チーズとワイン

気軽にマリアージュ

カジュアルなワインとカジュアルなチーズの相性を
担当 柳原が独断で評価します

フライパン チーズフォンデュ

第84回 2021年12月

フライパン チーズフォンデュ

チーズの味わい

寒くなると恋しくなるチーズフォンデュ。専用の鍋があるとそれっぽいですが、そうでなくても味は特に変わらないので、今回は小さめのフライパンでつくってみました。あっという間に出来ますが、味は本格的ですよ!

準備するもの
グリュイエールチーズ100g、エメンタールチーズ100g(好みで他のチーズでも良い)、コーンスターチ大さじ1、白ワイン100ml、バゲット1本、にんにく1片、じゃがいも3個、ブロッコリー1/4個、塩・こしょう適宜、好みでキルシュ少々

つくり方
(1)ブロッコリーとじゃがいもに火を通しておく(電子レンジでOk)。バゲットは一口大に切る
(2)チーズを小さめに刻み、コーンスターチをまぶす
(3)お鍋に切ったにんにくの断面をこすりつけ、そこに白ワインを注いで加熱を始める。少しずつ分けて(2)のチーズを投入して溶かし、なめらかなフォンデュにする。塩・こしょうで味をととのえる。(好みでキルシュを入れる)
(4)(3)を温めつつ、準備した(1)をつけながら食べる。


よく合うワイン

フレシネ ブリュット ヴィンテージ レセルバ 2017

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

グレープフルーツ フランスパン 蜜リンゴ

色々な要素に共通点が見られる、一体感のある組み合わせ。

フレシネのヴィンテージ・カヴァ。良年の良いぶどうのみを原料として生産される1ランク上のカヴァです。マカベオ50%、パレリャーダ35%、チャレッロ15%のブレンド、2年以上の瓶熟成期間を経たコクのある味わいが特長です。製品名にはブリュットと書かれていますが、実際には一切の甘さの添加を行わないブリュット ナチュール(ドサージュ0g/L)です。ブリュット ナチュールを実現するために、熟度の高い上質なぶどうが使用されています。
フォンデュと合わせるとワインの味わいがグッと凝縮感を増す感じがありました。ドサージュゼロの極辛口のワインですが、チーズのまろやかさによってその厳しさが和らぎ、本来持っている密度高く、力強い果実味が遺憾なく発揮される感じになります。フランスパンの香ばしさとカヴァの熟成によるトーストを思わせる風味、フォンデュの滑らかさとこのワインの製法から来るイースト分解の滑らかさなど、気持のよい一体感が感じられるペアリングとなりました。

登美の丘 甲州 2019

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

夏みかん 黄色いリンゴ 食パン

シュール・リーとパンの相性バッチリ。厚みの出る組み合わせ

登美の丘ワイナリーの自園産甲州100%使用。通常の甲州よりも完熟を狙って遅摘みする事が特徴で、甲州の爽やかな和柑橘のタッチを持ちながら、凝縮感や厚みも感じさせる味わいです。著名なワインライターが「甲州はシャスラ(スイスを代表する白ぶどうでチーズフォンデュの最良の友)と似ている」と書いている文章を読んで以来、チーズフォンデュと甲州は一度試してみたいなと思っていました。
フォンデュと合わせると、パンの味わいがグッと力強く前に出て来ました。甲州は比較的軽やかな味わいであるため、旨味を強めるためにシュール・リーという製法を採用する事が多いです(このワインはさらに2割ほど樽熟成をしています)。このリーは澱の事で、澱は酵母(パンを焼く酵母と基本同じ)の死骸が多くを占めますので、この製法でつくったワインはパンとの相性が良いと思います。さらにチーズによってワインのクリーミーな厚みも引き出されて、狙い通りの良い組み合わせになったと思います。最後に甲州種の持つフェノリックと言われるほろ苦さが少し強調されるので、苦みが苦手な方は避けた方が良いかも知れません。

