サマーフェスティバル2016 サントリー芸術財団

ザ・プロデューサー・シリーズ 佐藤紀雄がひらく

The Producer Series SATO NORIO ga HIRAKU

English

〈単独者たちの王国〉

「ザ・プロデューサー・シリーズ」は、年毎に代わるプロデューサーが、現代の名曲の数々や、音楽の枠におさまりきらないステージなど、多彩でチャレンジングな企画内容を発信するシリーズとして、2013年にスタートしました。本年は、指揮者・クラリネット奏者の板倉康明氏と指揮者・ギタリストの佐藤紀雄氏のふたりを迎え、それぞれの指揮によるオリジナリティ溢れるプログラムで各2夜(大ホール・ブルーローズ)の4公演をお楽しみいただきます。世界初演・日本初演も多数、豪華な出演者の挑戦にもご注目ください。

佐藤紀雄

プロフィール

8/22(月)〈単独者たちの王国〉めぐりあう声

19:00[開場18:30] ブルーローズ(小ホール)

エベルト・バスケス(1963-):デジャルダン/デ・プレ*(2013)日本初演

ジャック・ボディ(1944-2015):死と願望の歌とダンス**(2012/2016)
編曲:クリス・ゲンドール、フィル・ブラウンリー改訂版世界初演

  • 指揮:佐藤紀雄
  • ヴィオラ:甲斐史子*
  • メゾ・ソプラノ:メレ・ボイントン**、波多野睦美**
  • カウンター・テナー:肖 瑪(シャオ・マ)**
  • ダンス:森山開次**
  • アンサンブル・ノマド
  • 甲斐史子
  • メレ・ボイントン
  • 波多野睦美
  • 肖 瑪(シャオ・マ)
  • 森山開次
  • アンサンブル・ノマド

入場料:[自由席]一般 4,000円/学生 1,000円

セット券

「佐藤紀雄がひらく」2公演セット券[8月22日&27日(S席)] 6,000円〈限定50セット〉

※東京コンサーツ(03-3200-9755)のみ取り扱い。(5月10日発売)

※東京コンサーツ(03-3200-9755)のみ取り扱い。(5月10日発売)

  • ※本公演は座席配置が通常の仕様とは異なります。
  • ※先行発売および一般発売のインターネットでのチケット購入にはサントリーホール・メンバーズ・クラブへの事前加入が必要です。(会費無料・WEB会員は即日入会可)
    サントリーホール・メンバーズ・クラブについてはこちら(PDF:4.17MB)
  • ※学生席はサントリーホールチケットセンター(電話・WEB・窓口)のみ取り扱い。
    25歳以下、来場時に学生証要提示、お1人様1枚限りです。
  • ※就学前のお子様の同伴・入場はご遠慮ください。
  • ※出演者・曲目は予告なしに変更になる場合があります。

8/27(土)〈単独者たちの王国〉めぐりあう響き

19:00[開場18:30] 大ホール

座席表PDF(3.1MB)

クロード・ヴィヴィエ(1948-83):ジパング(1980) 日本初演

武満 徹(1930-96):群島S. 21人の奏者のための(1993)

マイケル・トーキー(1961-):アジャスタブル・レンチ(1987)日本初演

リュック・フェラーリ(1929-2005):ソシエテII―そしてもしピアノが女体だったら*(1967)日本初演

  • 指揮:佐藤紀雄
  • ピアノ:中川賢一*
  • 打楽器:吉原すみれ*、加藤訓子*、宮本典子*
  • アンサンブル・ノマド
  • 音響:片桐健順(S. C. ALLIANCE)*
  • 中川賢一
  • 吉原すみれ
  • 加藤訓子
  • 宮本典子
  • アンサンブル・ノマド

入場料:[指定席]S席 4,000円/A席 3,000円/B席 2,000円/学生席 1,000円

「佐藤紀雄がひらく」2公演セット券[8月22日&27日(S席)] 6,000円〈限定50セット〉

※東京コンサーツ(03-3200-9755)のみ取り扱い。(5月10日発売)

