特別対談 イノベーションを加速する組織へ

「人間の生命の輝きを目指す」というパーパスの下、従業員が輝き続け、イノベーションを加速する組織づくりを目指すサントリー。その目標を達成するため、サントリーでは革新的なアイディアが生まれやすい環境を整備し、従業員一人ひとりの「個の力」を最大化するためのさまざまな取り組みを行っています。今回は「DEI」と「健康経営」という組織づくりに重要なふたつのテーマに焦点を当て、それぞれの分野のリーダーから取り組みの現状と展望について話を伺いました。

サントリーホールディングス(株)
ピープル&カルチャー本部
グループ健康推進センター長
池田美紀
PROFILE
1988年入社。2003年人事総務シェアードサービス組織構築プロジェクトに携わり、2004年人事基幹システム「COMPANY」を導入し、グループの人事データを集約、給与・社会保険業務等に従事。2017年総務サービスセンター長、2019年グループ人事総務業務部長を経て、2023年4月より現職。
サントリーホールディングス(株)
ピープル&カルチャー本部
DEI推進室長 兼 Global P&C部 部長
高木祐美
PROFILE
1996年入社。広報部で雑誌・TVの広報などを10年担当した後、「なっちゃん」「Green DAKARA」などのブランドマネージャーとして、サントリー製品のブランド構築や発展活動に従事。以降CEO室・経営企画部・クロスリージョン開発推進部、1年半のフランス駐在などを経て2023年4月より現職。

One familyとして
互いの違いを
「価値あるもの」と捉える

池田サントリーでは創業時から従業員を家族のように思い、中長期的視点で大切に育てていくという考えがあり、「One family」という言葉をよく使います。「人」を大切に思う、「人」こそが経営の最も重要な基盤(人本主義)であり、イノベーションの源泉であると考えています。

高木「One family」という考え方は、サントリーの企業文化の核を成すもので、我々がグローバルな環境でどのような成長を遂げるかという点においても重要です。現在サントリーは、従業員4万人のうち約2万人がノンジャパニーズで、従業員構成がすでにグローバル。この状況は、多様なバックグラウンドを持つ社員がお互いに認め合い、学び合い、高め合いながら、ともに成長していくことがいかに重要かということを示しています。

グローバル展開を進める中で、改めて国内外で働くすべての仲間に向けて呼びかける言葉として、近年「DEI Vision Statement」「Strategic Pillars」を制定しました。「失敗を恐れず、好奇心を抱き」という部分はサントリーの理念につながる部分でもあり、そこに「Diversity(多様性)とEquity(公平性)を受け入れ、Inclusion(包含性)文化を創造します。」という言葉を組み合わせています。
グローバル企業の一員として、私たちは単に多様性を認めるだけでなく、それぞれの強みを活かして、侃々諤々議論することで、インクルーシブな企業文化を創造していくことを目指していきたいと思っています。

サントリーの「DEI Vision Statement」「Strategic Pillars」https://www.suntory.co.jp/company/csr/soc_diversity/

池田この数年で大きくグローバルに事業が発展し、様々な価値観を持つ新しい仲間と仕事をする機会も多くなりましたね。

高木私は自身の海外赴任経験を通じて、海外と日本では人が育ってきた文化や仕事の仕方が根本的に異なることを実感しました。サントリーではお客様のインサイトを深く理解するために、丁寧に時間と手間をかける。効率性が強く求められる欧米の文化とは、どちらかと言うと正反対のアプローチです。また私たちの常識が彼らにとっては非常識に映ることもあります。でも「消費者の深いインサイトへの探求心」や、「美味」「安全」「品質」へのこだわりは、ビジネスのコアとして譲れない部分。だからこそ、こういったサントリーの考え方や「ものづくり」へのこだわりをどのように伝えていくかが、私たちにとって重要な課題だと捉えています。

