ビールはただキンキンに冷やせばいいってものじゃないらしい。冷やし過ぎは甘みが感じられなくなるそうだ。
とはいっても猛暑の季節。キーンと冷えたビールが喉を駆け抜け、身体に浸潤していく感覚はたまらない。そんなにビールを嗜むほうではないわたしでも、とりあえず、という気分になる。それと、厳冬にポカポカと温かい部屋で飲む冷えたビールも旨い。
日本で主流のピルスナータイプのビールの飲み頃温度は、夏は4~6℃、冬は6~8℃といわれている。缶や瓶入りは冷蔵庫で4時間程度。急いで冷やしたい場合は水を入れた容器に氷を浮かべ、その中に缶や瓶を入れると、夏でも20~30分ほどで冷える。冷凍庫に入れるのはとにかく厳禁だ。
興味深いのは同じピルスナータイプであっても、ドイツやチェコでは日本人が好む温度ほどには冷やさない。反対にアメリカは2℃くらいまでキーンと冷やす。
20年以上も前のことになるが、あるビール醸造技術者の方に、この差はどうしてなのでしょうか、と質問した。
その方によると、ホップ由来の苦みの強いドイツやチェコのビールは相対的に炭酸ガスが少なく、冷やし過ぎると甘みが抑えられて、より苦く感じられてしまう。アメリカで主流のビールはホップの苦みはそれほど強くなく、炭酸ガス含有量が多く、よく冷やして缶から直接飲めば刺激も強くていい、ということらしい。
なるほど、たしかに。ドイツの人たちが、缶に直接口をつけるのを見かけた記憶がなかった。もうひとつ補足すると、缶や瓶からグラスにビールを注いだ場合は炭酸ガスの量が減少する。もちろん、キレイに管理されたグラスかどうか、さらには泡を上手に立てられるかどうかによっても減少の度合いは変わってくる。
ではビールカクテル。よく知られているのが「レッド・アイ」。飲んだことのある人は多いはずだ。ビールとトマトジュースを半々というレシピだが、割合を調節して自分好みの味わいに仕上げればいい。他にはビールとジンジャーエールの「シャンディー・ガフ」、白ワインとビールの「ビア・スプリッツァー」など手軽に楽しめるのがビールカクテルだ。
わたしがおすすめするのは、メジャーな「レッド・アイ」にウオツカを加えた「レッド・バード」である。ウオツカが入るだけで味わいが大きく変貌する。グンと伸びのいいまろやかさになる。
見方を変えれば「ブラッディ・メアリー」にビールを加えたものだが、ビールはしっかりとしたコクと旨味のある「ザ・プレミアム・モルツ」、ウオツカはクリアな感覚ながら柔らかい甘みと口当たりの「ピナクル ウオツカ」をおすすめする。
基本レシピはウオツカ45ml、トマトジュース60ml、ビール適量。人それぞれの好みではあるが、ウオツカは30mlくらいが調度いいのではなかろうか。
味わいは糖度の高いフルーツトマトのジュースを使ったかのように、まるみがあって甘い。ウオツカって名脇役なんだな、と実感するはずだ。「レッド・アイ」に感じるトマト特有の青臭い酸味はどこへ消えたのか。「ザ・プレミアム・モルツ」と見事に調和して、ビールカクテル特有の口中でフッと感じる苦みも抑えられ、コクがあり喉ごしのいい素敵なカクテルだと断言できる。
カクテル名を覚えていただきたい。「レッド・バード」。マイナーなビールカクテルだが、おそらく大多数の人が美味しいと言うはずだ。はじめて飲む人のなかには、グラスから赤い鳥が飛翔するような驚きを覚える、ってのは大袈裟ながら、ウオツカがこんなにいい味を生むのか、とカクテルの面白味を知るだろう。
さて、ウオツカの次はジン。カクテル名は「ドッグズ・ノーズ」。ジン好きの方におすすめする辛口のビールカクテルだ。
ビールはもちろん「ザ・プレミアム・モルツ」。ジンは「ビーフィータージン47度」がいい。「ザ・プレミアム・モルツ」のコクとともにジンならではのジュニパーベリー(杜松・ネズの実)の香りが口中にふんわりとそよぐ。喉ごしもいい。
バーでの口開けに、すっきりとした爽快感の「ジン・トニック」はたしかにふさわしい。でも、この夏からは「ドッグズ・ノーズ」も最初の一杯に加えてみてはいかがだろう。いつもの「ジン・トニック」とは違うはじまりもいいではないか。
最後にもうひとつ。ペパーミントの爽やかさが漂う「ミント・ビア」というカクテルを紹介しておく。これも簡単レシピで、ビールにペパーミントリキュールをお好みで加えればいい。
基本レシピはペパーミントリキュールを15ml。しかしながらこちらも自分の好みで分量を調整すればいい。ペパーミントリキュールが入ることでビールの泡立ちはあまり期待できないが、口当たりはとても爽やか。ビールの味わいとも調和したすっきりとした感覚は、気分転換にもってこい。
この夏は是非、ビールカクテルを試していただきたい。
(「ルジェグリーンペパーミント」は現在取り扱っていません)