※東京コンサーツ(03-3200-9755)のみ取り扱い。(5月10日発売)

プロデューサーに聞く

佐藤紀雄

――「単独者たちの王国」と名付けられたコンセプトからうかがいます。「単独者」とは何か、佐藤さんの考えられる定義についてもお話しください。

どの時代にも、いずれの楽派1 にも属さず、“一匹狼”として独自の方法で作品を書いた作曲家がいます。今回取り上げるバスケス、ボディ、ヴィヴィエ、武満、トーキー、フェラーリがまさにそうで、独特な光彩を放ちながら、ひとり我が道をゆく彼らを「単独者たち Individualists」と呼びたいと思います。

名前を見れば一目瞭然ですが、彼らは決して無名ではありません。むしろ現代音楽界では充分に知られた作曲家たちですが、その創作の発想も解決方法も余りにも個人的かつ、独特であるために変則的な楽器編成となり、オーケストラ・コンサート(編成が小さすぎる)やアンサンブル・コンサート(編成が大きすぎる)などの既成の枠に当てはまらない編成となった。その結果上演が困難となり、一般的な演奏会にのせにくく、商業的にも採算の難しい作品の作り手でもあったわけです。またその作品と彼らの「生」がストレートに結びついていたことも、彼らの音楽を魅力的なものにしていると思います。後継者や亜流を産まなかったのも、そのためと言えるでしょう。

これまで演奏したいと機会をうかがっていましたが、編成や演奏空間の条件の特殊さゆえに実現が困難だった彼らの作品を、この機会に聴いていただきます。

――プログラムには、日本初演作品が多く並んでいます。

主に編成の点で通常の演奏会のかたちからはみ出した作品を選んだために結果的にそうなりましたが、僕は「作品の紹介」というスタンスではやってきていないので、「日本初演」にこだわっているわけではありません。むしろ、僕がアンサンブル・ノマドの活動を通してやりたいと思っているのは、自分が「魅力的ですばらしい」と思う音楽をいかにいい演奏で聴いていただくか、そして、いかにして独創的なプログラムを組むか、ということです。

曲を選び、曲順を決めて独創的なプログラムを組むという行為は、作品に対する「クリティック」であると思っています。そしてそれはまた、自分たちの理解度とオリジナリティが試される場でもあります。一見遠く離れているように思われる作品を一つのプログラムで並べたとき、よく知られた古典の作品を現代曲と組み合わせるとき、それらがどう響き、何が起きるか。他のコンサートと違う作り方をしたいですし、それこそ僕たちの演奏会にしかできない一番大きな魅力だと思っています。「あそこに行けばなにか新しいものが聴ける」という発見の場にしていただけると嬉しいです。

――今回の企画で、プロデューサー佐藤紀雄が「ひらく」ものとはなんでしょう?

佐藤紀雄

音楽を聴くという行為自体を、もっと開かれたものにできるといいなと思います。

乱暴な言い方になりますが、音楽は音だけで伝えられるものではない、と僕は思っているんですね。僕自身がそうで、新作のコンサートに行って、「どうしてこうなるの?」「なんだかわからない」と思うことがしばしばあります。作曲家は「聴いてもらえばわかる」と言うかもしれませんが、聴き手からすると、そうではないときもたくさんあると思うんですよ。それに、ウェーベルンの曲を初めて聴いて、「ああ、いい曲だ」と思う人がどれだけいるだろうか(笑)。僕たちは、そういう音楽を相手にしているのだ、ということを、基本、おさえておかなければならないと思っています。だからこそ、自分がなぜその曲に興味を持ったのか、そのきっかけも含めて、皆さんに伝えたいと思っていますし、音楽について語るときは、専門用語を避けて、普通にわかりやすい言葉を使うよう心がけています。

