2011年8月10日(水)~10月10日(月・祝)
※作品保護のため会期中、展示替をおこなう場合があります。
※各作品の展示期間については、美術館にお問い合わせください。
15世紀から16世紀にヨーロッパ全土を席巻したヴェネチアン・グラスは、その洗練された美しさが魅力です。1450年頃、ガラス職人アンジェロ・バロヴィエール(1460年没)らの研究によって、新しいガラス素地「クリスタッロ」が開発されました。それまでのどのガラスよりも無色に近く、高い透明度を誇るこの素材を生かすため、様々な技法や創意工夫がもたらされたのです。第1章では、一気に花開いたヴェネチアン・グラスの技の応酬をお楽しみいただきます。
洒脱なヴェネチアン・グラスはヨーロッパ諸国の王侯貴族を虜にしました。ヴェネチアが独占していたはずの技術は次第に職人とともに流出し、各地で「ファソン・ド・ヴニーズ(ヴェネチア様式)」と呼ばれるガラス器がつくられるようになりました。ヴェネチアンを忠実に模倣した器に留まらず、各地の美意識とも結びつき、新しい造形を生み出していったのです。第2章では、ヨーロッパ大陸における様々なヴェネチア様式のガラスを紹介します。
日本で本格的なガラスの器づくりが開始されたのは17世紀中頃のこと。16世紀から南蛮船によってもたらされたヨーロッパのガラスにあこがれてその製作が開始されたと推測されています。なかには当時大変人気であったヴェネチアン・グラスが含まれていたことが分かっており、和ガラスの誕生に影響を与えたと考えられています。第3章では、海を越え日本に渡った貴重なヴェネチアンの資料と、和ガラスの造形的な共通性を探ります。
一時は「軽業師の妙技」とも称されたヴェネチアのガラス制作も、1797年に共和国が崩壊すると停滞を迎えます。1806年には500年続いたガラス職人組合が解体され、ガラス産業は立ち行かない状態に陥りました。ところが19世紀半ばになると、産業教育現場の整備、あるいは美術館の建設に伴う考古学的な関心から、再びガラス制作が活気を取り戻すようになりました。古代からルネサンス以降のガラスのレプリカが必要となったのです。忠実なコピー製作に端を発したものの、ヴェネチアの気運は時代の要求に応える作品づくりへと移行していきました。第4章では、伝統と近代性とが融合したヴェネチアン・グラスの新たな道のりをご紹介します。
ヴェネチアン・グラスは、時や民族をも越えて見る者の心を捉えて離しません。それはガラス制作に携わる人々にとっても同様です。オブジェにせよ、器にせよ、現在ガラス作家として活躍するアーティストの中には、ヴェネチアで制作を試みる者、あるいはその技を自分らしくアレンジする者など、ヴェネチアを顧みる人たちが少なくありません。それは「ヴェネチア」という都市が現代のアーティストにとっても特別な響きをもって立ち現れるからに違いないでしょう。第5章では、現代作品の中に、それぞれが抱いたヴェネチアへの憧憬を探ります。
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