緑が美しく映える季節。これから太陽は天中へとより高く上がり、射るように降りそそぐ熱に誘われて人々は冷えたグラスの輝きに憩う。
今回はクールなスタンダードカクテルを紹介しよう。しかも本来のベーススピリッツを「ジャパニーズクラフトウオツカHAKU」に替えて楽しんでみた。田植えのシーズンから米が想い浮かび、原料に国産精白米を100%使用した個性的な香味がどんな表情を見せるか試してみたかったのだ。
清涼感あふれる「HAKU」ベースのカクテルをさまざまに味わったなかから、とても気に入った2品を紹介しよう。
まず「カイピロスカ」。ブラジルの「カイピリーニャ」(Caipirinha)というナショナルドリンクといえるポピュラーなカクテルのアレンジである。
「カイピリーニャ」のベースにはカシャーサというサトウキビを原料としたブラジル特産スピリッツを使う。早い話、ラムといえるのだが、ブラジル人を前にしてラムと口にしてはいけない。怒られる。このカシャーサに替えてウオツカをベースにすると「カイピロスカ」。北欧では1990年代初めにはポピュラーになっていた。
さて、「カイピロスカ」のベースにする「HAKU」は、麹という古くから日本の酒づくりに伝わる製法を取り入れた革新的ウオツカであり、単式蒸溜器と連続式蒸溜機を使い分け、仕上げの濾過処理に白樺炭と竹炭などを併用して生まれる香味は、他にはない独創性にあふれている。
ウオツカ特有のクリアな感覚のなかに、米由来の吟醸香のような華やかな香りがある。味わいにはまるみのあるほのかな甘さとコクとともに、フルーティーさも漂う。発売時に、このクラフトウオツカの香味特性はどんなカクテルと合うのか、といろいろと試したことがあった。
そのときに、シンプルなカクテルである「ウオツカ・リッキー」の味わいを気に入ったのだった。ライムジュースとソーダ水、そして「HAKU」。他のウオツカでは感じられない、ふくよかな口当たりにライムの酸味がしなやかに調和していた。このときの記憶が、「カイピロスカ」のベースにしてみたら面白いかもしれないと想わせたのだ。
さて、「HAKUカイピロスカ」。ロックグラスにカットしたライムと少量の砂糖を加えてクラッシュドアイスを詰め、「HAKU」を注ぐ。添えられたマドラーでライムを押しつぶしながら酸味を好みの加減に調節しながら飲むのだが、旧知のバーテンダーはライムだけでなくレモンも加える。
どうやら、ふっくらとしたまるみのある味わいに酸味を強調することで清涼感が増すようである。たしかに、ライムとレモンをグイグイと押しつぶしながら飲むと、よりすっきりとした味わいになる。クラッシュドアイスを口に入れてガリガリと噛み砕き、楽しみながら飲むことをおすすめしたい。
正直に言うと、酸味と甘みのバランスが良すぎて、口当たりが極めてスムース。調子に乗って飲んでしまうから気をつけなければいけない。
きっと誰もが、すぐにもう一杯となることだろう。