また、僕自身、新しい曲に出会うと、どういうきっかけでこの曲が生まれたのか、どうしてこのタイトルをつけたのか、といったことに興味を惹かれますし、聴く方々にもそういうことに興味を持ってもらいたいと思っているんですね。例えば8/27「めぐりあう響き」で演奏するヴィヴィエの《ジパング》にしても、「ジパング」というタイトルであることを知って聴くのと、そうでないのとでは、ぜんぜん違う体験になるはず。フェラーリの《ソシエテⅡ》も、「社会(ソシエテ)」と「そしてもしピアノが女体だったら」というサブタイトルとの関係性を頭に置いて聴いたとき、聴く人によって全く異なる物語が浮かんでくると思いますが、それを大事にしてほしいです。

いま音楽の世界に一番足りないと思っているのが、音楽以外の分野の人たちとの対話だと思います。すごくもったいないと思うんですよ。音楽家同士で喋っていることを他の分野の人に聞いてもらえたらいいなと思いますし、僕自身も他の分野からの刺激をもっと受けたいですね。

僕たちが、音楽を一つの文化活動としてやっているという意識を忘れないことは大切ではないでしょうか。音楽を感覚だけに訴えるものと捉えるのではなく、プログラム・ノートや演奏の解釈などを通じて言葉で音楽を考えるきっかけに出来たら、と思っています。先ずは演奏されている音に無心に耳を傾ける事から始めてください。その具体的な体験が他の美術や文学や歴史などの分野への関心に広がるきっかけになっていただければとても嬉しいです。

(注)1.戦後の現代音楽は、「ポスト・ウェーベルン」、「トータル・セリエリズム」、「偶然性」、「ミニマリズム」、「スペクトル派」などと作曲様式で語られ、楽派や流派を形成してきました。

出演者からのメッセージ

森山開次

サントリーサマーフェスティバル、ジャック・ボディの音楽で綴る「死と願望の歌とダンス」に参加させていただくことをとても嬉しく光栄に思います。ニュージーランド初のドラッグクイーンだったカルメン・ルーペ。彼の死に際し上演されたという本作は、異文化音楽を自由に横断しながら聴くものを普遍的で根源的な感情に触れさせるもので、カルメンの人間性と友人ジャック・ボディの眼差しに思いを馳せます。今回全曲にわたり私がカルメンを演じるわけではありませんが、創作のプロセスにおいて、トランスジェンダーであり、永きにわたりニュージーランドのカルチュラルアイコンであったという彼の存在は大きく関わってくるでしょう。佐藤紀雄さん率いるアンサンブル・ノマドの素晴らしい演奏家達そして個性豊かなボーカル陣が奏でるジャック・ボディ。至極の一音一音との出会いに私の体はどのような反応を示すのか、今からとても楽しみです。一夜のみの限りなく贅沢な時間を、皆様に目撃していただければと思います。

森山開次(8月22日出演 ダンサー・振付家)

作品の聴きどころ 8/22 ブルーローズ

プロデューサーが語る「めぐりあう声」8/22 プログラム

■バスケス(1963-):デジャルダン/デ・プレ(2013)

メキシコ在住の作曲家エベルト・バスケスは、様々な作曲技法や、斬新な音響効果によって溢れる情動を表現してきました。アンサンブル・ノマドでは2011年に彼の作品によるアルバム『Bestiario(動物寓話集)』をリリースし、最近も『Pruebas de vida(生命の証)』を出したところです。

《デジャルダン/デ・プレ》は、2人の偉大な音楽家―クリストフ・デジャルダンとフランドルの作曲家、ジョスカン・デ・プレの名前をタイトルに冠した魅力的なヴィオラ協奏曲です。デジャルダンは、たびたび来日しているフランスのヴィオラ奏者で、彼からの委嘱により、2013年にこの作品が生まれました。第2楽章の部分では、ジョスカン・デ・プレのシャンソン《茂みの陰で en l'ombre d'un buissonnet》が断片的に引用されています。アンデスの音楽も出現します。

