Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

ホール・イン・ワン

バランタイン
ファイネスト
2/3
ドライベルモット 1/3
レモンジュース 2dashes
オレンジジュース 1dash
シェーク/カクテルグラス
*ベーシックなレシピにとらわれることなく、ステアでも味わっていただきたい。

ダービー・フィズ

バランタイン
ファイネスト
45ml
ホワイト
キュラソー
1tsp.
レモンジュース 1tsp.
シュガーシロップ 1tsp.
1個
ソーダ水 適量
シェーク/タンブラー
ソーダ水以外の材料を十分にシェーク。
グラスに注ぎ、氷を加えソーダ水を満たす。

飲んでいいスコアを出そう

気になりながら試したことがないカクテルのひとつに、ウイスキーベースの「ホール・イン・ワン」がある。何故このレシピが多くのカクテルブックに掲載されているんだろう。わたしにとっては、そんな一杯だ。

いつ頃生まれたのかは知らない。古臭いというか、現代のバーテンダーの感覚にはない香味世界だと思う。ゴルフ用語を名に冠していることで親近感というか、わかりやすさからスタンダードに仲間入りしている、とわたしは勝手に解釈している。

ゴルファーはホール・イン・ワンとはいかないまでも、いいスコアがでますように、と験(げん)をかついで飲むのかもしれない。


カクテルブックのベースの記述には単純にウイスキー、あるいはバーボンまたはスコッチとある。アメリカ生まれのカクテルであり、ゴルフ発祥の地はスコットランドだから、お好みでどうぞ、ということなのだろう。日本人ゴルファーが味わうときはジャパニーズウイスキーをベースにしたっていいのだ。

次にドライベルモットが入る。ウイスキーとスイートベルモットの「マンハッタン」のアレンジである。これにレモンジュース2ダッシュ、オレンジジュース1ダッシュが加わる。

甘みを断ち切ってしまったようなレシピで、しかもジュースの1ml、2mlというあまりに微量な加減はいったい何なんだ、と首をひねってしまう。

奇妙に感じながら、先日、思い切ってバーでオーダーしてみた。バーテンダーもはじめてつくるという。ベースはブレンデッドスコッチのバランタインファイネストにしてもらった。

予想通り、ひと口啜るとドライで中途半端な味わいを実感した。やはりな、と呟きながら三口ほど飲むと慣れてくるのだ。カップ・インの快感とは決していえないが、きっとクセになる人がいる、そんな味わいの一杯だった。

レシピではシェークとされている。あくまで軽いシェークなのだが、実はステアのほうが香味のメリハリというか、ベースのウイスキー感、カクテルとしての厚みがしっかりと出てくる。飲み比べてみたら、シェークは味わいがぼやけているようで、ステアのほうが締まった味わいだった。

とはいえ、「ホール・イン・ワン」は嗜好品の面白さを教えてくれている。人の好みは十人十色だし、星の数ほどのレシピがあるのだから、現代的ではない、ちょっとなんだかなーという万人ウケしない味わいがあってもいいのである。

競馬を知らなくても美味しく飲める

ところで、ゴルフが18ホールで競うようになったのは、18コースのラウンドを終えるとウイスキーのボトルがちょうど空くから、つまり1本飲み干すから、という説は大嘘なので酒場で真面目に話してはいけない。ジョークである。

18コースになったのはゴルフの聖地と呼ばれるスコットランドのセント・アンドリュース・ゴルフクラブが1764年に18としたことで、それを他のゴルフクラブが一斉に真似、やがてスタンダードとなった。

かつてコースの数はクラブによってまちまちだった。セント・アンドリュースは元々22コースあったのだが、スタート直後の4コースの距離が短くて面白味に欠けたので削ったのである。

まあ、わたしのような酒を飲んでバカ話に興じるウイスキー好きの輩が法螺(ほら)を吹き、それが広まってしまったのではなかろうか。

それにウイスキーがボトルで流通するようになったのは19世紀半ばになってからのこと。1764年との時間差はどうしようもない。もしゴルフバッグにウイスキーを忍ばせるとしたならスキットルのようなものだっただろう。


さて、せっかくだからイギリス発祥のスポーツイベント、競馬のダービーを冠したカクテルを紹介しておく。これもベースのウイスキー以外の液体量が1ティースプーンという気になるレシピである。ただし、とても飲みやすく、わかりやすい美味しさだ。

その名は「ダービー・フィズ」。ウイスキーにホワイトキュラソー(オレンジリキュール)、レモンジュース、シュガーシロップを1ティースプーン。それに卵1個を加えて十分にシェークしたものをソーダ水で満たす。

こちらもバランタインファイネストをベースにしていただいた。ベースの厚みと卵のまろやかさのなかに、ほどよい甘みと柑橘系の酸味が溶け込んでいる。ハイボールスタイルだから口当たりもいい。

イギリスだけでなく欧米では馬術が盛んで、ファッションにも影響を与えた。パリの馬具工房だったエルメス。インド駐留のイギリス連隊が自国にもたらして共通ルールが生まれたポロ競技で着用されたポロシャツ。そのポロ競技中のプレーヤーの襟やネクタイがばたついて煩わしそうだったので、アメリカのジョン・ブルックスはボタンダウンシャツを考案した。そして6月に開催されるイギリス・ダービーは王室やセレブのファッションに注目が集まる。

では、わたしもお洒落して、かつてダービー卿が愛した山高帽を被って「ダービー・フィズ」をいただこう。なんてそんな馬鹿なことはしないよ。似合わないもの。気取らず飲んで「ああ、美味しい」。これがいちばん。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 川田雅宏
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

ブランドサイト

バランタイン ファイネスト
バランタイン ファイネスト

バックナンバー

第42回
ルジェ
クランベリー
第43回
シンガポール・
スリング
第44回
ニューヨーク
第45回
ワード・エイト

バックナンバー・リスト

リキュール入門
カクテル入門
スピリッツ入門