2012年11月21日(水)~2013年1月20日(日)
※作品保護のため会期中、展示替をおこなう場合があります。
※各作品の展示期間については、美術館にお問い合わせください。
フィンランドに最初のガラス工房ができたのは、1681年のこと。当時のガラス器はボトルやボウルなどの日用品で、きわめてシンプルかつ機能的なものでした。その後、近隣諸国やヨーロッパの影響を受けながらさまざまなスタイルの製品が作られましたが、19世紀末から20世紀初頭にかけては、1917年の独立や社会情勢との関わりの中でフィンランド人たちの心に「国民性」という概念が強く目覚めます。自分たちの文化とは何かを意識することは、フィンランドが培ってきたデザインを顧みるきっかけとなりました。本章では、ヨーロッパにアール・ヌーヴォーの波が押し寄せる中、建築から器などの日用品に至るまで、フィンランド・デザインの土台が築き上げられていく姿を、作品を通してご覧いただきます。
1930年代、フィンランドでは「より美しく、デザインされた日用品」を求める新しい価値観が台頭し、広く波及しました。機能的であると同時に、美しく、しかも決して値が高くなりすぎず、万人が手にできるものであることが、フィンランド独自のデザイン文化として根付いていくことになります。 この時代、フィンランドのデザイン界で忘れてならないのは、アルヴァル&アイノ・アールト夫妻です。アイノによる、機能と美しいフォルムがコラボレートした「Bolgeblick」シリーズは、1936年の美術展覧会「ミラノ・トリエンナーレ」で金賞を受賞。また建築家であったアルヴァルも同年、フィンランド・グラスにとってもはや不可欠となった「Savoy」シリーズを発表し、1939年のニューヨーク万博のパビリオンを手がけるなど、不動の地位を築き始めました。本章では、アルヴァル&アイノ・アールト夫妻を中心とした1930年代躍進期の作品をお楽しみいただきます。
アイノ・マルシオ=アールト 《プレスガラス 4056/4052/4056/4644》
1932年制作 カルフラ社製
フィンランド国立ガラス美術館蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
アルヴァル・アールト 《アールトの花瓶 9750》
1937年制作 カルフラ社製
個人蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
第二次世界大戦後のフィンランド・デザイン界では、カイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラら、卓越した企業デザイナーが目覚しい活躍を遂げました。ヴィルッカラは、1951年の美術展覧会「ミラノ・トリエンナーレ」でグランプリを受賞。また、テキスタイルデザインで有名なマリメッコが国際的なデビューを果たしたのもこの時期です。清々しいエレガントさと自然のイメージを取り入れたフィンランド・デザインは、その後20年間、モダンデザイン界を先導していくことになるのです。本章では、国際的な名声を我が物にした黄金時代の作品をご紹介します。
グンネル・ニューマン 《カラー、T/75、6830》
1946年制作 リーヒマキ社製
個人蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
タピオ・ヴィルッカラ 《カンタレッリ(アンズタケ) 3280》
1947年制作 イッタラ社製
個人蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
カイ・フランク 《タンブラー 2744》
1954年制作 ヌータヤルヴィ社製
フィンランド国立ガラス美術館蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
ティモ・サルパネヴァ 《蘭 3568》
1954年制作 イッタラ社製
個人蔵 撮影:オスモ・ティエル
1950年代に黄金期を迎えたフィンランド・デザインは、その後も多くの有能な企業デザイナーに支えられ、美しい生活を提案し続けます。しかし、70年代に入ると、製品のためのデザインよりむしろ、個人のデザイナーとしての活動を求める者も少なくありませんでした。日用品としての美しさよりも、グラス・アートへという世界的な動きに連動していたと言えるでしょう。本章では、その両側面をバランスよく保ちながら、フィンランドのデザインを牽引していく転換期の作品をご覧いただきます。
オイヴァ・トイッカ 《ロリポップ》
1968年制作 ヌータヤルヴィ社製
個人蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
タピオ・ヴィルッカラ 《ウルティマ・テューレ 2332/2052》
1968年制作 イッタラ社製
フィンランド国立ガラス美術館蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
フィンランド・デザインは、現在も「生活の中の美」を提案し続けています。最後の章では、その「今」をご紹介します。
ハッリ・コスキネン 《ブロック・ランプ》
1998年制作 デザインハウス・ストックホルム製
デザインハウス・ストックホルム蔵 撮影:ティモ・シルヤネン
アヌ・ペンッティネン 《階層―アーバンスケッチ》
2012年制作 ノウノウ・デザイン製
作家蔵 撮影:ウズ・ヴァアロン
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