このヴィオラ協奏曲では、ソロ・ヴィオラが、アンサンブルのなかのヴィオラと一体となって、「一回り大きなヴィオラ」のような瞬間を作り出すのが特徴です。作曲者自身が “mega-instrument”と呼ぶ手法で、これによって書かれたコンチェルトが何曲かあります。この作品では、ソロ・ヴィオラに対して、アンサンブルのヴィオラが影のようにまとわりついたり、膨張した影の背後で金管楽器がジョスカン・デ・プレのシャンソンを朗々と響かせたりします。この錯覚させるような効果も楽しんでいただければと思います。

■ボディ(1944-2015):死と願望の歌とダンス(2002/2016)

ジャック・ボディの《死と願望の歌とダンス》は、ニュージーランドのマオリ族出身で、生涯を女性として生きた女装パフォーマー、カルメン・ループに触発されて作曲された作品です。ボディは私の古くからの友人で、2012年、ニュージーランドのオークランドフェスティバルにおける初演には、僕がギターで参加しました。その後ノマドのために編曲してもらったアンサンブル版に、今回新たな改訂を加えた新版によって演奏します。

ボディには、舞台作品からピアノ・ソロ、インスタレーション作品などさまざまな作品がありますが、もっとも特徴的でかつ魅力的なのが、民族音楽を取り入れた作品です。若い頃から民族音楽の研究をしていた彼は、中国の少数民族などアジア各地の音楽を収集しました。そしてそれらを、そのまま作品に使ったのです。

それにはいくつかの方法がありますが、その一つが、オリジナルの音源を西洋楽器に正確にトランスクリプトすること、すなわち「コピー」です。あと、オリジナル音源を流して、そのうえに西洋楽器によるコピーを重ねたり、新たなパートを作ったりする方法などもあります。《死と願望の歌とダンス》では、ビゼーのオペラ《カルメン》からいくつかのアリアがカウンターテナーによって歌われます。マオリの歌は、新しい歌詞をつけて、メロディはそのまま演奏されます。

一般的に言って、「コピー」は「創作」とは対極にあるものと思われていますよね? 彼の作曲姿勢は、「“オリジナル”の意味するものは何か」「独創的とは何か」という問題提起に通じるように思います。

初演に参加して、たくさん貴重な体験をさせてもらいましたが、そのなかで一番大きかったのが歌手との出会いです。初演の時に初めて会って、その歌唱に衝撃を受けた二人――中国のカウンターテナー、シャオ・マさん、マオリの歌手メレ・ボイントンさんに今回参加いただけることになり、僕が感じた衝撃を、ぜひ皆さんにも体験していただきたいと思っています。お二人に一緒に並べてみたいと思っていたのが波多野睦美さんでした。憧れの歌手としていつも客席から仰ぎ見ていた波多野さんとご一緒できることを、私同様楽しみにしているメンバーと心待ちにしています。

新版を上演するにあたり、ダンサーの森山開次さんが出演くださることになりました。初演のときの映像をお見せしたうえで、「ぜひ森山さんのオリジナルなパフォーマンスを見せてください」とお願いしています。どのような解釈を見せてくださるのか、森山さんのファン同様、楽しみなところです。

作品の聴きどころ 8/27 大ホール

プロデューサーが語る「めぐりあう響き」8/27 プログラム

■ヴィヴィエ(1948-83):ジパング(1980)

「ジパング」とは、マルコ・ポーロが『東方見聞録』で描いた空想の日本です。「ジパング」と題されていながら、そこにはありきたりな「日本的な要素」は一切ありません。編成は弦楽器のみで、一人ひとりがマイクを付けてステージに散らばり、大ホールの空間をヴィヴィエの音響で満たします。クロード・ヴィヴィエがいかに魅力的な世界を音で表現したか、ぜひ聴いていただきたいと思います。

■武満(1930-96):群島S.――21人の奏者のための(1993)

武満さんのプログラム・ノートによると、「S」は複数のSであると同時に、「目にした美しい群島」が偶然にもSのイニシャルであることに由来しています。5つに分かれたアンサンブルが、舞台と客席に群島のように配置され、それぞれの関係が複雑な関係を生み出して、ホールの空間に美しい音楽を響かせます。

