Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

織部しぐれ Recipe 1 Oribe Shigure

まろやか完熟梅酒 30ml
ジャパニーズクラフト
ジンROKU
15ml
サントリーわつなぎ
ゆず
15ml
レモンジュース 2tsps.
抹茶 1/2tsp.
ブレンダー/ソーサー型シャンパングラス
クラッシュド・アイス1カップとともに材料をバー・ブレンダー(ミキサー)でブレンドし、グラスに移し入れる。短いストローを添える

バナナ・スランバー Recipe 2 Banana Slumber

ジャパニーズクラフト
ウオツカHAKU
2/3
ヘルメスバナナ 1/3
ライムジュース 2tsps.
シェーク/カクテルグラス
シェークしてカクテルグラスに注ぐ

味わいのベースは梅酒

本格派の大人のかき氷が誕生した。緑色しているから、この連載でしばらく取り上げている抹茶を使ったカクテルだと推測される方もいらっしゃるだろう。このカクテルもまた、山崎蒸溜所が今年100周年を迎え、山崎の地と千利休の歴史的関わりに導かれたものである。

136回「ROKU抹茶エスプレッソ」、そして前回138回の「バナナ・リーフ・シェイド」につづく抹茶シリーズ第3弾である。

このカクテル、レシピを伝えられずに飲んだならばきっと驚かれることだろう。色は緑ながら、実は梅酒味なのだ。緑色した梅酒味のフローズン・カクテルで、抹茶の味わいは密やかながらとてもいいアクセントになっている。とはいえ、そんなに単純な味わいでもない。

レシピをご紹介しよう。「まろやか完熟梅酒」、「ジャパニーズクラフトジンROKU」にシロップの「わつなぎ ゆず」、さらにはレモンジュースと抹茶をクラッシュド・アイスとともにバー・ブレンダー(ミキサー)でブレンドしてフローズンに仕上げる。

まず「まろやか完熟梅酒」はなかなかイケてる味わいなのだ。その名の通り“まろやか”で“完熟”した味わいを実感できる。完熟した梅の浸漬酒だけでなく、ブランデーで仕込んだ浸漬酒を隠し味としてブレンドしてあるらしい。値段は驚くほどリーズナブルで、わたしは自宅の冷蔵庫に常備している。

食事の邪魔をしないし、ちょっとした気分転換にもってこい。

抹茶ありきの創作で梅酒をぶつけた理由は、サントリーの梅のリキュールづくり60周年を祝福する意味もある。社名が寿屋からウイスキーのブランド名であるサントリーとなった1963年、「ヘルメス クレーム・ド・コーバイ」が発売されたのがはじまりであった。

現在は山崎蒸溜所貯蔵梅酒シリーズのプレミアムなものへの人気が高まっているが、今回はポピュラーな「まろやか完熟梅酒」を選んだ。

さて、このフローズン・カクテルの味わい。

「ROKU」はジュニパーベリーをはじめとしたジン原料酒に、6種の和のボタニカル(八重桜の花、大島桜の葉、煎茶、玉露、山椒の実、柚子の皮)が潜んでいる。「ROKU」の和の感覚が梅酒と合うだけでなく、柚子シロップとも当然相性はいい。

そして「ROKU」が厚みのあるアルコール感で味わい全体を支え、シロップが甘さとしてのコクを生み、さらにはまろやかな梅酒の甘酸っぱさ、とくに酸味をうまく引き出しているようだ。そしてレモンジュースは爽やかさをもたらす。じっくりと味わえば、それぞれの素材が見事に響き合っていることがわかる。そして抹茶のニュアンスがしなやかに感じられる。

それぞれの個性が見事に溶け合いながら洗練された梅酒の味わいを生み、大人のかき氷の世界を創り出している。

日本の伝統色、織部

カクテル名は「織部しぐれ」とした。戦国武将、古田織部正(ふるたおりべのかみ/1544-1615/古田重然/ふるたしげなり)に由来するものだが、最初にイメージしたのはカクテルの色である。

日本の伝統色のひとつに“織部”(おりべ)がある。品のある深い緑色をしている。これは焼き物の織部焼が元になっていて、古田織部が故郷の美濃国(現在・岐阜県土岐市)の窯元につくらせたものだ。自然界の美しい緑青色を器に再現するために、“緑釉”という釉薬を用いている。

古田織部という人物に関しては歴史や陶芸に精通した方をはじめとして詳しい方がたくさんいらっしゃることだろう。また織部を主人公として描かれた漫画『へうげもの』(山田芳裕作)が人気を博し、10年ほど前にはアニメ化されてもいる。

それでも一応、人物紹介をしておく。信長、秀吉に仕えた武将であり、千利休の高弟で優れた茶人でもあった。利休亡き後、侘び茶の精神を継承しながらも武人としての気質からか自由で斬新な独自の感性で茶の世界を発展させた。とくに織部焼は“破格の造形”とも称されている。

その気風は焼き物に留まらず、茶室建築、庭園づくりなどにも発揮され、さまざまに影響を与えている。桃山文化のリーダー的存在となり、陶芸家で書家の本阿弥光悦、茶人で造園家の小堀遠州らの師でもあった。

カクテル名に話を戻そう。伝統色の織部、焼き物にある青織部という色をイメージして、千利休と古田織部との茶の結びつきへとつなげたのである。

時雨(しぐれ)は、夏の季語“青時雨”(あおしぐれ)と掛けたものだ。雨あがりに、青葉から滴り落ちる水滴の様子をたとえた言葉である。そしてかき氷の“しぐれ”も少し意識した。

 

最後に、前回138回で文中だけの紹介であった「バナナ・スランバー」の写真とレシピを掲載した。

再びカクテル名の話をすると、このカクテルに「バナナ・マティーニ」とネーミングする人もいるであろう。

なんでもかんでもマティーニとつけるのをわたしは避けている。マティーニを神格化するのは勝手だが、なんの面白味もない。名づけた時点で、マティーニには劣る、と言っているようなものだし、“もどき”を創ろうとした訳でもないはずだ。

やはりレシピが生む味わい、そして色やスタイリングからイメージすることが第一ではなかろうか。さらには誕生の経緯から導かれたり、考案者の意図が込められたカクテル名をつけるべきだと思う。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 児玉晴希
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

ブランドサイト

ジャパニーズクラフトジン「ROKU」
ジャパニーズクラフトジン
「ROKU」

まろやか完熟梅酒
まろやか完熟梅酒

ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」
ジャパニーズクラフト
ウオツカ「HAKU」

ヘルメス バナナ
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スリー・ミラーズ
第136回
ROKU抹茶
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