伝統と革新、スペインの挑戦 ～ヌエバ エスパーニャ～
近年スペインの天才シェフたちが革新的な技術と精神で世界の料理界を引っ張ってきた功績は誰もが認めるところ。その自由で画期的なクリエイションに、“ヌエバ エスパーニャ＝新しいスペイン”としてワインの造り手たちも挑戦しています。今回はそんな新時代の到来を予感させるスペインワインと、スペインの食を語る上で避けては通れない伝統チーズ「マンチェゴ アルテサーノ」をご紹介します。
マンチェゴはスペインNO.1ともいえる程の知名度を誇る、羊乳100％の硬質チーズ。内陸部のカスティーリャ ラ マンチャ州が産地です。雨の少ない大陸性気候でありながら、冬から春にかけて緑豊かな牧草に恵まれるこの地方では古くから羊の飼育が盛んです。
マンチェゴの製造には、地元原産の「マンチェガ」という品種の羊の乳だけが許可されています。チーズ1玉の重さが1～3.5kgと大きさは様々ですが、必ず側面にジグザグの細かい縄目模様がついているのが特徴です。昔は「エスパルトがや」という草で編んだ型にチーズを入れて成型していました。そうすることで、チーズの表皮に自然に編み目模様が写っていたのです。ステンレスの型を使うようになった現在も、わざわざその模様を型の内側に打ち込んで、昔のままの模様をチーズにプリントしています。
口に含むと、ギュッと詰まった旨味が口いっぱいに広がり、羊乳ならではの甘味が後に引きます。そしてわずかに舌を刺す辛味と塩味でパンチのある味わいになっていきます。低温殺菌乳からつくられるものと、伝統を守り無殺菌乳から製造されるものが存在し、後者をアルテサーノ(家内工業製)と呼んでいます。深いコクと余韻の長さは無殺菌乳製ならではの味わいで熟成の長さを物語っています。
羊乳チーズの製造シーズンは冬から夏で、中でも春につくられたものが1年のうちで最高とされています。今回試したマンチェゴは熟成期間6ヶ月ほど。秋に出回るものがその年の春作りということになりますので、まさに今おすすめの季節を迎えています。