ギタリスト、ジュリアン・ブリームの60歳を祝って、彼に捧げられた作品で、ナッセン指揮ロンドン・シンフォニエッタによってオールドバラ音楽祭で初演されました。この《群島S.》にはギターがありませんが、武満さんはギターがすごく好きで、オーケストラ作品にもよくギターを使ってくださった。大きな音響のなかで聞こえないほどの「隠し味」的な使い方でしたが、きっと武満さんの頭のなかではその音が鳴っていたんだろうなと思います。

■トーキー(1961-):アジャスタブル・レンチ(1987)

ロンドン・シンフォニエッタで聴いて以来、大好きな曲です。以前からいつかプログラムに入れたいと思っていましたが、曲調がポップなのでプログラミングがむずかしい。今回、この曲がちょうどよい位置に収まるプログラムができたと思っています。マドンナのある曲によく似ていると言われていますが、みなさんはどのように聴かれるでしょうか。それほどお洒落でかっこいい曲です。

■フェラーリ(1929-2005):ソシエテⅡ―そしてもしピアノが女体だったら(1967)

フェラーリの作品は常に一筋縄ではいかない側面を持っていますが、社会的な問題意識を感じさせる表題と挑発的できわどい副題を持つこの作品も私たちに向って鋭い問いかけが隠されているように思わないわけには行きませんよね。フェラーリの作曲活動におけるコンセプチュアルな面を無視することは出来ませんが、私が彼の作品に心を奪われたのは音楽作品としての圧倒的な存在感でした。全ての音の身振りにおいて前人未到のエネルギーと独創性に満ち溢れているこの作品を超えるものは未だに無いと思えるほどです。当日の演奏家たちは死力の限りを尽くしてフェラーリの音楽に立ち向かうことになるでしょう。

プロフィール

佐藤紀雄

1951年生まれ。1971年(現)東京国際ギターコンクール優勝。以後、ギター演奏と指揮活動を広範囲にわたり行ってきた。
ギター演奏においてはクラシックレパートリーの他、武満徹、高橋悠治、近藤譲、松平頼暁、福士則夫、その他多くの作品の初演、また指揮者としても内外の新しい作品の初演を含め数多く演奏している。
海外からの招聘も多く、これまでにパリ、ニューヨーク、ハンブルク、ロンドン、メルボルン、北京、メキシコ、デンマーク、フィンランド、エストニア、ブリュッセル、アントワープ、ハバナ、イタリアなどでリサイタルや各地のアンサンブルと共演。
1997年にアンサンブル・ノマドを結成し、音楽監督として毎年定期演奏会を開いている。またアンサンブル・ノマドとしても海外から多く招かれ、ハッダースフィールド音楽祭、ガウデアムス音楽週間、モレリア音楽祭など主要な音楽祭で演奏してきた。
1990年京都音楽賞(実践部門賞)、1994年中島健蔵音楽賞、1996年朝日現代音楽賞、2002年アンサンブル・ノマドとして第2回佐治敬三賞を、2016年「DUOうたほぎ」のリサイタル「春夏秋冬」が第15回佐治敬三賞を受賞。ギター・ソロのCD、アンサンブル・ノマドのCDなど多数リリースしている。
日本大学芸術学部、青山学院短期大学および桐朋学園芸術短期大学で後進の指導にあたっている。

8/22(月)作曲家

エベルト・バスケス
Hebert Vázquez(1963-)

作曲をマリオ・ラヴィスタ、ルーカス・フォス、レオナルド・バラーダらに師事。ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)から作曲における音楽芸術博士号を授与された。これまでにジョン・サイオン・グッケンハイム奨学金、メキシコ国立芸術創造組織から4度の奨学金を得る。彼の作品は、主にヨーロッパ、アジア、南北アメリカで、アルディッティ弦楽四重奏団、アンサンブル・ノマド、オニックス・アンサンブル、またギタリストの佐藤紀雄、ゴンサロ・サラザール他によって演奏されてきた。『無調音楽の基礎的理論』(UNAM-FONCA, 2006)、『旅の手帳』(CMMAS-FONCA, 2009)等の著書があり、アンサンブル・ノマドの演奏により『Bestiario(動物寓話集)』と『Pruebas de vida(命の証)』(共にURTEXT)のCDがリリースされている。

