2009年11月18日(水)~2010年1月11日(月・祝)
※作品保護のため会期中、展示替をおこなう場合があります。
※各作品の展示期間については、美術館にお問い合わせください。
近代日本画に大いなる足跡を残した巨匠、鏑木清方(1878~1972)。彼の目は、明治から昭和という激動の時代にあって、なお人々の暮らしに残る、あるいは消えつつあるものを捉え、特に人物画において独自の画境を開いてきました。また、清方は伝統的な日本美術から多くのことを学んでおり、自身の画風にも色濃く反映されています。
本展は、近代に残る江戸情緒、そして自身が学んだ古きよき日本美術という、清方にとっての2つのノスタルジアに焦点をあて、清方芸術の魅力を探ろうとするものです。清方の代表的な名作はもちろん、初公開となる清方作品、清方旧蔵の肉筆浮世絵など、これまでの清方展では紹介されることのなかった作品も出品されます。本展を通じて、近代の日本画家という枠組みを越え、近世以前からの連続的な歴史の中で浮かび上がる、鏑木清方の美の世界をお楽しみください。
明治11年、東京・神田に生まれた清方は、13歳で水野年方に入門し、その後挿絵画家としてのキャリアをスタートさせます。明治30年代からは本絵画家としての道を歩み始め、明治40年に文展が開設されて以降は官設展への出品を盛んに行い、日本画家としての地位を確かなものとしました。この章では、初期の作品から異色作「妖魚」、戦後の女性像にいたるまで、清方の代表的な作品とともにその画業のあらましをたどります。
江戸末期の戯作者・文人を父にもち、歌川派の流れを汲む水野年方に入門した清方は、幼い頃から江戸の文化に親しんでいましたが、江戸以前の美術にも関心が高く、平安から江戸期にいたる人物画の研究を重ねてきました。その成果は、単なる学習や影響という言葉で括られるものではなく、伝統が完全に血肉化されたかたちで作品の中に結実しています。それは決して伝統主義に甘んじたのではなく、伝統を自家薬籠中のものとしながら、それを越えて新たな画境を開こうとする、高い歴史意識に裏打ちされた姿勢だったのです。この章では、江戸以前の人物画のジャンルという視点を通じて清方作品を見ることで、清方が学んだものと、その先に確立した清方独自の絵画世界を浮き彫りにします。
大正から昭和にかけては、関東大震災と第二次世界大戦によって東京の風景が一変し、清方が慣れ親しんだ明治の東京下町は過去のものとなりました。そうした苦境を乗り越えながら、清方は明治の風俗、江戸情緒にこだわり、古きよき江戸・東京に生きた市井の人々の姿を描き続けたのです。昔懐かしい雰囲気をたたえた清方ならではの回顧的風俗画は、“現在(いま)”を映し出してきた江戸以前の風俗画の歴史の中でも特別な存在であり、時代が求めた新しい風俗画の境地だったと言うことができます。
本章では、清方が範をとった近世初期風俗画から、清方の画系である歌川派、ならびに同時代の浮世絵師まで、清方と関わりの深い日本美術をご紹介します。中でも、清方の「明治風俗十二ヶ月」の着想源となった勝川春章の「婦女風俗十二ヶ月図」や、清方旧蔵の肉筆浮世絵は、清方が目にしたことが確かな、清方と直接的な関わりを持つ作品です。また、鈴木春信、勝川春章、鳥文斎栄之など、清らかな女性像を描いた清方好みの絵師は、清方の著作にしばしば登場し、清方が寄せる関心の高さが伺えます。
清方の卓越した筆力と粋なセンスがうかがえるのは、展覧会に出品する屏風や掛軸だけではありません。本章では、清方の画技の広さをうかがわせる一端として、日常目にした静物や風景を写すスケッチ作品、清方がデザインを手がけた風呂敷や団扇、雑誌の表紙絵などをご紹介します。
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