2014年12月20日(土)~2015年3月1日(日)
※ 作品保護のため、会期中展示替をおこないます。
※ 各作品の展示期間は出品作品リストをご覧いただくか、美術館へお問い合わせください。
仁阿弥道八は天明3年(1783)、京都粟田口(あわたぐち)の陶工・初代高橋道八の次男として誕生しました。本名を光時といい、文化元年(1804)の父の死のあと若くして窯を継いで二代高橋道八となりました。
二代高橋道八(仁阿弥道八)は京都粟田口焼の老舗「雲林院宝山(うんりんいんほうざん)」家に師事して陶法を学び、また中国陶磁風の作品を得意とした京焼磁器焼成の先駆者・奥田頴川(おくだえいせん)にも入門したといわれていますが、何より父の初代高橋道八から陶法を指導され、父の作風に大きな影響を受けたと考えられます。第1章では、伊勢亀山藩士の身分から粟田口の陶工に転身したという仁阿弥の父・初代高橋道八がどのようなやきものを作っていたかを紹介します。
また、仁阿弥道八が生きた19世紀前半、京焼は仁清・乾山時代以来の「第二の黄金時代」を迎え、多くの名工が輩出されました。本章では仁阿弥の弟・尾形周平の作品、奥田頴川門下で仁阿弥の兄弟子にあたる青木木米(あおきもくべい)の作品などもあわせてご覧いただきます。
野々村仁清以来、京焼の陶工は中国や朝鮮半島のやきものの技法、様式を活かし、上手に写す能力に長けていました。一方で、19世紀になると茶の湯は社会に広く普及して、寺院での大法要、公卿、武家、豪商の交際に必要な教養となり、茶道具の需要が高まりました。その需要に応えるため、高級な茶道具の「写し」が京焼の陶工にも注文されるようになりました。京焼の陶工たちにとって、高級な茶道具の「写し」を再現する技量は成功の鍵を握る重要な能力のひとつであり、仁阿弥もまた「写し」において優れた作品を残しました。
第2章では、仁阿弥道八の面目躍如たる茶道具の数々、なかでも仁阿弥が手がけた「写し」の作品を紹介します。
18世紀後半から19世紀、身分職業を問わず文人(=本職とは関係なく、学問を修め詩文をよくする人)たちの間で煎茶道が非常に流行しました。煎茶道具の需要の高まりに応えるべく、仁阿弥道八も急須や凉炉、煎茶碗を数多く制作しています。
第3章では、仁阿弥の煎茶道具を紹介します。仁阿弥の煎茶道具が人気ブランドとして有名になったため、地方の窯で仁阿弥の倣製品も作られていたようです。
茶道具の一種である懐石具のなかでも、「鉢」は仁阿弥の個性が強く発揮された器物です。とりわけ有名で数多く残っているのは、雪の降りかかる竹を描いた雪竹文様(ゆきたけもんよう)の手鉢と桜と紅葉を半分ずつ描いた雲錦手(うんきんで)の鉢で、制作当時から高い人気を誇っていたことがうかがえます。
第4章では、雪竹文様の手鉢と雲錦手の鉢を中心に、懐石に華やぎをもたらす仁阿弥の鉢の数々をお楽しみいただきます。
仁阿弥が鋭い観察力を駆使して挑んだのが茶道具であるならば、置物・手焙(てあぶり)・炉蓋(ろぶた)などの彫塑的作品は仁阿弥がユーモアをのびのびと表現した対象だといえます。
時には、置くと隠れて見えない底面までも使って生き生きと描写した「置物」、触れると暖かそうな動物をかたどった「手焙」、茶室に切られた炉を覆う「炉蓋」は見る人を惹きつけずにはおきません。
第5章では、仁阿弥の彫塑的作品を紹介します。
仁阿弥道八は自らの五条坂の窯を操業する一方で、地方に招かれ、御庭焼(おにわやき)の指導にも尽力しました。文政10年(1827)に参画した「紀州偕楽園焼(きしゅうかいらくえんやき)」や、天保3年(1832)に讃岐高松藩主・松平頼恕公(まつだいらよりひろこう)に招かれて創始した「讃窯(さんがま)」などが知られています。
京都嵯峨の豪商、角倉玄寧(すみのくらげんねい)の個人窯「一方堂焼(いっぽうどうやき)」の運営にも携わったとの伝承があります。第6章では、仁阿弥道八が関わったとされる紀州偕楽園焼、讃窯、また一方堂焼の作品も紹介します。
天保13年(1842)、仁阿弥は五条坂の窯を息子の三代道八(1811~1879)に譲り、伏見桃山に隠居して桃山窯を創始・運営し、安政2年(1855)に生涯を終えました。
三代道八は、父・仁阿弥の作風を受け継ぎつつ繊細な陶技に優れ、四代高橋道八と共に明治時代の京焼を支えました。
現在は、九代高橋道八氏が色絵京焼の茶道具を手がけ活躍なさっています。
第7章では、三代高橋道八、そして当代高橋道八氏の作品を紹介します。「先代の作風に学ぶにとどまらず、現代において独自の世界を必ず築こうとする気概の感じられる作品」をご堪能ください。
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