ジャック・ボディ
Jack Body(1944-2015)

オークランド大学、ヨーロッパのケルン、ユトレヒトで音楽を学ぶ。1976〜77年にインドネシアのジョグジャカルタにあるアカデミー・ミュージック・インドネシアで客員教授を務め、アジアの伝統音楽から多くの影響を受けた。彼の作品は、オークランド・フィル、ニュージーランド響、アムステルダム・アトラス・アンサンブル、BBCスコティッシュ・オーケストラ、クロノス・カルテット等から委嘱され演奏されてきた。エジンバラ、ブエノスアイレス、ジャカルタ、北京など、世界各地で招待作曲家として招かれた他、パシフィック音楽祭、アムステルダムのニュージーランド音楽祭等にも招かれた。また、エレクトロアコースティック・ミュージック・コンクール(ブルージュ)等で、様々な賞も得ている。

8/27(土)作曲家

クロード・ヴィヴィエ
Claude Vivier(1948-83)

カナダに生まれる。モントリオールの音楽学校で学んだ後、ユトレヒトで電子音響音楽をゴットフリート・ミヒャエル・ケーニッヒ、ケルンで作曲をシュトックハウゼンに師事。特に後者の強い影響を受けた。1976年にアジアを旅行し日本も訪れたが、中でもバリへの訪問は彼に衝撃を与え、以降の作品にはオリエンタリズムが色濃く現れるようになる。また、作品に独自に編み出した言語によるテクストを使用するなど、ユニークな世界観を生み出した。1982年より、チャイコフスキーの死を題材にしたオペラを創作するためにパリに滞在していたが、翌年に現地の自宅アパートで19歳の青年に刺殺された。室内楽を中心に49作品を残している。

[小林幸子]

武満 徹
Toru Takemitsu(1930-96)

東京に生まれる。清瀬保二に師事し、新作曲派協会、実験工房、二十世紀音楽研究所など、戦後日本の先鋭的な芸術家集団に参加。代表作《ノヴェンバー・ステップス》(1967)のような自律的な音楽作品のほか、映画やドラマのための音楽も多数残している。東西の楽器の併用からミュジック・コンクレート、セリエリズム、不確定性、図形楽譜、演奏者の特殊な配置と、試みた音楽語法の振り幅も広く、まさに時代性と地域性を柔軟に吸収した作曲家と言える。日本芸術院賞(1980)、サントリー音楽賞(1991)など国内での受賞のほか、海外の大学や音楽祭、オーケストラからの招聘、フランス政府からの芸術文化勲章授与(1985)など国際的な評価も高い。

[小林幸子]

マイケル・トーキー
Michael Torke(1961-)

アメリカ、ミルウォーキー生まれの作曲家、ピアニスト。アメリカの名門イーストマン音楽学校およびイェール大学で学ぶ。1986年にローマ賞受賞。トーキーにとって、コードやピッチはそれぞれ特定の色と連関しており、初期の管弦楽シリーズ《Color Music》(1985-89)では作品ごとにひとつの色を探究している。「きらめく音色パレットを持つこの管弦楽法の達人は、まるで現代のラヴェルである」(ニューヨーク・タイムズ)と評されるように、作風はしばしばポピュラー音楽の文脈で語られるほどの明快さを持ち、ポストミニマリストとも形容される。バレエ・カンパニーほか、オリンピック実行委員会やディズニー社から委嘱を受けるなど、マルチな才能の持ち主である。

[小林幸子]

リュック・フェラーリ
Luc Ferrari(1929-2005)