一方で余暇の使い方や働き方など、私たちが彼らから学ぶべきこともたくさんあります。サントリーのビジネスのコアを伝えながら、異なる文化や視点を尊重し、学ぶべきところは互いに学ぶ。お互いの「違いを価値あるもの」として受け入れることは、組織の成長だけでなくイノベーションの源泉にもなるでしょう。

高木が赴任していたフランスのオフィス。サントリーグループの従業員の半数以上がノンジャパニーズだ。

からだも心も健康で
満たされる働き方で
全従業員の
人生の輝きを目指す

池田働く場所や仕事の内容が違っても、健康は誰にとっても等しく大切という考えで、グループ全体で健康経営に取り組んでいます。

2014年に「健康づくり宣言」、2016年には「健康経営宣言」を掲げ、心身の健康はもちろん、やる気に満ちて働いていることを目指し、職場環境やこころとからだの健康づくりを推進しています。
単に「病気ではない」「不調ではない」ということではなく、「こんなことがやりたい、チャレンジしたい」という気持ちが沸くことを「健康」と考えています。

2020年に国内グループ会社の健康経営をグループ健康推進センターが中心となって企画・実行する体制としました。これにより、充実した健康診断や産業医、看護職等医療スタッフによるサポートが、働く場所や仕事の内容が違っても等しく享受出来るようになり、健康推進の取組がさらに強化されました。

サントリーで働くことの安心感を持って、仕事に集中出来、生産性やエンゲージメントが向上することが期待されています。

高木グローバルも含めたグループ全体への健康課題となると、生活や食習慣の相違など物理的な課題もあり、地域に合わせたアプローチが必要ですね。

池田確かに、グローバルレベルでの健康推進には地域ごとの特性を理解しそれに合わせた取り組みが求められます。その一例として、グローバルの全従業員を対象としたウォーキングイベント、「One Suntory Walk」があります。これは1ヵ月間グループ全体が一体となって健康意識を高め、運動習慣を身につけようという企画で、参加者数に応じて慈善団体に寄付する仕組みになっています。北半球と南半球では季節が逆だったり、また時差があったりと海外との調整は結構大変ではあるのですが、一体感ある非常に良いイベントになっています。

One Suntory Walkの様子

高木One Suntory Walkの様子は社内SNSにたくさん投稿されていましたね。私も参加し国内も盛り上がっていましたが、海外拠点の皆さんはさらに楽しんでいる雰囲気でした。健康に関する取り組みといえば、「Activeプラス10宣言」も社内SNSの投稿が活発ですよね。

池田はい、日々の業務や生活の中で、健康を意識したちょっとした工夫や面白い取り組みを自己宣言して社内SNSに投稿してもらうのですが、対象8,200人の従業員の内、なんと参加人数は7,130人。今は国内での取り組みですが、多くの皆さんが本当に楽しんで参加しています。
先日実施した「体力年齢測定会」も、当日の参加人数が予定人数を大幅に上回り、大変好評でした。健康意識を高めてもらうことが目的でしたが、当日参加した従業員同士で体力年齢の勝ち負けを競うなど、思いがけないコミュニケーションが広がり、どんどん飛び入り参加者が増えたんです。

高木私も参加しましたが、楽しみながら健康意識を高めることができました。社内での話題性もあり、コミュニケーションが促進されるという相乗効果も生まれましたね。ほかにも何か健康支援に関する計画などあるのでしょうか?

池田朝食欠食改善プログラムを検討中です。
朝食には、からだと脳のスイッチを入れ、体内時計を正常に整える効果があり、仕事のスタートとしてとても重要な役割を持ちます。特に若年層で「ぎりぎりまで寝ていたい」「準備するのが面倒」といった声が大きく、簡単に必要な栄養素がとれるものを準備し、朝食をとることを習慣にしてほしいと思っています。

