一般的なコーヒー飲料の製造方法は、自宅でコーヒーを淹れるのと同じように、豆を粉砕し、広げると優に直径2Mはある大きなドリップにお湯を注いで、抽出します。この時、残念なことにコーヒーの豊かな香りは、多少、逃げてしまいます。
そこで、この豊かな香りを逃すことなく缶コーヒーに閉じ込めてしまうことを考え、当社独自のエスプレッソ抽出製法を開発しました。この製法を用いてコーヒーを抽出すると、豊かな香りを逃がさず集めて製品にふんだんに配合できるため、とても香り高いコーヒーができるのです。缶コーヒー「ボス」の豊かな香りの秘密はここにあります。
このエスプレッソ抽出製法は、粉砕された焙煎豆と水蒸気を極めて効率よく接触させるので、とても味わい深いコーヒー液を作ることができます。
しかし味わい深いゆえ、これには大量の沈殿成分が含まれています。沈殿成分の量は、通常の製品製造の工程では処理できないほどの量ですが、これを除去しないことには、製品は作れません。様々な濾過技術を試し、苦心の末、特殊な濾過方法で、沈殿成分や舌にざらつく成分などを取り除くことに成功しました。その結果、強い味わいをもった、とてもクリーンなコーヒー液ができました。
このようにして、コーヒーの美味しさを余すことなく活かしたサントリー缶コーヒー“ボス”シリーズを作ることができたのです。
今まで以上に上質で香り高いコーヒーを目指し、2013年には、これまで培った醸造技術を活用した新しいコーヒー豆の開発に成功しました。これは、収穫後のチェリーにシャンパン酵母※を加え発酵させることで、華やかでフルーティーな香りをもつコーヒー豆を生み出す技術です。
300パターンにもおよぶ酵母を使ってコーヒーチェリーの発酵試験を繰り返し、フルーティーな香りを引き出しました。真っ赤に完熟したコーヒーチェリーに「シャンパン酵母」を加えると、酵母が果肉中の糖分を得ながら、果実の表面で繁殖し発酵をはじめます。発酵が終わった実の表面は、赤から美しいサーモンピンクに。内側も、薄いピンク色を帯び、発酵の影響がしっかり実の中にまで届いていることがわかります。
サントリーが豆への影響を検証したところ、シャンパン酵母によって発酵した、コーヒーチェリーの豆には、独特の香気成分が確かに多く出ていました。