1929年パリに生まれたフェラーリはパリ国立高等音楽院等でピアノを学び、また1946年から作曲を始めた。1952年以来、ドイツ各地で彼の作品が演奏された。1958年からピエール・シェフェールと音楽研究グループを設立しミュジック・コンクレートを中心とした音楽活動を行う。またコンスタンチン・シモノヴィッチ指揮のアンサンブルの芸術監督もつとめる。1964〜65年、ケルンの音楽学校にて作曲の講義を行う。1967年、ドイツ学術交流会の招きによりベルリン滞在、帰国後アミアン文化センターの芸術監督を69年までつとめる。72、88年にカール・ズッカ 賞、89年国民栄誉賞、90年クーセヴィツキー賞、87、91年イタリア賞を受賞。その後活発な音楽活動を行うが2005年8月逝去。

[プレスク・リヤン協会のプロフィールに基づき作成]

8/22(月)出演者

甲斐史子

甲斐史子(ヴィオラ)

桐朋学園音楽大学卒業。同大学研究科修了。現代音楽演奏コンクール〈競楽Ⅴ〉第1位入賞(DUO ROSCOとして)。第12回朝日現代音楽賞受賞。2003年度青山バロックザール賞受賞。ドイツ・ダルムシュタットにて、クライニヒシュタイナー賞受賞。アンサンブル・ノマドメンバーとして、第3回佐治敬三賞受賞。国内外の音楽祭に出演、数々の初演、録音を行っている。2016年9月23日、オペラシティ・リサイタルホールにてROSCO結成15周年リサイタルを開催。神奈川県立弥栄高等学校、東京藝術大学非常勤講師。

メレ・ボイントン

メレ・ボイントン(メゾ・ソプラノ)

歌手で俳優。マオリ語での歌唱やマオリ族の音楽・舞台芸術の研究を積み、マオリ文化とクラシック音楽正規の歌唱法に基づく独自の歌唱スタイルを確立。主な出演作品に、G.ファーの《テ・パパ》、J.ボディの《死と願望の歌とダンス》のニュージーランド公演(共演:オークランド・フィル)と日本公演(共演:アンサンブル・ノマド)、前衛的なマオリ劇作品『ストーンズ・イン・ハー・マウス』がある。最近では、ユダヤ人作曲家J.ベッサーとのコラボレーションで、精神性と愛情の表現におけるヘブライとマオリの共通項を探る歌曲集『アロハ-アハヴァ』のCDをリリース。

波多野睦美

波多野睦美(メゾ・ソプラノ)

英国ロンドンのトリニティ音楽大学声楽専攻科修了。イギリスのリュートソングでデビュー。ヘンデル、バッハの宗教曲、オラトリオ等のソリストとして鈴木雅明、C.ホグウッド、寺神戸亮他の指揮者と共演、国内外で多くのコンサート、音楽祭に出演。現代音楽:間宮芳生作品の米国での世界初演、水戸芸術館「高橋悠治の肖像」、サントリーホール「作曲家の個展・権代敦彦」他。オペラ:モンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》、パーセル《ダイドーとエネアス》、間宮芳生《ポポイ》他。TV「NHKニューイヤーオペラ」「名曲アルバム」。CD作品多数。国際基督教大学非常勤講師。

シャオ・マ

肖 瑪(シャオ・マ)(カウンター・テナー)

中国初のカウンター・テナー歌手。2006年、中国の名バス歌手ゴン・ドンジャン氏にその才能を見出され、翌年上海歌劇場のモーツァルト《フィガロの結婚》のケルビーノ役でデビュー。以後、世界各地にてリサイタルを行い、その自由自在で表情豊かな歌声を世界中に聴かせている。4歳でピアノを始め、四川美術学院でピアノと声楽を専攻。西華大学在学中より四川美術学院でピアノ指導を行い、卒業後はピアノ科と声楽科の准教授となる。2000年には成都大学声楽科の准教授に就任、2011年以降、貴州師範大学国際音楽学部の教授を務める。2015年中国中央電視台主催Top Ten Tenor優勝者。

森山開次

森山開次(ダンス)