高木全拠点で対応するとなると、準備も色々必要になりそうですね。 内容もある程度固まりつつあるんでしょうか。

池田サブスクのような運用で、毎日食べた方が得になるような仕組みを検討中です。まずは希望する拠点からはじめ、徐々に広げていきたいと考えています。

高木朝から良いコミュニケーションのきっかけにもなりそうですね。「おはよう」という挨拶が元気の源になって、仕事のスイッチが入りそう。生産性も上がる気がします。

池田私たちは、健康的な生活習慣をみにつけることで日々の体調管理が出来、将来の健康リスクを削減すると考えていますが、日々忙しくしている従業員が「やらされ感」を感じる負担の大きなものは続きませんので、楽しいきっかけづくりをして、楽に続けられる習慣にすることを目指しています。

健康経営では「習慣化」を
キーワードに。
個性を尊重し、
切磋琢磨しながらイノベーションを起こす風土を目指す

高木池田さんがおっしゃる通り、受ける方が「やらされ感」を感じてしまうと、自分事にならない。これはDEIも同じです。サントリーの従業員間にはフレンドリーな雰囲気が根付いていますが、これはお互いの違いを認め合う風土が自然発生的にあるからこそ、互いに興味を持ち合えることが大きいのではと感じています。

池田違いを認めると言えば、当社の「コラボる体験」はDEIそのものを体感できる取り組みではないでしょうか。

高木知的障がいを持たれる従業員が働くコラボレイティブセンターでの勤務体験、「コラボる体験」では、社内から色々な声をいただいています。「自分がいかに挨拶などの基本的なことができていないかを実感することができた」「彼らが持つ視点や新鮮な気づきに驚かされた」など、実際コラボレイティブセンター、通称コラボセの仲間と一緒に働いてみると、本当に色々な学びがあるんです。こういった体験は、社内のエンゲージメントを高めていく上でも重要。例えば、自分の頑張れる範囲と、隣の人の頑張れる範囲は違うかもしれませんよね。人はみんな違う。そもそも、自分が見えている範囲は狭いんだ、ということを認識することが、今後よりインクルーシブな風土をつくっていく上で大切だと感じています。

コラボる体験の様子。様々な拠点の従業員が体験する。
障がいのある社員が最も輝く会社目指して
https://www.suntory.co.jp/company/csr/story/011/

高木先日はアジア最大級のLGBTQ+イベント、「東京レインボープライド2023」に協賛・出展しました。私自身このテーマについて頭では理解しているつもりでも、「自分事」としては捉えきれない部分もありました。イベントで実際多くの当事者の方々とお話しをすることで、性的指向や性自認も数多ある個性の一つ。自由でイキイキと自分らしくいられる社会にしていきたい、という思いは皆同じなんだ、ということを実感しました。
実体験して自分の琴線に触れた時のパワーには、すごい力があります。当社には「やってみなはれ」というValue(価値観)がありますが、DEIについても啓発活動や制度を整えるだけではなく、従業員が実際に体験できるような機会を増やし、自らが感じたり、気づいたりするような機会を増やしていきたいですね。

高木が参加した「東京レインボープライド2023」

池田そうですね。同時に良いことも悪いことも何でも言い合えるような雰囲気づくりも大切です。

高木コミュニケーションにもさまざまな形があります。池田さんがおっしゃったように、大切なのは良いことだけなく、そうでないことも率直に腹を割って話せること。お互いの個性を尊重しつつも遠慮や忖度無く、侃々諤々の議論ができるか、それが重要だと思っています。

池田DEIも健康も、自分らしくいきいきと働くための基盤ですよね。従業員にとって人生の中で長い時間となる会社生活を、より充実したものになるように連携を深めていきたいです。従業員にとって人生の中で長い時間となる会社生活を、心身ともに健康かつ楽しく過ごせるよう、「習慣化」をキーワードにしたさまざまな取り組みを進めていきたいと思っています。

高木心身の健康が保たれ、率直に意見が交わされる環境は、従業員一人ひとりの個性や相違点も「おもろい」と感じる企業文化を育む基盤となります。新しいアイディアや異なる視点を自由に議論することで、予期せぬ創造や革新的なアイディアが生まれ、イノベーションにつながっていく。単なる「仲良し」ではなく、切磋琢磨し合える組織を目指してしていきたいですね。

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