ロス ヴァスコス シャルドネ 2021

独断!マリアージュおすすめ度

味わい

アロマ

洋梨 パイナップル みかんの花

微妙にピッタリ来ない、もどかしさのある組み合わせ。

ロス ヴァスコスはドメーヌ バロン ド ロートシルト社(ボルドー・メドック地区の格付け1級筆頭のラフィット ロートシルトを傘下に持つ名門中の名門)が1988年からチリのコルチャグア ヴァレーで経営するワイナリー。ロス ヴァスコスとはバスク人たちという意味で、1750年にスペインのバスク地方からの移民がワイナリーを設立した事から名付けられました。このシャルドネは一切の樽を使わない果実を素直に表現したスタイルです。
フォンデュと合わせると、ワインの果実味の豊かさが一際強調される感じがありました。パイナップル、チェリモヤ、マンゴー、スターフルーツなどのトロピカルフルーツを思わせる風味が口の中でドンと爆発する感じです。チーズの乳の甘さはそこからゆっくり広がっていく印象で、少しタイムラグというかピッタリになりきれないもどかしさみたいなものがある様に思います。じゃがいもだと少し野暮ったい感じが出てしまい、ブロッコリーだとワインの方が少し強い、とマイナス要素があるわけではないのに、なかなかしっくり来ない組み合わせになってしまいました。

しっとりとした旨味と熟成感、要素がガッチリ結びつく組み合わせ。

創業1731年の全ブルゴーニュの中でも老舗中の老舗と言って良い大メゾン、ブシャール ペール エ フィス社。土地の味わいを表現する事に定評があり、「テロワールの確かな指標」とも言われています。2019年のブルゴーニュ地方は豊かな果実とこの地方らしい透明感のある酸を併せ持った素晴らしい年で、掛値なしのグレートヴィンテージと言って良いかと思います。ベースのこのブルゴーニュでも、とても美味しいですよ。
フォンデュと合わせると、ワイン単体では見えていなかった、奥行の部分がしっかりと姿を現してきました。ラズベリーやさくらんぼなどの赤い果実を思わせるフレッシュな姿に加えて、樽熟成から来るトーストやシナモン、クローブなどのスパイスのタッチ、果実の熟度の高さを示すほのかな松脂の樹脂感などが出て一気に複雑になります。フォンデュ側もパンとチーズの味わいがグッと濃くなる感じで、相性の良さが伝わって来ます。チーズフォンデュと言うと軽やかな白ワインを合わせる印象が強かったのですが。じゃがいもと合わせると強さが、ブロッコリーと合わせると涼やかさとしなやかさが出るなど、どの素材とも良い相性で正直ビックリの好相性となりました。余韻の心地よさも特筆ものです。

チャレンジまとめ

寒くなると鍋が恋しくなってきます。チーズの鍋と言えばやはりチーズフォンデュという事で、今回は直球のレシピの王道フォンデュです。チーズフォンデュは専用の鍋とフォーク(あの柄の長いやつ)があまりに有名ですが、正直そんなに頻繁に食べるメニューでも無いので、よほど棚に余裕が無いと家にフォンデュセットは無いですよね。でも大丈夫。小さめのお鍋であれば、ミルクパンでも、少し深めのフライパンでも、どんなお鍋でも大丈夫です。味は特に変わりません。
キリっと冷やした白ワインと熱々のフォンデュと言うのが定番ですが、スパークリングも風味がピッタリでしたし、口の中で複雑になっていく赤との相性も意外で楽しめました。
最後に一つだけ、チーズフォンデュを食べつつ、冷えた水を飲むとチーズが胃の中で固まって、苦しい思いをすることになりますのでご注意を。

柳原 亮 (やなぎはら りょう)

野菜と穀物(ライ麦パンが好き)、豆腐が主食の草食系。
ヤギ乳製チーズをこよなく愛する、通称ヤギ原。
年間3,000種類超のワインをテイスティングし、お小遣いの総てをワインに投じる徹底したワイン愛好家。

(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ
NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
第9回(2013年)全国ワインアドバイザー選手権大会準優勝

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