本格派の大人のかき氷が誕生した。緑色しているから、この連載でしばらく取り上げている抹茶を使ったカクテルだと推測される方もいらっしゃるだろう。このカクテルもまた、山崎蒸溜所が今年100周年を迎え、山崎の地と千利休の歴史的関わりに導かれたものである。
136回「ROKU抹茶エスプレッソ」、そして前回138回の「バナナ・リーフ・シェイド」につづく抹茶シリーズ第3弾である。
このカクテル、レシピを伝えられずに飲んだならばきっと驚かれることだろう。色は緑ながら、実は梅酒味なのだ。緑色した梅酒味のフローズン・カクテルで、抹茶の味わいは密やかながらとてもいいアクセントになっている。とはいえ、そんなに単純な味わいでもない。
レシピをご紹介しよう。「まろやか完熟梅酒」、「ジャパニーズクラフトジンROKU」にシロップの「わつなぎ ゆず」、さらにはレモンジュースと抹茶をクラッシュド・アイスとともにバー・ブレンダー(ミキサー)でブレンドしてフローズンに仕上げる。
まず「まろやか完熟梅酒」はなかなかイケてる味わいなのだ。その名の通り“まろやか”で“完熟”した味わいを実感できる。完熟した梅の浸漬酒だけでなく、ブランデーで仕込んだ浸漬酒を隠し味としてブレンドしてあるらしい。値段は驚くほどリーズナブルで、わたしは自宅の冷蔵庫に常備している。
食事の邪魔をしないし、ちょっとした気分転換にもってこい。
抹茶ありきの創作で梅酒をぶつけた理由は、サントリーの梅のリキュールづくり60周年を祝福する意味もある。社名が寿屋からウイスキーのブランド名であるサントリーとなった1963年、「ヘルメス クレーム・ド・コーバイ」が発売されたのがはじまりであった。
現在は山崎蒸溜所貯蔵梅酒シリーズのプレミアムなものへの人気が高まっているが、今回はポピュラーな「まろやか完熟梅酒」を選んだ。
さて、このフローズン・カクテルの味わい。
「ROKU」はジュニパーベリーをはじめとしたジン原料酒に、6種の和のボタニカル(八重桜の花、大島桜の葉、煎茶、玉露、山椒の実、柚子の皮)が潜んでいる。「ROKU」の和の感覚が梅酒と合うだけでなく、柚子シロップとも当然相性はいい。
そして「ROKU」が厚みのあるアルコール感で味わい全体を支え、シロップが甘さとしてのコクを生み、さらにはまろやかな梅酒の甘酸っぱさ、とくに酸味をうまく引き出しているようだ。そしてレモンジュースは爽やかさをもたらす。じっくりと味わえば、それぞれの素材が見事に響き合っていることがわかる。そして抹茶のニュアンスがしなやかに感じられる。
それぞれの個性が見事に溶け合いながら洗練された梅酒の味わいを生み、大人のかき氷の世界を創り出している。