2001年エディンバラフェスティバルにて「今年最も才能あるダンサーの一人」と評された後、自身の演出振付によるダンス作品の発表を開始。05年『KATANA』で「驚異のダンサー」(ニューヨーク・タイムズ紙)と評され、07年ヴェネチアビエンナーレ招聘。13年『曼荼羅の宇宙』にて第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞他3賞受賞。ダンスのみならず、演劇・映画等幅広い媒体での身体表現と、分野を横断した異ジャンルアーティストとのコラボレーションに積極的に取り組んでいる。平成25年度文化庁文化交流使。

8/27(土)出演者

中川賢一

中川賢一(ピアノ)

桐朋学園大学音楽学部でピアノと指揮を学び、卒業後、アントワープ音楽院ピアノ科首席修了。1997年ガウデアムス国際現代音楽コンクール第3位。ソロ、室内楽、指揮で活躍する他、国内外の様々な音楽祭に出演。NHK-FMなどに度々出演、新曲初演多数。現代音楽アンサンブル「アンサンブル・ノマド」のピアニスト、指揮者としても活躍。ダンスや朗読など他分野とのコラボレーションも活発な他、ピアノ演奏とトークのアナリーゼは好評を博す。指揮者として、東京室内歌劇場、東京フィル、広響、仙台フィル他と共演。お茶の水女子大学、桐朋学園大学非常勤講師。
公式ウェブサイト:www.nakagawakenichi.jp

吉原すみれ

吉原すみれ(打楽器)

東京藝術大学卒業、同大学院修了。1972年大学院在学中にジュネーヴ国際コンクール優勝。独奏者として国際的な活動を開始。77年ミュンヘン国際コンクールで1位なしの2位。1980年サントリー音楽賞、アルバム『打楽器の世界1』において芸術祭優秀賞受賞。アンサンブル・ヴァン・ドリアン団員として83年中島健蔵音楽賞受賞。ミュンヘン、ジュネーヴ各国際コンクールの審査員を務める。2002年中島健蔵音楽賞優秀賞、04年朝日現代音楽賞受賞。多数のソロCDをリリース。
アンサンブルタケミツ、メンバー。武蔵野音楽大学教授。

加藤訓子

加藤訓子(打楽器)

桐朋学園大学研究科卒業。ロッテルダム音楽院を首席で卒業。
日本を代表する世界のトップ・パーカッショニストとしてグローバルに活躍。高音質配信で世界的に有名な英国リンレコーズと契約する唯一の日本人アーティスト。アルバム 『kuniko plays reich』にて第十二回サントリー佐治敬三賞を受賞。2013年リリースした『CANTUS』にてアルボ・ペルトの代表作を世界で初めて打楽器へ編曲し、第26回ミュージックペンクラブ音楽賞・最優秀録音賞受賞。パール楽器・アダムス社(蘭)インターナショナルアーティスト。 米国在住。
公式ウェブサイト:www.kuniko-kato.net

宮本典子

宮本典子(打楽器)

桐朋学園大学を卒業し、同研究科を修了。 1991年東京現代音楽祭室内楽コンクール<競楽I>にて第3位入賞。 現在、ソロや室内楽奏者として活動。国内外の様々な現代音楽祭に出演しているほか、数々の録音もリリースしている。アンサンブル・ノマド、パーカッションアンサンブルFandadoのメンバーとして活躍する傍ら、アウトリーチ活動や後進の指導も積極的に行っている。

アンサンブル・ノマド

アンサンブル・ノマド

1997年結成。「NOMAD」(遊牧、漂流)の名に相応しく、時代やジャンルを超えた幅広いレパートリーと斬新なテーマによるプログラムで独自の世界を表現するアンサンブルとして内外から注目されている。これまでに、「第2回佐治敬三賞」と「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」を受賞。海外からの招待も多く、世界各地の現代音楽祭に出演している。
CDは、近藤 譲など邦人作曲家の室内楽作品集の他、海外でもH.バスケスの『Bestiario』と『Pruebas de vida』がリリースされている。2014年にはオリジナル・アルバム『巡る-Meguru』をリリース。昨年発売された『現代中国の作曲家たち』シリーズは、レコード芸術誌の特選盤や朝日新聞の推薦盤に選ばれている。
公式ウェブサイト:www.ensemble-nomad.com