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8/23
(金)
19:00開演
(18:20開場)
大ホール
当公演は、初代監修を務めた武満徹の意向を受け継ぎ、下記のコンセプトで構成されています。
クロード・ドビュッシー(1862~1918):
『牧神の午後への前奏曲』(1891~94)
Claude Debussy: Prélude à l’après-midi d’un faune
ピエール・ブーレーズ(1925~2016):
『ノタシオン』オーケストラのための(1977~2004)
Pierre Boulez: Notations for Orchestra
フランチェスカ・ヴェルネッリ(1979~ ):
『チューン・アンド・リチューンII』オーケストラのための(2019~20)
Francesca Verunelli: Tune and Retune II for Orchestra
クロード・ドビュッシー/フィリップ・マヌリ:
『夢』(1883/2010~11)
Claude Debussy /Philippe Manoury: Rêve
フィリップ・マヌリ(1952~ ):
『プレザンス』大オーケストラのための[サントリーホール委嘱](2023~24)世界初演
Philippe Manoury: Présences for Large Orchestra [World Premiere, commissioned by Suntory Hall]
※演奏順が当初発表から変更になりました。
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行発売: | 5月7日(火)10:00〜9日(木) |
---|---|
一般発売: | 5月10日(金)10:00〜 |
※先行期間中は窓口での販売はございません。
8/26
(月)
19:00開始
(18:20開場)
ブルーローズ(小ホール)
公募した採用作品を実演、マヌリ自ら作品を解析する特別なワークショップです。
[Part 1] Philippe Manoury × Toshio Hosokawa Talk Session
ゲスト:野平一郎Ichiro Nodaira, Guest
[Part 2] Workshop by Call for Scores
杉本 能:
パウル・クレー「ペダゴジカル・スケッチブック」による習作Ⅲ『Earth, Water & Air』 (2024)
Mune Sugimoto: Earth, Water & Air, Study Ⅲ from “Pedagogical Sketchbook” by Paul Klee
鷹羽 咲:
『エマルション』クラリネットとヴァイオリンのための(2024)
Saki Takaba: Emulsion for Clarinet and Violin
浦野真珠:
『BAT and CACTAS』弦楽三重奏のための(2024)
Mami Urano: BAT and CACTAS for String Trio
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行発売: | 5月7日(火)10:00〜9日(木) |
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一般発売: | 5月10日(金)10:00〜 |
※先行期間中は窓口での販売はございません。
8/27
(火)
19:00開演
(18:20開場)
ブルーローズ(小ホール)
フィリップ・マヌリ(1952~ ):
Philippe Manoury:
弦楽四重奏曲第4番「フラグメンティ」(2015)
String Quartet No. 4, “Fragmenti”
『六重奏の仮説』6楽器のための(2011)
Hypothèses du sextuor for 6 Instruments
『イッルド・エティアム』ソプラノとリアルタイム・エレクトロニクスのための(2012)
Illud etiam for Soprano and Electronics in Real Time
『ウェルプリペアド・ピアノ(第3ソナタ...)』ピアノとライブ・エレクトロニクスのための(2020)
Das Wohlpräparierte Klavier (...troisième sonate...) for Piano and Live Electronics
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行発売: | 5月7日(火)10:00〜9日(木) |
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一般発売: | 5月10日(金)10:00〜 |
※先行期間中は窓口での販売はございません。
楽器の音をコンピュータがリアルタイムに加工し発するライブ・エレクトロニクス音楽の現代における第一人者。あらゆる編成・形態に取り組み、近年はとりわけオーケストラ音楽の可能性を野心的に探究する。
