕生経緯を読み取ることはできない。極めて自然なレシピ紹介で、1882年にはスタンダードであったと言わざるを得ない。ならば、といまわたしは1870年代のカクテルブックを探っているが、現段階では見つけられていない。

発祥がわかったからといって、だからなんだ、ではある。美味しければいいじゃん、である。しかし深い森に足を踏み入れてしまったのだ。面倒だが、しばらくは古い文献を探りつづけることになるだろう。

とりあえずハリー・ジョンソン『バーテンダーズ・マニュアル』1882年版のレシピをお伝えしよう。

大きめのグラス(Use a large bar glassとある)に砂糖を1/2テーブルスプーン、3〜4ダッシュのレモンジュースを入れる。そこにシェーブドアイス(薄く削った氷。日本では、かき氷的なもの)をグラス半分ほどの量を詰め込み、さらに1/2ワイングラス分のオールドトムジン(加糖されたジン)を注ぎ、ステアする。最後にソーダ水を満たす。

現在のレシピと明らかに異なるのは、シェークをしない、という点だ。以前、親しいバーテンダーがわたしにしてくれた話を思い出した。彼は、戦前からのバーテンダーだった大先輩(すでに鬼籍に入られている)たちに、「昔、ジン・フィズはシェークをしなかった」と聞かされたという。その証が1882年のカクテルブックにあった。では、いつ頃からシェークになったのか。気になりはじめるとキリがない。

現在はドライジン、レモンジュース、砂糖をシェークして、ソーダ水で満たすというつくり方である。味わいのほうは語るまでもないが、スッキリとしたキレのいい甘酸っぱさがスーッと口中を滑っていく。ベースには柑橘系のキレ味のいい「ビーフィータージン」がふさわしい。

グリーンティやピーチのフィズも美味しい

しばらく森から抜け出すとしよう。日本では1960年代後半にバーでフィズブームが起こっている。ジンベースだけでなくブランデーやラムといったスピリッツをベースにしたもの、グリーンティ、カカオ、バイオレットといったリキュールベースのフィズも流行した。

1967年にサントリーは瓶詰カクテル「ジン・フィズ」「カカオ・フィズ」「バイオレット・フィズ」3種(ソーダ水で3倍程度希釈)を発売し、大人気となった。当時、コンパと呼ばれる大型店や軽食も出すスナックといった業態が流行しはじめており、そういった店でとても重宝された。

さらには1974年に200ml缶入り「サントリーポップカクテル」を発売。こちらは「ジン・フィズ」の他に「ジン・トニック」「ウイスキー・コーラ」の3種であったが、それまで低アルコール市場はビールしかなかったところにアルコール度数8%の缶入りの登場は新鮮だった。ロックンロールを聴きながら育った団塊の世代が飲酒年齢に達する時代を迎え、彼らを中心に新感覚飲料として受け入れられる。何よりも、現在のRTD(Ready to Drink)の起源ともいえる歴史的製品だった。


いま、「ジン・フィズ」を飲む人をあまり見かけなくなった。この夏はレモンの爽やかさが弾ける味わいを楽しんでいただきたい。美味しさ、飲みやすさを実感するはずだ。他にも2品紹介しておこう。リキュールの「奏Kanade」を使用したフィズである。

かつて人気のあった「グリーンティ・フィズ」。京都宇治産の抹茶浸漬酒と宇治産玉露浸漬酒の芳醇で気品あふれる「奏<抹茶>」をベースにする。

なんだか懐かしいような、よく知っている味わいなのだ。親しいバーテンダーがわたしに「飴でしょう。抹茶キャンディ」と言った。まさに。この「グリーンティ・フィズ」は、21世紀に再び人気となって欲しい。

もうひとつは「ピーチ・フィズ」。こちらは「奏<白桃>」をベースにする。白桃のフレッシュ感とコクを抱いたリキュールとレモンジュースが溶け合って、ネクターのようなみずみずしい果実味があり、誰でも好きになる味わいといえるだろう。

いつもの「ジン・トニック」もいいけれど、フィズも是非どうぞ。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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ビーフィーター ジン
ビーフィーター ジン

クラフトリキュール 「奏 Kanade」
クラフトリキュール
「奏 Kanade」

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