フランス南西部のチュール出身。9歳のころピアノを始めると同時に作曲を試み、ピアノをピエール・サンカンに学ぶ。エコール・ノルマル音楽院でマックス・ドイチュ、パリ音楽院ではミシェル・フィリッポらに師事(1974~78)。クロード・エルフェによって初演されたピアノ曲『クリプトフォノス』(1974)が出世作となった。新しい技術に対する関心から、ピエール・バルボにコンピュータ(穿孔テープを用いた旧式のもの)による作曲を学ぶ一方、当時フランスで電子音楽を創作していた作曲家の多くが所属していたGRM(音楽研究グループ)とは距離をおく。器楽の書法に疎い彼らの音楽の素朴さに苛立ち、器楽と電子音楽の領域は分断されていると感じていたマヌリは、シュトックハウゼンがパリで行っていた自作自演とブーレーズの論考から刺戟を受け、器楽と電子音楽を橋渡しする、高度な論理と構造をそなえた音楽を作りたいと考えた。
ブラジルで教えていたフィリッポの紹介により同国で教えた(1978~80)あと故国に戻り、4年前に創設されたIRCAMに出入りし始める。そこで最初に作曲したのが、いずれも演奏に1時間超を要する合唱、アンサンブルとテープのための『時の経過[ツァイトラウフ]』(82)、4つの声とオーケストラのための『アレフ』(85)だった。ワーグナーとマーラーを範とする彼は、その後も編成、演奏時間ともに長大な作品を生みだしてゆく。
IRCAMでは、プログラミング環境Maxの開発に取り組んでいたアメリカの数学者ミラー・パケットと協働。楽器とその音をリアルタイムで追跡するコンピュータとの相互作用を利用した、ライブ・エレクトロニクスと独奏楽器のための『ジュピター』(87/92、フルート)、『プルトン』(88/89、MIDIピアノ)を含む4部作「ソヌス・エクス・マキナ」を発表した。
器楽曲の創作が増えた1990年代を経て、2010年前後からふたたびライブ・エレクトロニクスを積極的に活用するが、この時期からはまた、ライブ・エレクトロニクスでも問題となっていた空間性の探究を推し進めてゆく。いずれもフランソワ゠グザヴィエ・ロトの指揮によって初演された『その場で[イン・シトゥ]』(2013)、『リング』(16)、俳優と合唱団をも伴う『Lab.Oratorium』(19)からなる「ケルン3部作」では、奏者のグループ化、聴衆内での分散などが試みられる。今回世界初演される『プレザンス』は、『予想』(19)に始まる、次なるオーケストラ3部作の掉尾を飾る作品である。
音楽史の古典に通じたマヌリの精緻で隙のない書法は、管弦楽曲のほかアンサンブルのための『肖像画のための断片』(1997~98)、『響きの文法』(2022)など大編成の作品でとりわけ真価を発揮し、高揚感に満ちた豊饒な音響を作りあげる。ライブ・エレクトロニクスを用いた弦楽四重奏曲第2番『テンシオ』(10)でも、知的で緻密に設計された構造が、しなやかで艶やかな音の身ぶりを生みだす。オペラでは、「シンクシュピール(思考劇)」と銘打たれた、東日本大震災とそれに続く原発事故を扱ったイェリネクの原作にもとづく『光のない。』(17)など5作を発表している。
リヨン国立高等音楽院教授(1987~97)、カリフォルニア大学サン・ディエゴ校教授(2004~12)、ヴィラ九条山レジデント(11)、ラン高等芸術院上級アカデミー教授(13~16)、コレージュ・ド・フランス年間講義「芸術創造」担当(16~17)。
作品はデュラン・サラベール・エッシグから出版されている。
[平野貴俊]
※下線つきの氏名・団体名をクリックすると、
プロフィールがご覧いただけます。
※下線つきの氏名・団体名をクリックすると、
プロフィールがご覧いただけます。
ストラスブールの彼の自宅を訪れたことがある。その古風な同じ建物の、別の階に彼のアトリエもあった。その深い静けさに包まれた部屋には、壁にドビュッシー、シェーンベルク、ベルク、そしてカフカ等の写真、さらに彼がブーレーズ等の著名な音楽家たちと一緒に写っている写真も飾られてある。グランドピアノが置いてあり、まるで建築家が使うような大きな机には、オーケストラの大きな五線紙が置かれ、そこには緻密で複雑な細かい音符が、手書きによって美しく書き込まれていた。さらに謎のような記号によって埋め尽くされた多くの図表。彼の密度の濃い緻密な音楽は、コンピューターを駆使しても、なお人間の細かな手作業によって生み出されているのだと思った。そしてその仕事は、西洋音楽の偉大な作曲家たちを継承しながら、新しい音楽の未来を切り開こうとしている。
現在、生成AI(人工知能)が飛躍的に発展し、人間の想像力を超えるような世界を生み出すことができるようになった。そうした時代に、芸術家がどのように人工知能と向かい合っていけば良いのか。安易にコンピューターに依存するのではなく、それを利用しながら想像力の行方を、人間の「知性と直感」によってコントロールし、新しい音楽世界を生み出していく。コンピューターを最も初期の段階から創作に利用してきたフィリップ・マヌリの仕事をよく知ることは、現在の私たちにとって、とても大切なことだと思う。